箱根駅伝、今年は「山の神」が不在だった理由。歴代の「神」を振り返るとわかった。

「山の神」と呼ばれるためには、いくつかの条件を満たす必要がある。

数々のドラマや伝説を生んできた箱根駅伝。大きな見所の一つが、5区。小田原中継所から往路ゴールとなる芦ノ湖までの標高差775メートルの箱根の山の上り坂だ。「山の神」という称号とともに、今も記録と記憶に残る選手たちがいる。

とはいえ、5区を制した選手がみんな「山の神」を名乗れるわけではない。今回の第96回箱根駅伝では、残念ながらゴールの瞬間、テレビでは「山の神!」という実況は聞けなかった。

「山の神」と称される歴代の3選手を振りかえってみる。

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往路を1位でゴールする順天堂大学5区の今井正人選手(2007年)
時事通信社

「山の神、ここに降臨!」順天堂大・今井正人選手

「山の神」の元祖とされるのが、順天堂大の今井正人選手。2005年から2007年まで3年連続で5区を担当し、3年とも区間新記録を達成した。

2年生だった2005年には史上最多の11人抜きを達成し、区間記録を2分17秒も更新。翌2006年にも5人抜きで順天堂大を17年ぶりの往路優勝に導いた。2007年、4年生の時には主将として5区での逆転を達成。順天堂大学を総合優勝させた

3年間で抜いた人数は合計20人。2007年の第83回大会で今井選手が往路をゴールした際の「山の神、ここに降臨!」という当時の実況中継は、今でも語り継がれている。

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ゴール手前でガッツポーズする東洋大の柏原竜二選手(2012年)
時事通信社

2代目「山の神」は東洋大・柏原竜二選手

今井選手の卒業後に登場したのが、東洋大学の柏原竜二選手。

2008年から2011年までの4年間連続で5区を走った。1年生の時には、8人をごぼう抜きして今井選手の前年の区間記録を塗り替え、東洋大初の総合優勝に貢献。鮮烈なデビューを飾り、今井選手に続いて「新・山の神」と称された。

2年生の時には自身の区間記録を更新して2年連続で総合優勝。東洋大の2008〜2011年の4年連続往路優勝に貢献し、「山の神」の称号を揺るがぬものにした。

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力走する青学大の神野大地選手(2016年)
時事通信社

「山の神野」3代目は青学・神野大地選手

3代目「山の神」と称されるのは、青山学院大学の神野大地選手。2015、2016年の2年連続で5区を走った。

ただ、神野選手が5区で区間賞を取ったのは、3年生だった第91回箱根駅伝(2015年)の一度だけ。驚異的なスピードで2位の明治大学に5分近くも引き離して往路を優勝。2015年の大会からコースの一部が変更されたため厳密な比較はできないが、事実上、柏原選手の記録を上回り、強烈なインパクトを与えた。

「神野(かみの)」という名前から、「3代目、山の神」「山の神野」などと称された。

 

「山の神」の条件は?

そもそも「山の神」って?「山の神」という言葉はよく聞くけれど、そう呼ばれるには、いくつかの条件を満たす必要があるようだ。

駅伝解説者の金哲彦さんのインタビューによると、「山の神」になるには、5区を制覇するだけでは不十分なようだ。優勝チームの走者であることが条件。さらに、前の走者をごぼう抜きするか、圧倒的な記録で走り抜けることが重要だという。

過去に「山の神」と呼ばれた3選手の共通点を見ると、3人とも5区を複数回走っている。逆転での往路優勝に加え、事実上の区間新記録を出していることも必要なようだ。

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往路を1位でゴールする青山学院大の飯田貴之選手(2020年1月2日)
時事通信社

「山の神」今年は不在

2020年の第96回箱根駅伝では、往路ゴールの瞬間、残念ながらテレビ実況での「山の神」のコールはなかった。

速報記録によると、往路を優勝したのは青山学院大だが、5区を走った飯田貴之選手は区間2位。区間1位は、東洋大学(往路11位)の宮下隼人選手だった。