「ぼろかす言われてなんぼ」藤田晋社長がAbemaTVで目指すもの。新しい地図の3人がレギュラー決定

新しい地図の3人の「インターネット進出」は、大きな反響を呼んだ。
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藤田晋社長
Yuriko Izutani / HuffPost Japan

元SMAPの稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾が、4月からインターネットテレビ局AbemaTVで月1回のレギュラー番組『新しい別の窓』をスタートさせる。

お茶の間のテレビから、スマホやPCで見るネットへ。芸能人の活躍の場が大きく変わり始めている。

AbemaTVをテレビ朝日ともに率いるサイバーエージェントの藤田晋社長は、「ネットでマスメディアを作る」ことに熱意を注いできた。新番組が発表される前のインタビューで藤田社長が語ったテレビやネットの未来。周囲から「ぼろかすに言われる立場」で業界を変えていくのだという。

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『72時間ホンネテレビ』より
(C)AbemaTV

——稲垣さん、草彅さん、香取さんがインターネットに進出するきっかけとなった『72時間ホンネテレビ』(2017年11月2日〜5日放送)は衝撃的でした。約3カ月が経った今、どのような成果があったと感じていますか。

まずは何よりも、AbemaTVのユーザー数が増えたことが大きな成果だと思います。加えて、おもしろいコンテンツの企画が集まってくるようになりました。コンテンツの作り手やタレントたちが、AbemaTVで「何かおもしろいことができるんじゃないか」と期待してくれているんですね。今の地上波テレビに対する窮屈さの裏返しかもしれませんが、その流れを作ることができたんじゃないかと思っています。

——『72時間ホンネテレビ』は、藤田さんの別荘からスタートしたのが予想外で、びっくりしました。「ここ、どこ?」という...(笑)。

僕の別荘で撮りたいとスタッフから言われて、断れなかったんです。あの番組の企画は、僕の別荘で合宿をしたときに生まれました。彼らがものすごく頑張って『72時間ホンネテレビ』の企画を実現してくれたので。決して、テレビを使って自分の別荘自慢をしたかったわけではないですよ(笑)。

<香取慎吾のInstagramより>

——そうだったんですね。合宿はよく開くんでしょうか?

はい。やっぱり、「これぞ」という企画は追い込まれないとなかなか出てこない。合宿のような場所を設けて必死で考えると、最後の土壇場でアイデアが出てくるんですよね。

——稲垣さん、草彅さん、香取さんは番組開始と同時にSNSもはじめました。3人の強みは何だと思いますか?

彼らはやっぱり、長年積み上げてきたキャリアが何よりもすごいと感じています。ほかのタレントさんと比べても、経験値が圧倒的に違う。

番組内の企画でも、彼らが発案者になったものもありました。AbemaTVでの立ち振る舞いやSNSの使い方もそうですし、あっという間にコツを掴んでいて、非常に勘がいいと思います。

<香取慎吾のInstagramより。元SMAPメンバーで、オートレース選手として活躍する森且行との再会シーンは大きな話題になった。>

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2018年年明けの特番『27Hunホンノちょっとテレビ』より
(C)AbemaTV

——既存のテレビ局の人からの反応についてはどう感じていますか。

脅威に感じてもらっているというのはひしひし伝わってきて、それは良いことだと思っています。スルーされてしまうのが一番つらいので。AbemaTVはテレビ朝日とやっていることもあり、やっぱりテレビ局は僕らにとって「横で競争している」存在です。

(AbemaTVの)「約200億円赤字」というのも、そもそも競合が入ってくるのを防ぐために、敢えて言い始めていたことがすごく有名になってしまったんですけど...(笑)。それだけ投資している金額も大きいので、地上波のテレビはAbemaTVの行く末を見守っていると思っています。

だからこそ、「ますます頑張ろう」という気持ちですね。今は全力で畑を耕す。単純ですけど、おもしろいレギュラー番組を作り、印象に残るような特番をタイムリーに出せるようにするのを繰り返していきたいと思います。

——『72時間ホンネテレビ』の累計視聴数は7400万を超えたと発表されています(1人が複数回見た分も含まれる)。その後、ビデオリサーチ社が独自調査で視聴者数207万人と推定するリリースを出しましたが、「視聴人数を適切に表現する上で不十分」として取り下げました。一方、2017年12月の株主総会で、藤田社長は視聴者数を「500万人」と明かしています

少なく見積もって500万人だろうと。1000万人には届いてないけど、500万人は超えているとはっきり言える数字でした。普通は訂正依頼を出しても、小さく掲載されるくらいですが、(ビデオリサーチ社の件は)ヤフトピに載ると思っていなかったです。逆にそこまでやって申し訳ないという気持ちでした。

——それほど『72時間ホンネテレビ』への注目度が高いということだと思います。「500万人」という数字を開示したのは、ビデオリサーチ社のリリースがきっかけになったのでしょうか?

(AbemaTVの視聴者数は)別に隠しているつもりはないんですが、AbemaTVの場合、かなり正確に数字が取れるんですね。テレビの視聴率という、曖昧なところが指摘されている数字と比べられることで、メディアとしての価値を落としてしまうと思い、発表しました。

——ネットメディアもPVだけでは測れない価値があるのでは、と議論されています。

僕はもう「視聴率」という指標には限界がきていると思っています。ただ、ああいう画一された指標があること自体はすごいことで、それがテレビ業界全体のレベルアップに繋がっていた。

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Yuriko Izutani / HuffPost Japan

——番組が見られた「量」を測る「視聴率」ではなく、番組の「質」を評価する「視聴質」のような指標が必要なのでしょうか。

ネットメディアに関して言うと、セクシーな記事ばかり掲載しているメディアとハフポストを並べてページビュー(PV)を比べたとして、「それは違うのでは」と誰もが感じると思います。

AbemaTVは、現段階は広告を必死にセールスしてマネタイズしようという雰囲気ではない。「もっと指標が要る」と外部の人からも言われますが、いまの段階では、何らかの指標で縛ってしまうフェーズにしたくないと思っています。

——視聴率という指標に限界がきている...先ほどは、「テレビが窮屈になった」とも仰っていました。どこに課題があると思われますか。

大前提として、視聴率を基準にしても、伸びないんですよ。(テレビ業界)全体が伸びてないんで。「伸びしろ」がなければ、リスクを負えないんですよ。リスクがあってこそ、リターンがあるので。我々は失うものがないからリスクを負いやすいんですが。脱・視聴率宣言するテレビ局が出ると変わると思います。スポンサーもそんなに望んでないと思います、視聴率は。

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Yuriko Izutani / HuffPost Japan

——AbemaTVには『Wの悲喜劇(※)』や『DTテレビ(※)』など、地上波では放送が難しそうな、過激で"攻めている"番組も多いです。窮屈なテレビでできないことをやろうという意気込みが伝わってきます。

AbemaTVのコンテンツの発想の多くは、テレビ朝日からきたスタッフのアイデアから出てきたものです。

テレビという、公共の電波を使った放送でできないものとは何か。それを一番知っているのはテレビ朝日のスタッフたちで、要は、彼らはテレビでできないことを「やりたかったけどできない」立場でいる人たちだった。彼らは、僕らが持っていないその「反骨心」を持っていて、ノウハウや人脈を活かしておもしろい企画を出してくれます。

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『Wの悲喜劇』:「男子禁制・日本一過激なオンナのニュース番組」と謳う番組。MCをタレントのSHELLYが務めている。
(C)AbemaTV
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『DTテレビ』:お笑い芸人の徳井義実がAbemaTVで初レギュラーを務める、「童貞と元童貞にささげる童貞の、童貞による、童貞のための番組」。
(C)AbemaTV

——テレビ局と共同運営している強みですが、結果、「テレビ以上のものを作れない」「テレビの劣化版」になってしまう恐れはないでしょうか。

AbemaTVは立ち上げからもう2年が経つので。最近提案される「テレビでできない企画」というのは、だいたい周回遅れぐらいに見えたりもするんですよ。その辺はもうやり尽くしたんだけど...という具合に。

だから、「テレビでできない企画」が一概に良いと言えるわけではないと思っています。やっぱり、視聴者が「見たかった」「おもしろい」と思える番組を作らなきゃいけない。

——コンテンツの「おもしろさ」で純粋に勝負するということですね。例えばかつてのフジテレビは「ドラマ」が看板で、そのように、各テレビ局ごとに強みがありました。AbemaTVにとって強みとなるジャンルは何なのでしょうか。

「麻雀」や「将棋」に強いということに関しては、世の中から認識されていると思います。あとは「アニメ」も充実していますね。

いま強化しているのは「恋愛リアリティショー」です。2017年10月クールでも『今日、好きになりました』、『恋する♥週末ホームステイ』という高校生の恋愛リアリティショー、婚約届にハンコを押してから結婚まで追いかける『マリキュラム』など、1クールに3本も放送しています。2018年1月クールからは4本もやります。

意外かもしれませんが、恋愛リアリティショーはすごく反響があるんです。AbemaTVがターゲットにしている10代、20代の世代にとって、恋愛というのは非常に大事な関心ごとなんだと身に染みています。

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『今日、好きになりました』より
(C)AbemaTV

——NetflixやAmazon Prime、Huluなど海外発の動画配信サービスについてはどう感じていますか?

基本的には、「一緒に頑張る仲間」という感覚を僕は持っています。

——「競合」ではない?Netflixなどは、AbemaTVと同じくオリジナル作品にすごく力を入れています。

Netflixのオリジナル作品はクオリティが高いですよね。Netflixには歴史があり、利益を出す体質を作り上げることに成功してきたので、オリジナルコンテンツに全力を注げる状況です。

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Mike Blake / Reuters

オリジナルコンテンツに関しては、やっぱり最もクオリティが高いものを作っているところが強いので、そこの競争をするならば、我々も何かしら収益源を広告収入以外のところに持たないといけないとは思っています。

ただ、「じゃあNetflixは"みんな"が見たいものか?」「お酒を飲んで酔っ払っているときに見られるものか?」と考えると、Netflixのドラマは少し重すぎると思っています。

テレビというのは、ご飯を食べながら、家でだらだらしながら、軽い気持ちで見られるところにも、良さがあるのではないでしょうか。

——確かに、Netflixのオリジナル作品は重厚なものが多くて、気合いを入れて見ないといけない感じがします。時間をたっぷりとって一気見もしますし、「ながら見」はあまりできないというか。

そもそも使い方がAbemaTVとはちょっと違うと僕は思っています。Netflixを習慣的に見るという人は、マスにはそんなに多くいないのではないかなと。だから、競合してないんです。AbemaTVは、"テレビ"なので。

——なるほど...AbemaTVが目指しているかたちや、藤田さんがネット動画にかける思いが見えた感じがします。

サイバーエージェントでずっとやってきているように、ネットでメジャーのコンテンツやメディアを作りたいという思いがあります。『72時間ホンネテレビ』みたいに、多くの人が知っているという状態を作りたい。

スマホが普及して、今は多くの人が違和感なく、自然にネットサービスを通して動画を見るようになりました。ひとりのネットユーザーとして、感覚的に「今」だと確信を持ちながらAbemaTVをやっています。このサービスからネット動画を盛り上げていくことができたら、やっぱり嬉しいですね。

——サイバーエージェントは2018年に設立20周年を迎えます。ネットの20年史を振り返っていかがですか。

20年を振り返って...そうですね。でも、今も現役で新規事業を必死に立ち上げているので、常に前線にいる、プレイヤーでいるということにはこだわり続けたいと思っています。

例えば、(ニュース記事に専門家らがコメントや評論を載せるネットメディアの)NewsPicksはあまりやらないようにしよう、とか。「書きたい」という衝動にかられつつも(笑)。

(日本経済新聞の連載「私の履歴書」のような)自伝を書き始めると「上がった」っぽくなりますよね。審判のような立場ではなく、何かをぼろかす言われてなんぼ、という立場の方でいたい、という思いがあるからですね。

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Yuriko Izutani / HuffPost Japan