「自分の場所を失う恐怖や悲しみ、よくわかる」。被災地に思い寄せる難民アスリート

陸前高田市への訪問経験があるローズ選手をはじめ、ケニアで練習に励む難民アスリートたちに会いに行きました。
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ケニアに行ってきました。東京五輪を目指して練習に励んでいる難民アスリートたちを、国連UNHCR協会報道ディレクターとして訪問するためです。

 

「陸前高田で会った子どもたちは元気でしょうか」

 

日本から遠く離れたケニア。ナイロビから飛行機で40分ほどの高地・イテンで東京を目指し練習に励んでいるローズ・ナティケ・ロコニエン選手は、日本に特別な思いを抱いている難民アスリートです。

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左がローズ選手

IOC難民選手団代表としてリオ五輪に出場

2019年夏、ローズ選手は岩手県陸前高田市を訪問しました。彼女は史上はじめて結成されたIOC難民選手団・陸上女子800mの代表としてリオ五輪に出場した選手です。

 

「旗手として開会式で入場したとき、スタジアムに鳴り響く大きな歓声、拍手に心が震えました」

 

そして、ローズ選手はふたたびIOC難民選手団候補生として東京を目指して練習に励みながら、世界各国で「スポーツはいかに難民の若者たちに希望をもたらしたか」といったテーマで講演活動も続けているのです。

 

東日本大震災において、関連死も含めた死者・行方不明者の数が、合わせて1806人に上る陸前高田市。被災地では記憶を風化させないようにと、今も当時のまま津波に破壊された光景が残されている場所があります。

 

「とても悲しかった。私の故郷の南スーダンも内戦ですべてが壊され、祖父母も殺されました。自然災害に襲われた日本と理由は違うけれど、自分の場所を失う恐怖や悲しみがとてもわかります」

 

厳しい難民キャンプ生活の中で、自分を救ってくれたのが走ることだった、というローズ選手。

 

「あきらめずに努力を続けて五輪出場がかなったとき、難民である自分も他の人と変わらないという自信を持つことができて嬉しかったです。子どもたちには、夢をあきらめず続けることが希望につながることを、自分が走ることで伝えることができればと思います」

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国連UNHCR協会の支援者からのメッセージを仲間の選手と嬉しそうに読むローズ選手

文化が異なり、離れていても「人の心を隔てるものはない」

アフリカという日本からはるか遠く離れた場所で、親族を殺されて故郷を逃れ、難民キャンプで育つという壮絶な経験をしてきたローズ選手が、こんなにも日本の被災地に心を寄せて、子どもたちを力づけたいと考えてくれているのを聞いて、私も胸が熱くなりました。距離、国境、文化がどんなに異なり離れていても、「人の心を隔てるものはない」ということをローズ選手は教えてくれます。

 

新型コロナウイルスの影響で、五輪開催も含め先行きの見えない状況が続く中でのケニア訪問でしたが、そこで改めて感じたのは、彼らにとって「東京」という目標がどれだけ大きいかということでした。「東京に行くことが第一のゴールです」「東京で会いましょう!」と笑顔で声をかけあいながら、厳しい練習に励む選手たち。彼らにとって「トウキョウ」は夢そのものです。

 

できることならば感染の猛威によって参加できないといった「隔たり」が起きてほしくない。中止なのか、延期なのか、今の時点ではまったく先が見えない状況ですが、どのような形であれ、難民選手のみならず、オリンピック・パラリンピックを目指して頑張っているすべてのアスリートたちが、最高の環境で輝ける舞台をつくることができるようにと祈るばかりです。

 国連の難民支援についてはこちらから

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イテンで東京を目指す難民アスリートたちと
©国連UNHCR協会/Mitsuru Yoshida