マイナス金利の行方

短期的な円安、株高効果は期待外れに終わり、金融仲介機能が低下するという長期的なデメリットが心配されます。
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1月29日、日銀がマイナス金利を導入しました。金利はゼロからマイナス0.1%に引下げ。今後の追加緩和は長期国債の購入額80 兆円のままで金利が下がることになります。「マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入」と言っていますが、結局は、量的緩和から事実上の金利ターゲット政策への移行です。これ以上の、量的緩和はリスクが高過ぎるということです。

マイナス金利の効果は、あえて言えば、円安維持で、その延長線上に株高ということです。しかし、人民元問題のリスクや新興国の経済不振などの問題が残っている以上、抜本的な解決策にはなりません。ですから、審議委員の間でも意見が割れて、5対4の僅差で強引に決めざるを得なかったのだと思います。

黒田日銀は、本来、マーケットが円安、株高に戻りそうなタイミングで新政策を打ち出したかったはずです。中央銀行の政治からの独立の重要性がよくわかります。

私は、アジア経済危機の後、黒田財務官の下、国際金融局で勤務していました。為替介入をする時の鉄則は、決してマーケットの流れに真っ向から挑むことではありません。たとえばマーケットが円高に振れ過ぎて、市場関係者が、「ちょっと行きすぎかも?」と疑心暗鬼にとらわれた瞬間に介入するのです。マーケットの流れが変わりそうな潮目を先取りすれば介入が効果を発揮します。それを黒田財務官に教えてもらいました。

10日水曜日の為替は114円台。株価は1万5713円となり、一時、2014年10月に日銀が第2次緩和を打ち出す前の水準まで下がりました。これでは元の木阿弥です。また、10年物の国債の金利は凸凹はありますが、マイナスになることも多くなっています。

メガバンクのトップの方とお話をしましたら、「貸出金利が下がる一方で預金金利をマイナスにはできないから、メガバンクでさえ大幅な減収要因になる。まして、地方銀行の経営は立ち行かないのではないか。」ということでした。確かに、金融株、とりわけ地銀の株価は大きく値を下げています。

短期的な円安、株高効果は期待外れに終わり、金融仲介機能が低下するという長期的なデメリットが心配されます。そうなると銀行の信用創造機能が縮小しマネーサプライは減少します。言い換えれば、マイナス金利下では、長期的にはマネーが資本や債券から貨幣にシフトし、デフレ効果を持ちます。

10年物の国債金利がマイナスということは、10年後の短期の名目利子率もゼロ近辺だと予想していることを意味しますから、デフレということです。金融政策で経済成長はうながせません。日本の潜在成長率は2104年の0.5%から2015年0.4%と下がってきています。これがアベノミクスの結果です。

真の規制緩和でビジネスチャンスを広げる努力と同時に、少し遠回りかもしれませんが、教育や職業訓練に資源を集中して一人一人の生産性を高める政策を地道に行い、結果として格差の少ない社会をつくっていくしかないと思います。