なぜ、「親の責任」を指摘する男たちは愛人・隠し子を作るのか?

自民党より参議院議員に立候補を予定している元衆議院議員の山田宏氏に隠し子がいたことを週刊文春がすっぱ抜き、話題になっているようです。
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自民党より参議院議員に立候補を予定している元衆議院議員の山田宏氏に隠し子がいたことを週刊文春がすっぱ抜き、話題になっているようです。山田氏と言えば、過去にも衆議院議員の渡嘉敷奈緒美氏(自民党)との不倫疑惑が報道されていましたが、つい先日も「保育園落ちた死ね」のブログに対して、「落書きですね」「生んだのはあなたでしょう」「親の責任でしょ」等の暴言を吐いて、批判を浴びていました。

その山田氏ですが、妻へのインタビューをした文春の報道によると、一度は自分の子ではないと疑惑を否定(結局は弁護士を通して認知したとのこと)。しかも、実の家族に対しても子育てにはほぼノータッチで、自宅には月2、3回しか帰らない生活を送っているとのことです。さらには現在山田氏の側から離婚裁判を起こしているというのです。

不倫した女性との間に子供を作り、家族を垣間見ない行動を取っておきながら、一方で庶民に対しては「親の責任だ!」と吐き捨てる。そのあまりの言行不一致さに、怒りを通り越して、呆れか返った人も多いかと思います。早速、ネット上では「親の責任を果たしていないのはどっちだ!」という批判が数多く寄せられていました。

●子育てをしていない男性が子育てを語る理由

でも、なぜ、彼は親の責任と言いつつも、平気で妻、子供、不倫相手、その子供を平気で裏切るような行為ができるのでしょうか? 他人から見れば明らかに矛盾したような言動にも見えますが、おそらく彼の頭の中では筋が通っています。彼の言葉に一つ文字を加えると、彼の頭の中がとてもスッキリ分かるはずです。

その言葉は「母」。

彼らが言いたいのは、「親の責任」ではなくて、全て「母親の責任」なのです。性別役割分担意識のもと、「時間的な投資という意味での子育て」は全て母親の責任だと理解しているのでしょう。ではこれをもとに、山田氏の発言を再度見てみましょう。

「(子育てという責任を放棄して仕事をしたい身勝手な母親の)落書きですね」

「生んだのはあなた(母親)でしょう」

「(子育ては)まずは母親の責任でしょ」

いかに自分たち父親が子育ての当事者ではないという意識を持っているかが、はっきりと分かりますね。

●女性差別者・女性蔑視者に都合の良い家族観

では、隠し子を認めようとしなかったのはどういう心境なのでしょうか?

これはあくまで予想でしかありませんが、おそらく「中絶するか、そもそも性行為自体を断れば良かったのに」と考えているならばしっくりきます。つまり、婚外性交渉に応じた時点で子供ができれば母親の責任と理解していると考えられるのです。

でも、それは相手の女性との話。たとえ不倫相手の子供であっても、自分の子供には変わりません。にもかかわらず、なぜ彼は自分の子だと認めようとしなかったのでしょうか? なぜ責任の範囲外と考えたのでしょうか?

それには自民党が現在出している改憲案の第24条を読むと、とてもしっくり来ます。改憲案には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」と書かれていますが、最後の文を裏返せば、「家族ではないならば助ける必要が無い」とも読めますね。

つまり、父親は家族である子供には金銭的な投資を行う責任があるものの、家族ではない子供を認知する必要も無ければお金を投じる責任も無い、というのが山田氏の本音ではないでしょうか。彼のホームページを見ると、道徳教育を執拗に訴えているようですが、これが彼のあるべき父親の姿かと思うと、身震いが止まりません。

●自民党は性差別者ではないまともな候補者を

これらのことを考慮すると、山田氏の「子育ては第一義的には親の責任」という主張に対しても見方が変わってきます。つまり、子供を社会で育てるという文化になれば、様々な監視の目が入るために、彼のように亭主関白のもと自分に都合の良い非道を続けたい人物にとっては最高に都合が悪いから反対しているのでは、とも考えられるわけです。

なお、朝日新聞社WEBRONZAの「乙武洋匡氏の不倫に見る日本型結婚の闇」(※4/24まで無料公開中です)という記事の中でも触れたのですが、本来であれば不倫や隠し子という問題は政治的な能力とは無縁であるべきだと思います。フランスのミッテラン大統領が隠し子を指摘された際に、「Et alors?(それがどうしたの?)」と答えただけで済んだような社会が理想でしょう。

ですが、ミッテラン大統領はフランス人であり、かつ社会党の人間です。家族のあり方に対する「こうあるべき」という考えは、山田氏や現在の自民党改憲案を起草した人たちよりも圧倒的に弱いと感じています。家族のあるべき姿を規定して推し進めようとする立場の人たちが行う不倫や隠し子とは全くわけが違うのです。

私は特定の政党を支持しているわけではなく、かつ基本的に政治家の個人的な問題が露わになった際にその所属政党全体を批判するということは控えているのですが、この自民党の改憲案第24条に関しては絶対に反対です。ますます世の中が山田氏のような非道な人間に都合の良い仕組みになりかねません。多様性を尊重して社会的成長を続ける欧米先進国とは真逆で、社会が衰退する方向に歩みを進めることになるでしょう。

現在自民党では市民がインターネット投票で参院選の候補を決めるオープンエントリープロジェクト2016というキャンペーンを行っており、これはとても画期的な機会だと思います。何としても山田氏のような候補者ではなく、しっかりとした候補者を市民が選挙に送り出したいものです。自民党の支持者ではない人も投票できるので、是非投票してみてください。

●私たちから議論を盛り上げよう

なお、前回および前々回のエントリーでも告知させていただきましたが、私が連載をしている朝日新聞社WEBRONZAにて『女性の「自分らしさ」と「生きやすさ」を考えるクロストーク』というイベントを東京渋谷でシリーズ開催しており、2016年4月24日(日)に開催する第二回は、「これからの夫婦のあり方とカップル文化について考えよう」というテーマで行う予定です。

乙武洋匡氏の不倫を妻が謝罪した問題や、不倫後にベッキー氏だけが休業に追い込まれている問題、夫婦別姓が認められなかった問題、「女の子は頭からっぽでいい」という歌詞の問題などに加えて、今回の山田氏の不倫から浮かび上がる夫婦や家族やパートナーシップの問題についても、ディスカッションができればと考えております。

同じような問題意識を持った方々と交流ができる場もありますので、ご興味ある方は是非ご参加くださいませ。詳細はWEBRONZAのページをご覧ください。(※なお4/22のお昼頃まで申込締切日が誤って記載されておりましたが、現在でも申込可能です)