PRESENTED BY Rethink PROJECT

「よその人が言うと文句になるが、地元の人が言うと愛着に」地元クリエイターの力を生かす地域デザインファクトリーとは?

「地元の課題は地元の人たちがよく理解している」地元クリエイターが、福岡市の知られざる魅力をPRするポスターを制作した。
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福岡市にある「博多旧市街」をご存知だろうか?

福岡に住まう人にもあまり知られていないという博多旧市街。日本中世最大の貿易港都市・博多の中心として栄えた地域で、現在もその歴史が感じられる寺社や街並みに加え、話題のスポットでの体験や飲食など新たな魅力も楽しめる。

そんな魅力をもつ博多旧市街をPRするため、地元クリエイターが作成したポスターが2022年11月6日から福岡市内に掲載された。これはクリエイターズマッチが主催する「地域デザインファクトリー」の一環として実施されたプロジェクトだ。

地域デザインファクトリーの狙いは、「クリエイターの地産地消」だという。その意味とは?本プロジェクト関係者(福岡市、ポスターを制作したクリエイター、主催のクリエイターズマッチ、協賛するRethink PROJECT(JT福岡支社))に話を聞いた。

地域クリエイターの育成という課題

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左からJT福岡支社・神田謙二さん、クリエイターズマッチ・呉京樹さん

── 地域デザインファクトリーとは?

クリエイターズマッチ・呉京樹さん(以下、CM・呉):クリエイターの地産地消を掲げる「Rethink Creator PROJECT」の一つです。

地域のクリエイター教育って日本はすごく遅れているんですね。首都圏にはデザインの専門学校がありますが、地方でクリエイターになりたい人の教育はほとんど実現されていない。だから、クリエイターズマッチは創業からずっと地域クリエイター育成をしています。その活動を見てくださったRethink PROJECTさんにお声がけいただいて、一緒にやろうとはじまったのが「Rethink Creator PROJECT」です。

これまでは、地域でワークショップを開催し、地元クリエイターさんに地域をPRするポスターを作ってもらうプロジェクトを5年やってきました。毎年非常に面白い作品がつくられ、意味のあるプロジェクトだと思っています。一方、自治体のレギュレーションもあり、オフィシャル素材として扱われないという課題もありました。

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ワークショップの様子

CM・呉:その課題を今年は解決したいというところで、地域デザインファクトリーが始まりました。最初から自治体さんにアウトプット先を決めてもらっているのが特徴です。その第一回が福岡市でした。

── Rethink PROJECTとしては、なぜこの取り組みを開始したのでしょうか?

JT福岡支社神田謙二さん(以下、JT 神田): クリエイターの地産地消を掲げるRethink Creator PROJECTは、視点を変えて、考えたものを形にして世の中に発信できるRethink Creatorの育成を通じた地方創生を目指すものであり、まさに我々の推進するRethink PROJECTが体現されたものだと思っています。

今回の地域デザインファクトリーには、クリエイターや福岡市のみなさまとのコラボレーションによって、福岡市を盛り上げられることにワクワクしながら私たちJTも参加しました。われわれ一社でできないことが、みなさまと取り組むことで実現できるというのが一番大きなメリットだと感じています。

まずは福岡の人に、福岡の魅力を知ってほしい

── 今回制作したポスターは福岡市の地下鉄の駅構内などで広く掲示されるそうですね。2枚のポスターにはどんな狙いがあるのでしょうか?

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宝輪唯さん作「まだまだ知らない顔」

地元クリエイター・宝輪唯さん:今回テーマとなった「博多旧市街」のあるエリアは、オフィス街のイメージを持っている方が多いと思います。実は歴史的な建造物が点在し、楽しく観光できるという二面性をPRできたらいいなと思って作成させていただきました。ポスターなので、ビジュアルを強く打ち出して興味を引けるようなデザインを意識しました。

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岡村しんしさん作「博多でキュン」

地元クリエイター・岡村しんしさん(以下、岡村):コンセプトの一つは、ネーミングを覚えてもらうこと。そもそも博多旧市街という名前を知らない人も多いと思ったので「#博多キュン市街」というハッシュタグをつけました。

あとは、実際に旧市街を歩いてみたら、面白いスポットがいっぱいあったんですね。着物を着て人力車に乗ったり、昔ながらの雰囲気で写真が撮れたりすることを、福岡の人もほとんど知らない。それを「きゅんスポット」として取り上げ、カップルでスポットを巡る様子をコラージュにして仕上げました。

── 福岡の人に福岡の魅力を知ってもらいたいというのが大きかったんですね。その点、福岡市さんはいかがですか?

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福岡市・小野勉さん
Photo:Yu Kizima

福岡市・小野勉さん(以下、市・小野):市の施策は観光客向けのものがほとんどですが、まずは地元の人に旧市街の魅力を知ってもらって、好きになって、誇りになれば、観光客の受け入れのときにも、地域の方が盛り上げ役を担っていただけるかもしれないんじゃないかという提案をクリエイターさんからいただきました。

普段はクリエイターさんと直接お話しさせていただくことは少ないんです。今回は、地元のクリエイターさんが何を思っているか、行政の施策は届いてるのか、ターゲットとしているところは正しいのかなど、ざっくばらんに意見交換をさせてもらえました。我々の中で出ている課題はやっぱりその通りだなと確認できましたし、新たな発見もありました。

ポスターも行政ではなかなかできない発想が取り入れられて、これまでとは違う層にもアプローチでき、今回実施して本当によかったと思っています。

よその人が言うと文句になるが、地元の人が言うと愛着に

── 地元のクリエイターと一緒にやるからこそ生まれた効果ですね。

CM呉:地元の課題は地元の人たちが本当によく理解しているということが今回一番感じたことです。日常的にはそこまで課題を感じてなくても、こういったアウトプットの機会があると、当たり前のことが、実は当たり前じゃないというRethinkな発想が生まれてきます。

今回もう一つわかったのは、よその人が言うと文句になることも、地元の人が言うと、文句じゃなくて愛着になるということですね。地元クリエイターが作り上げる作品というのはどこか愛着を感じるメッセージがあるんです。それは、地元の人にもきっと響くものになるんだと思います。

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福岡市の地下鉄駅構内にポスターが掲出された様子

── 地域活性化におけるクリエイティブの重要性についてはどう考えていますか?

市・小野:ポスターもそうですが、まずは目に触れて、気づいてもらわないといけない。全く博多旧市街を知らない人が、「博多旧市街」という名前だけでも頭に入れば、いつか暇なときに調べてもらったり、訪れてもらったりするかもしれないですよね。1度来てもらえれば、きっと良かったと思ってもらえる自信があります。そこでようやく、我々が今まで磨いてきた旧市街の魅力が生きてくるのかなと思います。

岡村:やっぱりデザインがいいところに人は集まると思っています。地方を元気にしていくには人を集めるということだと思うので、まずは見た目や空気感を魅力的にすることで、地方がどんどん賑やかになっていくんじゃないかなと思ってやっています。

CM呉:これからさらにクリエイティブを重要視する流れは強くなっていくと思いますね。グローバルで見ても、例えばヨーロッパのある国では本当に町中がアートで飾られていて、それを目的に移住される方もいるんですよね。日本でも、アーティストを集めるっていう地方創生プロジェクトは非常に多いと思っています。

地域の情報を発信しても、それが目にみえる形としてアウトプットされないと結局気づいてもらえない。だからこそ、地域にクリエイターが育つことが地方活性化に繋がるとずっと本気で思っています。

ぜひ飛び込んできてほしい。これからの地域デザインファクトリー

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── 最後に、今後「地域デザインファクトリー」に参加してみたいと思っている自治体やクリエイターにメッセージをお願いします。

岡村:今回、普段考えもしなかったことを自分の中で深掘りできましたし、新たに地域について知ることもあり、より地域のことが好きになりました。クリエイターのクリエイティブなスキルも伸びる機会だと思いますのでぜひ楽しんで参加してほしいです。 

市・小野:地域デザインファクトリーは、関わる人みんなメリットがある、三方良しの取り組みでした。迷っている自治体さんがあるのであれば、まずはやってみるべきじゃないかなと思います。行政が一方的にPRするのではなく、クリエイターさんと知恵を絞って、我々が抱えてる課題を同じ目線で考えてくれたっていうのは非常に楽しくていい経験になりました。

CM呉:今年7地域で実施しましたが、来年からはさらに多くの自治体さんと一緒にチャレンジしていきたいなと思っています。できれば全ての全国自治体でやりたいという思いでいますので、逆に手を挙げていただく地域が今後増えていっていただけると非常にありがたいなと思います。 

地元のクリエイターさんも、「自分なんかが」と謙遜される人もいましたが、ワークショップや企画をする際には、地元の人であることが大事になります。デザインがまだ苦手と感じている人も、思いがある方はぜひ飛び込んできてほしいなと思います。

JT神田:今回だけで終わらせてしまうのはすごくもったいない面白い取り組みだと感じています。持続可能な形で、クリエイターと行政、そして我々企業を結びつける取り組みに協力していきたいと思いますので、ぜひみなさま参加いただきたいです。