大谷翔平選手、シーズンMVP獲得までの軌跡。メジャー挑戦4年目、二刀流で掴んだ栄誉

故障に泣かされた3シーズンを経て、挑戦4年目で掴んだ栄誉。今日は、大谷翔平選手自身が目標としていた「世界で一番の選手」になった日だ。
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大谷翔平選手
Getty Images

メジャーリーグ・エンゼルスの大谷翔平選手が日本時間の11月19日、メジャーリーグの年間最優秀選手にあたる「シーズンMVP」(アメリカン・リーグ)に選出された。

2001年に受賞したイチローさん(当時シアトル・マリナーズ)以来、日本人で20年ぶり2人目の快挙となった。日本人選手初の満票での選出だった。

MLBの球史に残る二刀流の活躍で、メジャー4年目でシーズンMVPの栄冠を掴んだ大谷選手の軌跡を振り返る。

「一番の選手に」。思い出される数年前の言葉

一番の選手になりたい。

2017年11月11日、メジャー挑戦を表明する記者会見の場で大谷選手はこのような言葉を残していた。

前後の発言を含めると、「野球をやっている以上は一番の選手になりたい。ファンの人に、彼が一番だと言ってもらうのが選手にとって一番幸せ。そういう選手を目指して頑張りたい」という発言だった。

メジャーでの二刀流挑戦について、当時は「最初はごく少数の方が思い描いていた二刀流。今では多くの人に応援してもらっている。そういう環境があるのか分からないので聞いてみたい」と謙虚に語っていた。

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2017年11月11日、メジャー挑戦を表明した大谷翔平選手
時事通信社

同年12月のエンゼルスへの入団会見では「最高なのは(投手も打者も)どちらも一緒の試合でできることだと思っている」と話していたが、2021年シーズンの大谷選手は、メジャーに挑戦して以来初めて、一度も怪我で離脱することなく二刀流で躍動した。

新たな歴史とルールを作り、日本、そして世界の野球ファンを魅了した。大谷選手の活躍を形容する「SHOTIME」という言葉はすっかり馴染みのものとなり、まさに、記録と記憶に刻まれたシーズンだった。

11月15日に日本記者クラブで開かれた会見では、「一番の選手にどのくらい近づけたか」との質問にこう答えている。

足りなかったなと思うところはたくさんあります。ただ、その目標に向けて確実にレベルは上がったかなと思っているので、そこは自信を持って言えるかなと思いますし、何を持って一番なのかっていうのは少しあいまいなところではあるので、まあそこがまたよかったりするんですけど、これからも目指していきたい目標ではあるかなと思います。

故障に泣かされた3シーズンを経て

メジャーに挑戦してからの大谷選手は故障に泣かされる日々が続いた。2018年6月には右肘の内側側副靱帯(じんたい)を損傷。一時は復帰するも、10月には右肘靱帯の再建術(いわゆるトミー・ジョン手術)を受けた。

キャッチボールを再開できたのは、翌2019年の3月だった。5月には打者として復帰するも、9月には左膝の二分膝蓋(しつがい)骨の除去手術を受けた。

2020年7月には693日ぶりの公式戦登板を果たしたが、8月には右前腕の屈筋回内筋群の損傷が発覚し、離脱を余儀なくされた。

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2018年の大谷翔平選手
時事通信社

過去3シーズンはほぼ故障と付き合う日々。大谷選手は初めて全力で駆け抜けることが出来た初めてのシーズンで「MVP」に選ばれた。

2021年シーズンの最終成績は、投手として9勝2敗、防御率3.18、156奪三振。打者として打率2割5分7厘、リーグ3位の46本塁打、100打点、26盗塁だった。

特筆すべき「6月」と歴史を変えた球宴

今シーズンは終盤までアメリカン・リーグの本塁打王のタイトル争いをしていた大谷選手。惜しくもタイトル獲得は逃したが、最終盤まで屈指の強打者たちと肩を並べられたのは、前半戦6月の活躍が大きかった。

それまでの本塁打数を「月別」で見ると、4月が7本、5月が8本だったのに対し、6月は13本と2桁に乗せていた。

さらに試合毎に見ていくと、6月は3試合連続ホームランが2度あり、また1試合に2本放った日も2度あった。6月の月間打率は3割9厘、23打点。安打数25のうち本塁打の割合は52%だった。

「2本のヒットのうち1本はホームラン」という恐ろしいペースで量産体制に入り、文句なしの成績で6月の月間MVPに選ばれた。

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打った瞬間それと分かるホームランを放ち、確信歩きする大谷翔平選手
Getty Images

MLBオールスターゲームでも歴史を変えた。MLB史上初めて“投打の二刀流”で選出された大谷選手は「特別ルール」でアメリカン・リーグの「1番・DH」として先発出場しながら、投手としても「先発登板」した。

前日に行われるホームランダービーにも日本人選手として初めて参加し、度重なる延長戦にもつれ込むなど、ファンを魅了した。

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特別ルールのもと、アメリカン・リーグの「1番・DH」として先発出場しながら、投手としても「先発登板」した大谷翔平選手
時事通信社

今後の目標は?

1人の野球ファンとして、引き続き怪我なく二刀流での活躍を願いつつも、来シーズンに期待するシーンを早くもいくつか想像してしまう。

例えば、今シーズン獲得出来なかった本塁打王のタイトル、投手としての二桁勝利、野手として出場する試合にDHではなく外野手として出場する姿など、例をあげれば枚挙にいとまがないほどだ。

しかし、本人はすでに冷静に来季を見据えている。先日の記者会見では、来シーズン以降の目標について、このように語っている

いちばんは数じゃないかなと思っているので、どれくらい試合に出られるか、どれくらい打席に立てるか、どれくらい登板できるかというのがいちばんかなとは思います。

来シーズンも「SHOTIME」の“続き”を期待してやまない。

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大谷翔平選手の背中
Katharine Lotze via Getty Images