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「夏は暑くて冬は寒い家」3つの改善方法とは? 建築家に相談してみた

リモートワークが普及し、おうち時間が増えた今、我が家の住環境に悩む方へ。SDGs時代、環境負荷を減らし、快適な住宅をつくるポイントとは? 日本は「窓後進国」など、建築家への新築・リノベーション相談から見えてきた住宅の課題と未来。

「我が家は、夏暑くて冬寒い」コロナ禍でおうち時間が増えた今、そんな悩みを抱える人もいるのでは?

ハフポスト日本版で自宅の「断熱性」に対する満足度についてTwitterアンケートを取ったところ、「とても不満を感じている」が29.8%、「やや不満を感じている」が25.9%と、半数以上(55.7%)が不満を感じていることがわかった。

夏は24時間エアコンつけっぱなし、冬はガスヒーターが欠かせない我が家

2014年に築40年、約70平米の木造住宅を都内でリノベーションした筆者。「古き良きものを大切に」との思いを抱いていたが、住み始めると寒さ・暑さが想像以上に厳しい。リモートワークが増えたことで、夏はエアコンつけっぱなし、冬はガスヒーターに頼る生活に。昨冬の暖房費は月額3万円以上に膨れ上がった。

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リビング南側からの風景。昨年からリモートワークが増えた。
ハフポスト日本版

「暑さ寒さ…快適性をアップさせたい」
「環境にも配慮した家づくりをできないか」

そんな悩みを、サステナブル住宅賞などの受賞歴を誇り、環境配慮型建築の実践で知られる建築家・川島範久さんに相談することに。快適な家づくりの考え方や、日本の住宅事情、新築・リノベーションの3つのアドバイスを聞いた。

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建築家、川島範久建築設計事務所主宰、明治大学理工学部建築学科専任講師。日本建築学会賞(作品)、第7回サステナブル住宅賞 国土交通大臣賞、住まいの環境デザイン・アワード2017 グランプリ、2020年度JIA環境建築賞グランプリ(JIA環境大賞)、第25回前田工学賞。「自然と繋がるDelightfulな建築」をフィロソフィーとして住宅やオフィスビルなど多くの設計を手がける。

快適な住宅をつくるための基本

住宅を設計する時、まず重要なのが「その住宅が建つ土地の気候に合った『パッシブデザイン』を考えること」と語る川島さん。

「例えば、夏は日射を入れず、冬は太陽の熱を取り込めるよう、土地の特徴を捉えること。自然エネルギーを最大限に活用する基礎づくりが大切です。その上で、温湿度・日射・風に対して適切な“開き方”と“遮り方”を考え、最後に暖冷房、換気などの設備を検討します」

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川島さんが設計し、「第7回サステナブル住宅賞」国土交通大臣賞(最優秀賞)などを受賞した「Diagonal Boxes」。真空トリプルガラス、樹脂サッシ、断熱ハニカムブラインドなどを備え、暖冷房なしでも快適な温熱環境に。
PhotoⒸJumpei Suzuki

 暑さの7割、寒さの5割は「窓」が原因

「夏は暑くて冬は寒い」という筆者の悩みに対しては「古い木造一軒家なので、断熱性、気密性が低いことなどが要因では」とのこと。家の中で特に影響が大きい部分を尋ねると、意外にも「窓」という答えが返ってきた。

「実は、夏は7割の熱が『窓』から侵入し、冬は5割の熱が『窓』から逃げていくと言われています。特に日本で広く普及しているアルミサッシと単板ガラスの窓は、熱がとても逃げやすい」(川島さん)

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(出典)樹脂サッシ普及委員会 快適窓学より引用 ※平成11年省エネ基準の住宅(東京モデル)
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日本は「窓」後進国? 海外と比べてみたら…

確かに、我が家には窓がとても多い。メインの居住空間である2階のリビングは、もともと小さな子ども部屋が3室あった場所。結果、東西南北、6枚ものアルミサッシ窓がある。また、ガラスも複層タイプではなく、単板のガラスである。

なぜ断熱性の低いアルミサッシと単板ガラスの窓がこれほど普及しているのか。もっとよい素材はないのだろうか。

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リビングダイニングに窓が6枚もある我が家。これが暑さ寒さの原因だろうか。
ハフポスト日本版

「アルミは軽く加工しやすく、大量生産するのに便利な素材。戦後、住宅需要の高まりを受けて、アルミサッシは急速に普及しました。しかし、現代では快適性・省エネルギーの観点から、断熱性の高い木製サッシや樹脂サッシ、そして高性能ガラスが注目を集めています。断熱性の高い窓でエネルギー効率を上げれば、ランニングコストを下げることもできます」(川島さん)

樹脂の熱伝導率は、アルミの約1/1000。日本の樹脂サッシ普及率は約22%だが、環境大国ドイツでは約58%だ(*)。「ドイツでは窓の断熱性についての厳しい性能基準への適合が義務化されています。そのため、樹脂サッシの普及が進み、日本より価格が安定し、手に入れやすくなっているんです」と川島さんは教えてくれた。

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*(出典)日本:日本サッシ協会 『住宅用建材使用状況調査2021年3月』 よりEU :サンゴバン社「Saint-Gobain Exprover marketing doc. 2016 EU 住宅用窓のフレームの種類別」より アメリカ:2010/2011 U.S.National Statistical Review and Forecast ※EU: Saint-Gobain社提供資料、アメリカ:樹脂サッシ工業会資料から引用。
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「壁と同等の性能を持ち、軽くて薄い窓が普及すれば、建築設計の新しい可能性を拓くことができます。日本でも多くの人の手に届くようになれば」(川島さん)

「夏は暑くて冬は寒い家」3つの改善方法

最後に「夏暑く冬寒い家」について、アドバイスを3つにまとめてもらった。

「夏は暑くて冬は寒い家」3つの改善方法

1.まずは気候を読んで、環境ポテンシャルを活かす
2.「家全体を高性能化する」よりも、まず「主要部分から高性能化する」
3.窓の断熱性能向上、断熱補強と気密性の確保

これらを意識すれば、例えば都会の狭小地でも、解放感と快適性を両立させた家づくりができるとのこと。アドバイスを受け、まずは滞在時間が長く、特に暑さ寒さが気になるリビングに絞って、窓の断熱性能向上から検討することとした。

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川島さん設計「Diagonal Boxes」内観。大きな窓が印象的だ。
PhotoⒸJumpei Suzuki

進化が加速する日本の窓ガラス

窓後進国だったはずの日本だが、調べてみると、近年は世界的にも優れた性能を持つ「真空断熱ガラス窓」が開発されている。

パナソニックがプラズマディスプレイの技術を応用して製品化したのが、2020年度省エネ大賞を受賞した真空断熱ガラス「Glavenir(グラベニール)」。薄さ約6mmで高断熱の真空断熱ガラス「Glavenir(グラベニール)」は、一般的なガラスと比べるとエネルギーロスが約1/8で、従来の三層ガラスと同等以上の断熱性を誇る。

パナソニックは、すでに欧州でもAGCと連携して真空断熱ガラス事業を展開しており、今後も他分野とも共創を目指し、Glavenirの応用可能性を広げていくという。

ここまではガラスそのものの話だったが、話を「窓」に進めよう。この真空断熱ガラスを用いて樹脂サッシのパイオニアメーカーのエクセルシャノンと共同開発した高い断熱性能を持つ真空断熱ガラス樹脂サッシ「シャノンウインドSPG」が、2021年6月に発売される。

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真空断熱ガラスと2枚の高透過ガラスによる三層ガラスの最新の窓「シャノンウインドSPG」は、一般的な三層ガラスの樹脂サッシと比べて約2倍の高い断熱性能で、外壁の断熱性能と比較しても同等レベルというから驚きだ。戸建てを新築する場合には、この最新の樹脂サッシの採用を検討してみたい。

2021年もリモートワークや外出自粛は続き、住環境は仕事や生活に大きな影響をあたえる。最新の窓の断熱効果を知り「暑い季節を迎える前に、窓からリノベーションを」そんな思いを強く抱いた。

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「窓」から家を見つめ直すのもいいかも?
kohei_hara via Getty Images

同じ悩みを抱える人は、この夏「窓」から見直しを図るのもいいかもしれない。窓のガラスを高断熱なものに交換するだけでも部屋のエネルギーロスは大きく改善する。

また、新築住宅を検討している人も「窓」の断熱性に着目して、夏も冬も快適で環境によい家を建ててもらいたいものだ。特に、家族が長く過ごすリビングの断熱性にはこだわってほしい。

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