吐いてもまた口に含ませ...ウィシュマさん死亡前の映像、遺族側が新たに一部を視聴「非常に残酷」

弁護団は「ビデオを見れば、入管がウィシュマさんを見殺しにしたということが誰の目にも明らかになります」と訴えている。
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代理人の指宿昭一弁護士(左)とポールニマさん、右はウィシュマさんの遺影
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名古屋出入国在留管理局に収容中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が3月に死亡した問題で、弁護団は10月5日に記者会見を開き、これまで開示されなかった残りのビデオの一部が遺族側に新たに開示されたと明らかにした。

弁護団は民事訴訟の準備を進めており、今回の映像は証拠保全の手続きの中で10月1日に開示された。2月22日からウィシュマさんが亡くなる3月6日までの映像の一部で、合計で98分間視聴したという。遺族側代理人の指宿昭一弁護士は、「(開示しない対応から)一転したのは、入管の態度が変わったからではなく、裁判所の手続きで半強制的に出さざるをえないから出したという事情です」と説明した。

 

ビデオに映っていたこと

弁護団の駒井知会弁護士によると、新たに開示されたビデオには、入管の職員が、ほとんど動けない状態のウィシュマさんに対し、「私たちも頑張るけれどもあなたも頑張ってね」「あなたも頑張るのよ」などと、繰り返し言い聞かせている場面が映っていた。ウィシュマさんがうめき声を上げたり、高い声で「あーあー」と叫ぶ様子も記録されていたという。

駒井弁護士によると、3日3日夕方の映像には、職員がウィシュマさんに食事を食べさせようとする場面が映っていた。

「スプーンで、彼女の口に食べ物を持っていって食べさせようとするわけです。彼女も口に含むんですけど、吐いてしまうんですね。青いバケツに吐いてしまう。ほとんど間を置かずに、布のようなもので彼女の口を拭わせて、はい次という形で。『おかゆがいいかしら』なんて言いながら、スプーンを口に持ってくるんですね。そうすると彼女は口に含むんですけど吐いてしまうんです」

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ウィシュマさんが食事を吐き出す様子の映像を描いた絵を示す弁護団
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「ほとんど身動きもとれない様子で、食べて吐いて、また口の中に物を入れられるという状態でした。口から栄養をとることが難しいだろうというのは素人目にも明らかで、そのような人に点滴を与えず、このやり方で物を食べさせようとしていることが極めて残酷だと思いました」(駒井弁護士)

 

非開示は「自己保身のため」

ウィシュマさんの妹のポールニマさんは、記者会見で「3月5日の時点で救急車を呼んでいたら、お姉さんは助かったと私は思います。最終報告書に書かれていないことがたくさんあると確信しました」と話した。

今後の訴訟の中で、ウィシュマさんが亡くなるまでの全ての映像が開示される可能性がある。ただ、指宿弁護士は「裁判で半年後か一年後かにビデオが出てくるとしても、それで良いということにはなりません。遺族のために、一日も早く、1分1秒も早く、全てのビデオのデータを私たちに渡してほしいと思います」と強調した。

入管側はこれまで、ビデオの全面開示に応じない理由について「保安上の必要性や本人のプライバシー」などと説明してきた。これに対し、弁護団は「保安上の理由は今回クリアできた」と主張。さらに、指宿弁護士は「プライバシーや名誉は、遺族に渡す以上問題がありません。どの部分を社会に対して開示するかは、遺族と相談して決めれば良いこと。法務大臣と入管庁長官は、速やかにビデオを開示しなさい、と言いたいです」と訴えた。

「入管と法務省がビデオを見せたくないのは、このビデオに真実が映っているからです。このビデオを見れば、入管がウィシュマさんを見殺しにしたということが誰の目にも明らかになります。それが嫌で見せないだけです。彼らの自己保身のための理由です。これ以上、遺族を待たせるのはやめてください」として、ビデオの早期の全面開示を求めた。