汚染水のトリチウム、タンク北側井戸から6.4万ベクレル 2日間で15倍に

東京電力福島第一原発のタンクから高濃度の汚染水300トンが漏れた事故で、東電は9月11日、タンク近くの観測井戸の水からトリチウム(三重水素)が1リットルあたり6万4千ベクレル検出されたと発表した。放出限度の6万ベクレルを超えている。東電はさらに井戸を掘って汚染の広がりを調べる。
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福島第一原発のタンクから高濃度の汚染水300トンが漏れた事故で、東京電力は9月11日、タンク近くの観測井戸の水からトリチウム(三重水素)が1リットルあたり6万4千ベクレル検出されたと発表した。放出限度の6万ベクレルを超えている。東電はさらに井戸を掘って汚染の広がりを調べる方針だ。朝日新聞デジタルが伝えた。

8日には同4200ベクレルのトリチウムを検出しており、2日間で15倍に増えた。今回、別の井戸からトリチウムの検出量が急増していることについて、東電の広報担当者はロイター通信の取材に、汚染水が地下水に到達した可能性が「より高まった」と話している。

■ 東京オリンピック招致での「国際公約」、楽観できず

東日本大震災から11日で2年半を迎えたいまも、放射性物質を含んだ汚染水対策は想定外の事態が続き、原発事故収束の大きな障害となっている。日本が東京オリンピック招致で約束した“国際公約”を果たす道のりは、決して楽観できない状況だ。

凍土遮水壁の効力は未知数で、建屋への流入を止めることができなければ収束が遅れる。高性能浄化装置が十分機能するかどうかでも状況は大きく変わる。すでに約60種類の放射性物質を取り除ける多核種除去装置(ALPS)が設置されたが、試運転で配管に腐食が見つかり、全て停止した。

浄化後の海への放出にも全国漁業協同組合連合会が猛反発。タンクでの保管の長期化には漏洩のリスクがついて回る。

■ 田中俊一規制委委員長「福島支援は口ばかり」

「口では福島支援と言いながら、ちっとも支援していない」。原子力規制委員会の田中俊一委員長は11日の記者会見で、福島第1原発事故の汚染水漏れで福島県や近県の水産物を敬遠する動きが国内外で強まっていることに不満を示した

田中委員長は「環境や生態系に影響は出ていないのに、大変なことが起こっているように捉えられている」と指摘。「漁を自粛したのはこういう状況では売れないからで、危険だからではない。市場に出ているのは放射性物質が検出されない魚なのに買わない」と語った。

また、田中委員長は福島第一原発の現状について、「委員長に就任する際、福島の何人もの人たちから『原発を安定化させてほしい』と言われていたので、今の状況に対してはじくじたる思いがある」と述べた

そのうえで、「長期的に汚染水が地下水に漏れ出すのを防ぐ対策を確立しないといつまでも水が出ていく状況が続く」と述べ、規制委員会として対策に力を尽くす考えを改めて示した。

■ 事故から2年半、東電副社長「まだ野戦病院状態」

東京電力の相沢善吾副社長は11日の記者会見で、この日は事故から2年半に当たり「福島県や社会にご心配をかけ、あらためておわび申し上げます」と謝罪した上で、原因を調べるため、漏えいのあったタンクの解体を検討していることを明らかにした

また、事故を起こした福島第一原発について「まだ野戦病院のような状態が続いている」と述べた。これまでの事故対応について相沢副社長は「火事場の対応、急場しのぎをしなければいけなかった」と表現。「現場では、放射能の高い濃度の水、がれきを扱っている。事故以来、通常の状態とはかけ離れている」と話した。

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「東北六魂祭」で、上空に白いスモークでハートマークを描く航空自衛隊の「ブルーインパルス」=1日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/01 (credit:時事通信社)
飛行するブルーインパルス (20 of23)
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東北六魂祭パレードが行われる国道4号の上空を飛行するブルーインパルス=1日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/01 (credit:時事通信社)
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福島市で2日間にわたり行われた「東北六魂祭」が2日、閉幕した。福島わらじまつりや青森ねぶた祭など東北6県の夏祭りが勢ぞろいし、東日本大震災の鎮魂と復興を祈った。来場者数は計25万人に上った。写真は2日目のパレードに登場した青森ねぶた=2日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/02 (credit:時事通信社)
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東北六魂祭2日目のパレードで、練り歩く山形花笠まつりの踊り子=2日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/02 (credit:時事通信社)
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東日本大震災の被災地で営業する仮設商店街=5月23日、宮城県気仙沼市 \n\n撮影日: 2013/05/23 (credit:時事通信社)
福島原発 地下汚染水の視察
福島原発・福島第1原発を茂木経産相が視察(01 of12)
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1、2号機の海側で行われている、地下汚染水の対策現場を視察する茂木敏充経産相(中央)=8月26日午後2時45分、福島県大熊町の東京電力福島第1原発[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・視察する廃炉安全監視協議会(02 of12)
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放射能汚染水漏れを受け、東京電力福島第1原子力発電所を視察する廃炉安全監視協議会のメンバー=4月24日午後、福島第1原発[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・福島第1原発を茂木経産相が視察(03 of12)
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汚染水の漏えいが見つかったタンク(正面)周辺を視察する茂木敏充経済産業相(右)=8月26日午後、福島県大熊町の東京電力福島第1原子力発電所[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・説明を受ける廃炉安全監視協議会のメンバー(04 of12)
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放射能汚染水漏れがあった東京電力福島第1原子力発電所の配管について、東電の担当者から説明を受ける廃炉安全監視協議会のメンバー=4月24日午後、福島第1原発[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・福島第1原発を茂木経産相が視察 (05 of12)
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1、2号機の海側で、地下汚染水の対策現場を視察する茂木敏充経産相(右手前)ら。中央の円柱状のものは遮水壁=8月26日午後2時41分、福島県大熊町の東京電力福島第1原発[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・第1原発敷地内の汚染水タンク(06 of12)
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東京電力福島第1原子力発電所の敷地内に立ち並ぶ汚染水タンク(手前)=3月5日(時事通信社チャーター機より撮影) (credit:時事通信社)
福島原発・敷地内に並ぶ汚染水を貯蔵するタンク(07 of12)
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敷地内に並ぶ汚染水を貯蔵するタンク=3月1日午後0時6分、福島県大熊町[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・敷地内に並ぶ汚染水を貯蔵する大型タンク(08 of12)
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敷地内に並ぶ汚染水を貯蔵する大型タンク=3月1日午後0時24分、福島県大熊町[代表撮影] \n (credit:時事通信社)
福島原発・海側で行われている地下汚染水の対策(09 of12)
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1、2号機の海側で行われている地下汚染水の対策。手前は地下水のくみ上げ設備。中央奥に遮水壁がある=8月26日午後2時49分、福島県大熊町の東京電力福島第1原発[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・下汚染水の対策現場で地下水のくみ上げを行っている設備 (10 of12)
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1・2号機の海側で行われている、地下汚染水の対策現場で、地下水のくみ上げを行っている設備=8月26日午後2時48分、福島県大熊町の東京電力福島第1原発[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・汚染水を入れるG6タンク増設エリア(11 of12)
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汚染水を入れるG6タンク増設エリア=6月11日午前11時28分、福島県大熊町の福島第1原発[代表撮影] (credit:時事通信社)
福島原発・汚染水流出防止の護岸工事 (12 of12)
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汚染水の海洋流出防止のため、東京電力福島第1原発2号機の取水口付近で行われている護岸の地盤改良工事=22日午後7時[代表撮影] (credit:時事通信社)