ドラフト会議を徹底解説。指名順はどう決まる?「ウェーバー制度」とは?

普段あまり野球を見ない方も...ドラフト沼へようこそ。
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プロ野球ドラフト会議。野球ファンにとっては1年に1度、待ちに待ったイベントだ。

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普段野球をあまり見ない人にとっても、夏の甲子園でチームを優勝に導いた「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹投手や、高校通算最多本塁打の清宮幸太郎選手163キロ右腕・佐々木朗希投手など、ニュースで話題になった選手の行き先が気になったことはないだろうか。

一方で、プロ12球団の指名順や、指名できる選手の制限など、その規定は細かい。ドラフト会議を15年以上に渡ってウォッチしてきた自称ドラフトマニアの記者が徹底解説する。

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ドラフトのくじ引き(2018年)
時事通信社

■1位指名はとにかく公平

今のドラフト会議は、12球団の戦力均衡を目的に制度設計がされている。かつてドラフト会議がなかった時代や、一部の選手が各球団との交渉次第で行き先を決められた時代は、資金力のある球団に有力選手が集まりかねず、いわゆる「裏金」なども問題視された。

とはいえ、各球団がその年のドラフトで一番欲しい選手、すなわち「1位指名」はその年の順位に関係なく、公平に決められる。

1位は各球団が同時に欲しい選手を指名する。選手が被ったら「くじ引き」だ。

注意が必要なのは、獲得するのはその選手との「入団交渉権」ということだ。指名=入団ではなく、あくまで球団が独占的にその選手と入団に向けた交渉ができるというもの。選手が思っていたより指名順が低かったり、意中の球団ではなかったりなど、指名に成功したが入団を拒否されるケースもある。

ちなみに1位指名の競合では「トルネード投法」で一世を風靡した野茂英雄投手(新日鉄堺→近鉄)と即戦力左腕・小池秀郎投手(亜細亜大学→ロッテ/入団拒否)の8球団が最多記録だ。

2017年には左の長距離打者・清宮幸太郎選手(早実)に人気が集中。7球団競合の末、日本ハムが獲得に成功した。

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日ハムの入団交渉権が獲得した清宮選手
時事通信社

■くじが外れたら

くじが外れれば、外れた球団が再び、まだ指名されていない選手の中から1位を選ぶ。これが俗にいう「外れ一位」だ。

外れ一位がまたもや被ったら再びくじ引き。外れたら「外れ外れ一位」を選び...という風に12球団の1位指名が確定するまで繰り返す。

ちなみに、外れ一位を侮るなかれ。史上初の3度のトリプルスリーを達成したヤクルト・山田哲人選手は、ヤクルトの「外れ外れ一位」。ハンカチ王子・斎藤佑樹投手(現日本ハム)→塩見貴洋投手(現楽天)との競合に敗れ、3度目の正直で指名した選手なのだ。

■ウェーバー制度とは?

2位以降は「ウェーバー制」での指名が始まる。これは、各球団のペナントレースの順位を元に指名順が決定される。

1位指名では12球団の1位、すなわち合計12人が指名される。まだ指名されていない選手の中から、順位の低かった球団から好きな選手を順番に指名できるのだ。

2019年のドラフトでは、ヤクルト(セ・6位)→オリックス(パ・6位)→中日(セ・5位)→日本ハム(パ・5位)...という順番だ。

この場合、ヤクルトが指名した選手は、その時点で入団交渉権が確定し、後ろのオリックスや中日は指名できない。2位から先は順番が決まっていて、くじ引きにはならないのだ。

ここで、セ・リーグの最下位球団とパ・リーグの最下位球団はどちらが先か、という問題が生じるが、2019年から1年ごとにセ・パが交互に変わる。2019年はセ・リーグの最下位(=ヤクルト)で翌2020はパ・リーグの最下位だ(これまでは交流戦の戦績で優先権が決められていた)。

ここからがやや複雑だ。

2位指名は順位が低い順。だが、3位はその逆になる。

つまり、セ・パ1位の球団から指名を始める。一方で4位になるとまた順位が低い順から...と「ジグザグ」に指名が進んでいくと覚えておけばOKだ

各球団は、欲しい選手の獲得が終わると「選択終了」を明言する。原則、各球団10人まで指名できるが、指名選手の数は大まかに5人から9人程度だ。

■獲れる選手、獲れない選手

有力ならば誰でも指名して良いわけではない。高校生・大学生はプロ志望届を提出し、プロ志望であることを明言しておく必要がある。かつては、表向きは大学・社会人志望と見せかけ、実は特定の球団と話が付いている、などといった通称「寝技」もあったが、この制度の導入によりそれは無くなった。

社会人チームにも縛りがある。高校を卒業して入った選手は3年間在籍しないと指名できない。18歳で社会人チームに入った場合、21歳の年になっている。

大学を経て入った場合は2年、つまり最短で24歳の年から指名可能だ。

一方で、独立リーグはその限りではない。高校を卒業して独立リーグ入りし、その翌年にプロ入りすることも可能というわけだ。

■育成ドラフト

ドラフト会議終了後に行われるのが「育成ドラフト」だ。これは「育成枠」の選手を指名するものだ。育成選手は3桁の背番号を付け、1軍の試合に出場できない。高額な契約金はもらえず、「支度金(推定100万円程度)」を手に支配下入り(=通常のドラフトで指名された選手と同じ待遇)を目指す。

育成選手出身では、WBC日本代表にも選ばれた元巨人・山口鉄也投手や、ソフトバンクの千賀滉大投手と甲斐拓也捕手のバッテリーが出世頭だ。育成枠から日本を代表する選手たちが出現するのは、もはや珍しいことでは全くない。

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千賀滉大投手(ソフトバンク)
時事通信社

ここからは、スカウトの腕の見せ所。事前にニュースになるような有名選手は、通常のドラフト会議で指名される。他球団のスカウトが見つけていない、通称「隠し球」を指名する可能性もあり、ドラフトファンも熱視線を注ぐ。

ちなみに育成枠にくじ引きはない。育成1位から最下位球団が優先的に指名していき、育成2位も再び最下位球団から順番に決める。通常のドラフトと違って「ジグザグ指名」ではない。

■ドラフト、どこに注目すればいい?

ドラフトは、何も有名選手のくじの結果が全てではない。全国的には無名な選手や、甲子園で活躍できなかった選手でも、将来性を高く評価した球団が指名することだってある。

こうした選手の名前を覚えておけば、入団後の活躍も気になるし、ドラフトをより楽しむためにアマチュア野球を見たくなる...かもしれない。

ドラフト会議は、アマチュア野球とプロ野球をつなぐ架け橋だ。

プロ野球しか、もしくは甲子園しか見ない...というファンに年に一度、それぞれの世界の魅力を感じてもらう絶好の機会とも言える。

ドラフト会議の面白みを知って、ぜひその橋を渡ってみてほしい。