認知症の徘徊で鉄道事故 91歳の妻に約360万円の賠償命令 名古屋高裁

愛知県大府市で2007年12月、徘徊症状がある認知症の男性(当時91歳)が電車にはねられ死亡した事故をめぐり、JR東海が男性の遺族に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が4月24日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は、妻(91)のみに約360万円の支払いを命じ、長男には見守る義務はなかったとして、JR東海の請求を棄却した。
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Stephen Lyth via Getty Images

愛知県大府市で2007年12月、徘徊症状がある認知症の男性(当時91)が電車にはねられ死亡した事故をめぐり、JR東海が男性の遺族に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が4月24日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は、妻(91)のみに約360万円の支払いを命じ、長男には見守る義務はなかったとして、JR東海の請求を棄却した。一審の名古屋地裁の判決では、介護に携わった妻と長男に請求通り約720万円の支払いを命じていた。時事ドットコムなどが報じた。

長門裁判長は判決で、重度の認知症だった男性の配偶者として、妻に民法上の監督義務があったと認定。外出を把握できる出入り口のセンサーの電源を切っていたことから、「徘徊の可能性がある男性への監督が十分でなかった」と判断した。

一方、長男の妻が横浜市から転居し、共に在宅介護していた点を評価。JRが駅で十分に監視していれば事故を防止できる可能性があったとも指摘し、賠償責任を5割にとどめた。

(時事ドットコム「JRへの賠償を5割減=妻らの在宅介護を評価-認知症男性の徘徊事故死・名古屋高裁」より 2014/04/24 21:19)

死亡した男性は「要介護4」で、介護にあたっていた当時85歳の妻自身も「要介護1」と認定されていた

遺族側の弁護士は、報道陣の取材に対し「遺族は十分に介護に努めていたと考えるので、判決には納得できない」と話したという。

判決のあと、遺族側の弁護士は報道陣の取材に対し、「遺族は十分に介護に努めていたと考えているので、判決には納得できない。今の社会では、認知症の患者の保護について、家族だけに責任を負わせるのではなく、地域で見守る体制を築くことが必要だと思われるが、判決はその流れに逆行するものだ。今後、最高裁判所に上告するかどうかは遺族と相談して決めたい」と話しました。

(NHKニュース「認知症で電車事故 妻に賠償命令」より 2014/04/24 19:29)

■認知症患者による鉄道事故、鉄道各社の対応は

認知症高齢者らの電車事故が起きた場合、鉄道各社は通常、振り替え輸送の費用や人件費などを合わせた損害額を本人や家族側に請求している。MSN産経ニュースによると、家族らが支払いに応じるなどして和解することが多く、鉄道関係者は「訴訟に至るケースは珍しい」と話したという。

近畿日本鉄道(大阪)と名古屋鉄道(名古屋)は、線路や駅ホームへの立ち入りによる死亡事故について、認知症などの病気に起因しているかどうかにかかわらず損害額の賠償を遺族らに請求。JR東日本(東京)や小田急電鉄(東京)も「事故の原因や状況などを総合的に判断し、必要であれば損害賠償を請求する」と説明する。

名鉄では通常、人身事故発生後は警察を通じて家族に連絡し、損害賠償額について協議。JR東日本などによると、賠償額には振り替え輸送の費用や人件費だけでなく、列車の運休による機会損失費、設備の修理費などが含まれることもあるという。

(MSN産経ニュース『徘徊事故 多くが和解「訴訟は珍しい」』より 2014/04/25 10:12)

■年間1万人近くの人が認知症で行方不明

国土交通省によると、2012年度に発生した鉄道事故件数は811件、死者は295人にのぼる。NHKニュースによると、認知症やその疑いがあり行方不明になる人は年間1万人近くに上っており、そのうち約350人の死亡が確認されている。また、8年余りの間に少なくとも64人の認知症患者が鉄道事故で死亡しているという。

NHKが鉄道会社が国に届け出た鉄道事故の報告書を情報公開請求して分析した結果、「認知症」ということばが使われるようになった平成17年から去年までの8年余りの間に認知症の人が徘徊するなどして起きた事故は、少なくとも76件に上り、このうち64人が死亡していたことが分かりました。

(NHKニュース「認知症の人 鉄道事故で64人死亡」より 2014/04/23 17:59)

■Twitterの声

インターネット上では、「認知症患者の実態を裁判官は理解していない」といった意見が寄せられた。一方で「ではJRに責任があるのか?」といった声もあがった。

【※】認知症の人による鉄道事故の損害賠償を遺族が支払うことについて、読者の皆さんはどのように考えますか?コメント欄にご意見をお寄せください。