マスコミは、マイナンバー制度で不安を煽り過ぎ

マイナンバー制度を導入するか、脱税行為を放置して、社会保障の削減だけをすすめるのか。

政府というか、お役人は決められたことを決められたように粛々とこなすのは得意でも、新しい制度、とくにITがからむと信用出来ないと思っていたら、厚生労働省のお役人の中安容疑者がマイナンバー制度導入をめぐって賄賂を受け取っていた事件が発覚しました。マイナンバー制度も政府が運用するとなるとなにか信用できないと感じている人も多いかと思います。しかしそういった国民の不信感に乗って、マイナンバー制度導入反対の音頭をとるように不安を過剰に煽っているマスコミもなんだかなあと感じます。

それにしても、中安容疑者の業界人ぶっている姿が印象的でした。あのセンスの悪さは笑ってしまうしかありません。しかしこのケースは、公務員の犯罪としてはまだ稚拙なほうじゃないでしょうか。普通は、もっと組織ぐるみで、ガラパゴスそのものの制度をつくり、巧妙な利権づくりを行うものです。それは違法ではなく、犯罪とはいえませんが、実際には大きく国益に反しています。

そして困ったことに、マスコミが不安を煽れば煽るほど、その対策だとして、また新しい制度や規制、また組織が生まれ、さらに利権が発生するというのが世の習いです。それに、不安を煽れば煽るほど、詐欺犯罪の肥やしともなってくるのではないでしょうか。

ところでテレビの情報番組、またそこに登場してくるコメンテーターがやたらマイナンバー制度の欠点やリスクを取り上げ、視聴者の不安感を煽っているのが気になります。

キャスターの長谷川豊さんが、そういった体質が日本のチャレンジ精神を蝕んで、ダメにしてきたのではないかとご指摘ですが、そうかもしれません。大阪の自民党、また表向きは共闘でないにしても、実質は共産党と共闘し、感情に訴えて改革を潰すことに汲々としている姿にも強くそれを感じます。

それよりも、社会人になって以来、自分で会社を経営していても給与所得なので、所得はすべて透明で、税務署に完全に捕捉されています。だから、別にマイナンバー制度になろうが、なるまいが関係のない話ですが、過剰に警戒されると、きっと裏収入が結構ある人じゃないかと疑ってしまいます。

マイナンバー制度を導入すれば脱税行為が激減します。十分な所得がありながら税金を納めていない人にとっては恐怖の制度です。生活保護の不正受給も減るでしょう。

だから政府もはっきりと、利便性や行政手続きの効率化などのメリットもあるかもしれないいとしても、基本は脱税を防ぎ、税収を増やすために導入すると言い切ればいいのではないでしょうか。「マイナンバー制は増税目的」だという風説を流している人がいますが、給与所得者にとっては今のままで増税にはなりません。

所得の捕捉率の業種間格差を「9対6対4」としたのが「クロヨン」、もっと格差があり、実際には給与所得者約10割、自営業者約5割、農林水産業者約3割としたものが「トーゴーサン」ですが、それを修正しようとするひとつの試みが消費税です。マイナンバー制度はさらにその格差を埋めるのではないでしょうか。サラリーマン、サラリーウーマンは、とられっぱなしで、取りやすいところから取るで、いつもまっさきに犠牲になります。もっと怒ってもいいはずです。

端的に言えば、マイナンバー制度を導入するか、脱税行為を放置して、社会保障の削減だけをすすめるのかの問題でじゃないでしょうか。

(2015年10月16日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)