“外国人風”の見た目で犯罪を疑われる。「人種差別的な職務質問」、改善求める署名スタート

人種差別的な職務質問(レイシャル・プロファイリング)を巡っては、在日アメリカ大使館が2021年に警告を出すなど問題視。東京弁護士会の調査にも、日本の警察官による人権侵害行為を訴える声が寄せられていた。
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人種差別的な職務質問の改善を求める署名キャンペーン
STOP レイシャルプロファイリング

「外国人と判明すると(警察官の)態度が変わる」

「一緒にいた日本人の友人には何もなく、自分のみ職質(を受けた)」ーー。

海外にルーツのある人に対する人種差別的な職務質問の実態が、東京弁護士会の調査などで明らかになった。

警察庁も2022年に全国調査を実施し、6件の職務質問で「不適切・不用意な言動があった」と認定した。一方で、同庁は「人種や国籍への偏見に基づく差別的な意図は持っていなかった」として、具体的な改善策を示さなかった。

こうした中、日本の警察に改善を求める署名運動「STOP レイシャルプロファイリング」が、5月24日にスタートした。呼びかけているのは、差別的な職務質問を受けた外国ルーツの当事者や弁護士、研究者などでつくる市民グループだ。

賛同団体は10を超え、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナル日本などが名を連ねる。

呼びかけ団体は「警察官が、外国にルーツがあることや見た目が“外国人”という理由で犯罪者予備軍として扱うことは、公権力による人種差別であり人間の尊厳を損なう重大な人権侵害だ」と指摘している。

 

レイシャル・プロファイリングとは?

警察などの法執行機関が、人種や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすることは「レイシャル・プロファイリング(Racial Profiling)」と呼ばれる。

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日本のレイシャル・プロファイリングに見られる4つの特徴
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

 

東京弁護士会は2022年、外国にルーツのある人たちを対象に、レイシャル・プロファイリングに関するウェブ調査(有効回答数:2094件)を実施。警察官から受けた人権侵害行為を訴える声が多数届いた。

「見た目だけで(違法な)薬などを持っているのではと疑われた。終始乱暴で失礼な態度で、 いきなりズボンを脱がされた」

「理由を聞かされず腕まくりなど身体検査をされた」

職務質問の根拠となる「警察官職務執行法」は、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断」し、犯罪を犯しているまたは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由がある場合に、相手を停止させて質問することができると定めている。

東弁の調査では、こうした「不審事由」がなく、外国にルーツを持つこと以外に警察官から声をかけられる理由はなかったと認識している、と答えた人は76.9%に上った。

日本で生まれ育ったにも関わらず、警察官から「家族そろって国に帰れ」とヘイトスピーチを浴びせられた、との証言も寄せられた。

「外国人であることが分かった途端、警察官の態度が急変しタメ口で職務質問が行われた」といった、国籍などを確認した後に警察官の対応が悪くなったという声も複数あった。

日本で暮らす外国人や海外ルーツの人を対象にしたハフポスト日本版の2021年のアンケートには、329人から人権侵害だと思ったり、嫌だと感じたりした職務質問の体験が寄せられた

この中で、「あなたのような外国人は、たいてい危険な凶器かドラッグを持っているから」と警察官に言われたり、許可なくバッグや財布を調べられたりしたとの訴えもあった。

 

職質の記録、警察官への人権研修を求める

日本のレイシャル・プロファイリングに対する指摘は、他国の外交機関からも出ている。

在日アメリカ大使館は2021年12月、外国人が日本の警察からレイシャル・プロファイリングの疑いのある職務質問などをされたとの報告があったとして、日本で暮らすアメリカ国民に対して公式Twitterで異例の警告を出した。

警察庁も2022年に調査を実施。警視庁の警察官がミックスルーツの人に対し、職質の理由を「ドレッドヘアーでおしゃれな人が薬物を持っていたことがあるから」と説明したケースなど、4都府県警の計6件で「不適切・不用意な言動があった」と認定した。

だが、同庁はハフポスト日本版の取材に「(対応した各警察官は)人種や国籍への偏見に基づく差別的な意図は持っていなかった」「警察として、レイシャル・プロファイリングがあったとは判断していない」などと回答するにとどめた。

こうした警察側の姿勢に対し、「STOP レイシャルプロファイリング」の市民グループは「人種や肌の色、出身国など特定の属性に基づいて不利益な効果をもたらすことそのものが人種差別。差別する意図がなくても、不利益な効果が発生すれば人種差別に当たる」と批判する。

署名活動では、警察庁と同庁を管理する国家公安委員会に対し、主に以下の対応を要望している。

▽警察職員に対して、当事者から話を聞くことを含めた人種差別に関する研修を定期的に行う。すでに研修している場合、その具体的な内容や頻度、開催場所、講師の所属を明らかにする

▽事後的に検証できるよう、職質対象者の人種などの属性や警察官の対応を記録する。職質する警察官にボディカメラの装着を義務付ける

▽レイシャル・プロファイリングに関する調査を定期的に行う

▽レイシャル・プロファイリング防止のためのガイドラインの策定・公開

中心メンバーの宮下萌弁護士は、「警察官による差別的な職務質問があったのか、あった場合それがどのように行われたのかを、後から検証できる材料がないことが問題。まずは外国ルーツの人に対する職質の実態を可視化することが必要です」と強調する。

キャンペーンには、人種差別的な職務質問の体験を募るアンケートも添えている。日本語・やさしい日本語、英語、フランス語をすでに公開し、言語を順次追加していくという。

 

<取材・執筆=國﨑万智(@machiruda0702)>