家の料理は休日もなく365日続くもの。白央篤司さんが「料理のお悩み相談」で伝えたかったこと

最終回 白央篤司の連載「家事の“ごはん作り”担当の皆さん、おつかれさまです!」最後は少しでも多くの方の声をシェアしたく思い、3人の方の投稿に答えてみます。
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Yuji Arikawa via Getty Images

コロナ禍で突然始まったステイホームの日々とともにスタートした、フードライターの白央篤司さんの連載「白央篤司の『家事の“ごはん作り”担当の皆さん、おつかれさまです!』」。本記事が最後の更新となります。多くの料理担当の悩みにやさしく寄り添い、食べる側の心構えも育んでくれました。最後はどんな悩みに答えてくれるでしょうか。3人の方への回答、ぜひご一読ください。

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突然ですが、本連載は今回が最終回となります。

計21回、つまり21カ月にわたり、本当にいろいろな、リアルな声を寄せていただきました。家事としての料理に関するお悩みや不満、自炊に関する疑問やご相談など、たくさんの方から率直な思いを聞かせていただきました。

最後は少しでも多くの方の声をシェアしたく思い、3人の方の投稿に答えてみます。

1.

 東京都・あいす・29歳

ひとり暮らしです。野菜を積極的に摂りたい気持ちはあるものの、仕事で疲弊していると、ついつい後回しになってしまいます。手間の少ない食材や工夫の仕方があれば教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。

「野菜をもっと摂りたい、でも手間が……」という声は、連載中多く寄せられました。下ごしらえが要らず、保存期間が長いという点で、私は冷凍野菜をおすすめしています。使いやすいのはホウレン草(汁ものに向きます。そのままひとつかみを味噌汁やスープ、麺ものにトッピング)、インゲンとブロッコリー(チンしてパスタやサラダにトッピングするなど)でしょうか。冷凍技術の進歩で、味や食感も総じて年々良くなっていますよ。

 

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StefaNikolic via Getty Images

 

2.

東京都・お茶漬け・52歳

日本の家庭は献立にいろんな要素を求めすぎているように思います。親の愛情、見た目、バラエティ……それらは本質的なものなのでしょうか。

日本の家庭料理って、確かに多くの要素を求められがちですね。その中から自分は何を大切にするのか、自分にとっての本質的な部分はどこかをジャッジするのが大切だと考えています。「うちはここを大事にする。そしてここには重きを置かない、置けない」と選択し、割り切っていくことが、自分の生活をスリムに、風通しよくすることに繋がると考えています。

3.

大阪府・millさん・44歳

おいしいごはんは好きだし、作るのも苦手ではないのですが、どうしても気が乗らないときに食べ盛りの子ども向けメニューを考えることがつらいです。

「自分だけならお粥でいいや」ぐらいのときに、同じものを出すわけにはいかないし……。

同様に、何食べたいか聞いてもあまりはっきりした「コレ!」という回答が無いとき、どうしてもしっくりくるメニューが思いつかないとき、ルーレットか何かで決めてくれないかな…と思うことがあります。

「同じものを出すわけにはいかない」とありました。しっかり食べさせてあげたいというmillさんの思いが感じられます。お子さんの成長と栄養を考えるお気持ちもありますよね。なのですが、ご自身を優先させる日があってもいいのではないでしょうか。優先というか、お子さんと親のmillさんの気持ちは、どちらも等しく尊重されていいと私は思うのです。

「私はどうにも今日、気が乗らないんだよ」「私、きょうはお粥で済ませたい」とお子さんに伝えてもいいのではありませんか。そういう気持ちも家族でシェアすることは意味があり、大切なことだと私は思うのです。

家の料理は休日もなく365日続くもの。作る人の調子によって、どうにも作る気がしない日がある、つらいときもあるのはごく当たり前と、お子さんが小さいうちから知っておけたなら、これからの人生において大きな「知的財産」になるとすら私は思っています。

ルーレット、全然アリじゃないでしょうか。レトルトカレーやインスタントを候補のひとつにしたっていい。もちろんmillさんがそういうのは使いたくない、と考えるなら余計なお世話です。すみません。ただ作りたくない日に無理して作ると、その無理は溜まってしまいがち。作ろうという気持ちを健やかに保つためにも、作らない日を設ける、作りたくないという気持ちを隠さないのも、私は大事だと思うのです。 

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YDL via Getty Images

millさんをはじめ、毎日家でごはん作りの担当をされている方々、本当に本当に、おつかれさまです。

今あらためて、家族の食事作りを続ける労力を思います。

休みは基本無しの毎日の仕事で、経済性と栄養も考えつつ食材を使いまわして三食を用意する。買いもの、食器洗い、片づけもセットになってくる。そういうことを1カ月でも体験してみてはじめて、日々の料理の大変さは実感できるもの。

会社ならば、担当者が不在のとき、体調不良のときなど、チームのメンバーで補い合うのは普通のことじゃないでしょうか。けれどそれが家庭になると、担当者に寄りかかりすぎることが多くなってしまう。

寄せられた声の中で、特に印象的だったもののひとつに「反応がない」というのがあります。何を作っても反応がない、ただ無言で食べて終わる、その繰り返しの毎日がもうウンザリだ……的な方、かなり多くて。

想像してみてください。あなたが仕事をして、評価も何もなく、コメントすらも得られない日々が延々続くとしたら、どうでしょうか。

それは最早、ハラスメントに近い。外なら非常識とされて当然のことが、家ではまかり通ってしまっている。

何かをしてもらったら「ありがとう」を伝える。

やってもらえることを当たり前と思わない、というのもスキルなのだと強く思います。人とうまく暮らしていく上での力。いわば、共同生活力。

みなさんの投稿には、共同生活力を高めるためのヒントがたくさん詰まっていました。そういうことも、今後どこかで書いていければと思っています。

 

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白央篤司(はくおうあつし)

1975年生まれ。「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と平日の洗濯、猫2匹の世話を担当。Twitterブログ

(編集:笹川かおり)