新生児取り違え訴訟、東京都の「生みの親の調査できない」に原告側が反論

赤ちゃんの時に産院で別の新生児と取り違えられた男性が、生みの親の調査を求めた訴訟。被告の東京都は、請求棄却と却下を求めている。
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幼少期の江蔵智さんと母
本人提供

東京都立の産院で生まれてすぐに別の新生児と取り違えられた男性が、生みの親を特定する調査を行わないのは人権侵害だとして、都に対して調査の実施や損害賠償などを求めた訴訟の口頭弁論が5月18日、東京地裁であった。

原告側は、「根拠となる法令がないため生みの親の調査はできない」などとする都の主張に反論。「戸籍法や区の条例に基づく請求で、都は生みの親を調べることができる」などと訴えた。

 

提訴までの経緯は

訴状などによると、原告の江蔵智さんは1958年4月10日ごろ、東京都立墨田産院(88年に閉院)で誕生した。

97年に母の血液検査の結果から、自身が両親から生まれない血液型だと判明。2004年に家族全員のDNA鑑定をしたところ、江蔵さんが父と母のいずれとも血縁上のつながりがないことが分かった。

都を相手取った民事訴訟で、東京高裁は06年、産院による取り違えのミスを事実と認定。都に対し2000万円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡し、確定した。

江蔵さんは生みの親の情報を自力で探したが、手がかりは得られなかった。高裁の判決後も生みの親を調べるよう都に協力を求めたものの協議を拒まれたため、提訴に至ったという。

原告側は都に対して、江蔵さんの生みの親を探し出した上で、生みの親に連絡先の交換について意思確認することを求めている。

 

黒塗りで開示された戸籍受附帳

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墨田区から開示された黒塗りの戸籍受附帳を記者会見で示す代理人の小川隆太郎弁護士(左)と江蔵智さん=2021年11月、東京都
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都側は第一回口頭弁論で、江蔵さんの生みの親に関する調査は「根拠となる法令がないためできない」と主張。さらに、相手方のプライバシーの保護などを理由に、請求棄却と却下を求めた。

これに対し、原告側はこの日の弁論で「原告の出自について、調査を実施する義務が東京都にあることは明らか」と反論した。

江蔵さんは、墨田区に対して情報公開請求を行い、自らが出生した当時の戸籍受附帳の開示を受けた。だが、そのほとんどは黒塗りだったという。

原告側は、都が墨田区に対して戸籍法に基づく公用請求などを行うことで、戸籍受附帳の全面開示が可能だと主張。それをもとに都が調査し、連絡先の交換が可能か生みの親の意向を確認することを求めている。

原告側代理人の小川隆太郎弁護士はこの日の法廷で、「(調査の結果、)真実の親が原告との連絡先交換を拒否するのであれば、原告は真実の親の意思を尊重し、会うことを諦めます。その意思確認を行う調査の実施を原告は求めているに過ぎないのです」と強調。江蔵さんが生みの親の心情を無視するのではなく、最大限に配慮する姿勢であることを改めて明言した。

原告側は今後、子どもの権利や個人情報保護に詳しい専門家の意見書を裁判所に提出する方針。

(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)