「原発ゼロ」で火力発電所の負荷・事故リスク高まる、エネルギーの分散は必要か【争点:エネルギー】

大飯原発が停止し、日本は1年2ヶ月ぶりに「原発ゼロ」となる。反面、火力発電所の事故リスクが高まっている。
|
Open Image Modal
The No. 4, from left, No. 3, No. 2 and No. 1 reactor buildings stand at Kansai Electric Power Co.'s Ohi nuclear power station in Ohi Town, Fukui Prefecture, Japan, on Friday, June 1, 2012. Japan's government moved a step closer to resuming nuclear power generation after last year's Fukushima disaster left the country without atomic energy for the first time in more than four decades. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Images
Getty

国内で唯一運転している、大飯原子力発電所(福井県)の4号機が、定期検査のために運転を停止する。関西電力は、9月15日深夜から定期検査に向けて運転を停止する作業を始め、16日未明に原子炉を止める予定。4号機が止まると、昨年7月以来、約1年2か月ぶりに国内の原発稼働はゼロとなる。

大飯3、4号機は2012年7月、東京電力福島第一原発の事故後、当時の民主党政権の決断で初めて再稼働した。2013年7月8日に原発の新規制基準が施行された後も、原子力規制委員会(規制委)は定期検査に入る9月まで運転継続することを認めていた

通常、原発の定期検査期間は3〜4カ月程度だが、原発の新規制基準に従い、規制委の安全審査を通過した原発しか再稼働できなくなった。関電は定期検査終了後、大飯原発の早期の再稼働を目指して、すでに規制委に審査を申請している。

大飯原発は敷地内の断層について見解が分かれており、規制委は調査の結果が出るまで審査を後回しにしていた。その後、9月2日の規制委の専門家会合はにおいて、大飯原発の下の断層は、耐震設計上考慮する活断層ではないとの見解で一致。5日の規制委で、審査を再開することを決めたため、近く審査が始まる見通しだという。

現在国内では、6原発・12基が規制委の安全審査を受けている。規制委員会は13日の定例ブリーフィングにおいて、審査の期間について見通しを建てるのは難しいとしながらも、「半年程度」と述べている。審査が最も先行している四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)でも再稼働時期は見えておらず、関電が申請した高浜原発3、4号機は津波の想定が不十分として審査に入っていないという。

原発が止まると、火力発電などが代替で運転を行うこととなる。関電では、火力発電所の定期点検を延期申請しながら、この夏を乗り切った。しかし、猛暑で需要が高まった8月に、舞鶴発電所1号機南港発電所3号機のトラブルが重なり、他の電力会社から50万キロワットの電気を融通してもらわなくてはならなかった。電気使用率は96%になっていた。

関電では、定期点検の時期を先送りして、火力発電所の稼動を行う方針だ。定期検査に入れば火力発電所を1カ月は停止しなければならないとされるためだ。関電の他に、九電の火力発電所も定検を延期した

しかし、定期検査不足は事故リスクにつながる。長崎県佐世保市の相浦発電所1号機は5年近く定期検査が行われなかったが、8月2日にボイラーの管4本で破口が見つかるなどがあり、停止する事態となった。

原発の停止の荷を、決して火力発電だけに負わせれば良いというわけではない。岩手県は特区制度を利用し、農地を風力発電や地熱発電に利用できるよう、土地の転用制限緩和に向けて動いている。電力会社だけにとらわれない、小さくても幅広い動きが、今後求められることになるのではないか。

原発依存度を下げるための活動についてどう考えますか。あなたのアイディアをお寄せください。

関連記事

日本の主な原子力発電所と関連施設
北海道電力の泊原発(01 of18)
Open Image Modal
北海道電力の泊原子力発電所。右端が3号機(北海道泊村)\n\n撮影日:2012年05月05日 (credit:時事通信社)
東北電力東通原発 (02 of18)
Open Image Modal
敷地内に活断層があると指摘された東北電力の東通原子力発電所1号機の原子炉建屋(中央奥の白い建物)。右端の塔は排気筒。左端の茶色の建物は事務本館=2013年06月19日午後、青森県東通村 (credit:時事通信社)
東日本大震災・女川原子力発電所 (03 of18)
Open Image Modal
女川原子力発電所(宮城・女川町)\n\n撮影日:2011年04月12日 (credit:時事通信社)
福島第2原子力発電所(04 of18)
Open Image Modal
東京電力福島第2原子力発電所=5日、福島県楢葉町、富岡町(時事通信社チャーター機より)\n撮影日:2013年03月05日 (credit:時事通信社)
福島原発/福島第1原発の4号機(05 of18)
Open Image Modal
福島第1原発の4号機=15日午前11時48分、福島県大熊町[代表撮影]\n\n撮影日:2014年01月15日 (credit:時事通信社)
東海第2発電所(06 of18)
Open Image Modal
日本原子力発電の東海第2原子力発電所=5日、茨城県東海村(時事通信社チャーター機より)\n撮影日:2013年03月05日 (credit:時事通信社)
新潟県中越沖地震・柏崎刈羽原子力発電所(07 of18)
Open Image Modal
東京電力の柏崎刈羽原子力発電所。(左から)5,6,7号機(16日午後、新潟県柏崎市)[時事通信ヘリコプターより]\n撮影日:2007年07月16日 (credit:時事通信社)
浜岡原発と御前崎市街地(08 of18)
Open Image Modal
中部電力浜岡原子力発電所(奥)と御前崎市街地=2012年10月03日、静岡県 (credit:時事通信社)
志賀原発訴訟・志賀原発 (09 of18)
Open Image Modal
北陸電力の志賀原子力発電所。左側が2号機(石川・志賀町赤住)\n撮影日:2009年03月12日 (credit:時事通信社)
日本原電敦賀発電所(10 of18)
Open Image Modal
日本原子力発電敦賀発電所。左が日本初の軽水炉として1970(昭和45)年に営業運転を開始した1号機。右は2号機(福井・敦賀市明神町\n\n撮影日:2012年03月06日 (credit:時事通信社)
関西電力美浜発電所(11 of18)
Open Image Modal
敷地内の断層が活断層の疑いがあるとして、原子力規制委員会の調査対象となっている関西電力美浜原発(右から1号機、2号機、3号機)=8日午後、福井県美浜町 \n\n撮影日:2013年12月08日 (credit:時事通信社)
大飯原発(12 of18)
Open Image Modal
関西電力大飯原発3、4号機の建屋。写真左側では、敷地内断層調査のため試掘溝を掘削する工事が行われている=2013年06月15日午前、福井県おおい町 (credit:時事通信社)
関西電力高浜原子力発電所(13 of18)
Open Image Modal
関西電力高浜原発。右手前から1、2号機、左手前から3、4号機の建屋=27日、福井県高浜町\n\n2013年06月27日午前、福井県高浜町 (credit:時事通信社)
島根原発の1号機と2号機 (14 of18)
Open Image Modal
中国電力島根原発1号機(手前)と2号機(島根県松江市)\n\n撮影日:2011年11月28日 (credit:時事通信社)
四国電力伊方原子力発電所(15 of18)
Open Image Modal
佐田岬半島の瀬戸内海側にある四国電力伊方原子力発電所。頭が青色の建物が左から1号機、2号機、3号機=2012年11月18日、愛媛県西宇和郡伊方町 (credit:時事通信社)
玄海原発(16 of18)
Open Image Modal
九州電力玄海原子力発電所(奥)。左から4号機、3号機(佐賀・東松浦郡玄海町)\n\n撮影日:2011年05月24日 (credit:時事通信社)
川内原子力発電所 (17 of18)
Open Image Modal
再稼働の前提となる安全審査に絡む川内原発の現地調査で、九州電力(左側)から説明を受ける原子力規制委員会の委員ら=2013年09月20日午前、鹿児島県薩摩川内市[代表撮影]\n\n (credit:時事通信社)
高速増殖炉「もんじゅ」(18 of18)
Open Image Modal
日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」=2013年6月6日、福井県敦賀市 (credit:時事通信社)