乱射事件の犠牲者、AIでよみがえり「私の代わりに投票を」。両親が作成した動画で論争

生きていれば、票を投じられるはずだった。AIのホアキン・オリバーさんは、動画で「私のために投票してください」と語りかける
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AIで再現されたホアキン・オリバーさんの動画
YouTube

銃乱射事件の犠牲者の両親が、息子をAIで蘇らせ、アメリカ大統領選への投票を呼びかける動画を作成した。動画はYouTubeで公開されているが、「すばらしい映像」「亡くなった本人の意思はどうなるのか」などと論争が起こっている。

 

「私の代わりに投票を」

動画は、2018年にアメリカ・フロリダ州のパークランドの高校で発生した銃乱射事件の犠牲者の一人、ホアキン・オリバーさんの両親が、知人の協力を得て制作した。乱射事件では、ホアキンさんを含めて生徒と教師計17人が死亡した。

2分強の動画の冒頭には、ホアキンさんの父母が登場。父親は「毎日、100人以上の家族が、銃による暴力で愛する人を失っている。私たちは毎日、今の状況は間違っていると訴え続けていますが、彼らは耳を傾けない。だから、私たちは誰も無視できない人を連れ戻しました」と語る。

続けて、母親は「これを見ることはとてもつらいことです。お願いですから、私たちの息子が言わなければならないことを聞いてください」と話す。 

動画の中で、AIのホアキンさんは次のように訴えかける。

「私がいなくなってから2年間、何も変わってません。人々は今も銃で殺されています。それは何ですか?誰もがその存在を知っているけれど、彼らは何もしません。誰かが解決するのを待つのはもううんざりです」

生きていれば、11月の大統領選は、ホアキンさんが投票権を得て初めて投票できるはずだった。

「私は自分が望む世界を選ぶことは決してできません。だから、どうか私の代わりに投票してほしい。銃業界のお金よりも、人々の命を尊重する政治家に投票してください。銃を撃たない人に投票してください」

「本人は望んでいるのか」批判も

ホアキンさんの両親は、動画の制作について、CBSマイアミの取材に「息子が殺害され、銃による暴力を終わらせるために私たちが闘い始めて以降で最も困難な経験」と話しているという。

SNSでは、ホアキンさんの遺志を代弁する意図でつくられた動画に対して「素晴らしいメッセージ」と前向きに受け止める声もある一方で、本人の許可なく故人をAIで再現し、声を吹き込んだことに「このような使われ方を本人は望んでいるのか」「政治的に利用されている」「倫理的に問題があるのでは」といった批判的な意見も上がっている。

亡くなった人を技術で生き返らせ、生前に語っていなかったメッセージを語らせることの是非は、これまでにも論争を招いてきた。1月の紅白歌合戦では、没後30年を迎えた美空ひばりさんのAIが新曲を披露した。大きな反響があった反面、「死者への冒涜」といった否定的な声もあった。