ルネッサンスに憧れてイタリアへ。ミシュランガイドのビブグルマンにも載ったシェフのこだわりとは。

心から「おいしい」を楽しめる空間をつくりたい
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イタリアのレストラン
RiverNorthPhotography via Getty Images

東京・大門にひっそりと佇む、隠れ家的なイタリアンレストラン「TRATTORIA DAL PIATTO(ダルピアット)」。オーナーシェフの佐渡理孝さんはフィレンツェで3年の修業を経て、その後、外資系ホテル、クルーズ船で腕を磨いてきた。オープンから10年、「自分が本当にお客さまに提供したい、からだにいい食材にこだわったおいしいレシピを出していきたい」と佐渡さんは語る。改装してより心地良く食事ができる店にしようと、クラウドファンディングで支援を募っている。 

「サラリーマンが多い界隈で、周囲は気軽に入れる居酒屋などが数多く軒を連ねる。そういう場所であえて、疲れた体を癒やしてくれる、おいしい食事を出す店を目指しています」

小さな店の入り口を開けると、6席ほどのカウンターが並ぶ店内。奥に4人がけのボックス席があるが、ほとんどのお客はカウンターで、佐渡さんとの会話を楽しみながら食事をする。ミシュランガイドのビブグルマン(※)にも紹介されるなど、その味は確かだ。

※ビブグルマン…グルメガイドブックのミシュランガイドが認定した5,000円以下(サービス料、席料含む)で食事ができる、おすすめレストランのことを指す。 
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TRATTRIA DAL PIATTO。隠れ家風のひっそりとした佇まい=東京都港区
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■歴史や文化に憧れて、イタリアンの道へ

もともと歴史好きだった佐渡さんが、イタリアに修業にいったのは、中世ルネッサンスの魅力に憧れて。イタリアに渡ってから半年ほどは、修業させてくれる店を探して、扉をたたき続けた。
「最後は店の前に座り込んで、なんとか修行させてくれと(笑)。ようやく店の中に入れてくれた後は、1週間皿洗いをして、そこから働きぶりが認められて、修業させてもらえました」
朝6時から深夜1時までのハードな修業時代。イタリアの食に触れて感じたのは、「イタリアでは、何よりも味を重視する」という文化だった。

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フィレンツェで修業中の佐渡さん
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「例えば、日本なら牛乳は高温殺菌して売られています。でも、当時のイタリアでは高温殺菌すると味が落ちるからと言う理由で、高温殺菌をしないんですね。店に売られている新しいものでも、腐っていることがあったりして。より自然な形で味を重視する。そして、やっぱり食事は楽しんでするものという考えが根強いんですよね」と、当時を振り返る。

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佐渡さんが修業したフィレンツェ
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 DAL PIATTOのオープン当初も、そんな「おいしさ」へのこだわり、心地よく食事を楽しめる空間を追求していた佐渡さん。そこに「体にいいものを」というこだわりが加わったのは、一人の常連客との出会いがきっかけだった。

「近所に勤める管理栄養士の女性で、店に通ってくれるようになるうちに、彼女から聞かされる栄養学の話に興味を持つようになったんです」

その常連客が通う栄養学の講座に一緒に参加するようになり、国内でも有数の栄養学の権威から、直接、さまざまな知識を吸収する機会を得られた。
「栄養学を学べば学ぶほど、もっとお客さまに体にいいものをお出ししたいという思いが募るようになり、食材やメニューへのこだわりも強くなっていきました。単に栄養を体に取り入れるだけでなく、“いい環境でおいしく食べられる”ようにすることが大事だと思っています。それこそが、私のシェフとしての技術の発揮どころです」

 

■自然本来の味にこだわった食材選び

DAL PIATTOの自慢は、その素材へのこだわり。野菜は千葉の農家から直接買い付け。土から化学肥料や農薬を使わないという、安心・安全の旬のものを取り寄せる。
「実は、この千葉の農家はお客さまの紹介で出会ったんです。実際、千葉まで足を運び、生産者の方とお話しをしてすっかり意気投合。安心・安全で美味しい野菜を届けたいという思いが、一緒でした」(佐渡さん)。

自然の力で育った野菜は、しっかりとした野菜本来の強い味わいが特徴。その季節しか採れない旬の味をたっぷりと堪能できる。

また、魚は長崎・五島列島の漁師から、その日の水揚げを直接送ってもらう。漁は天候やその日の海の状態に左右されるので、当日にならないと何が仕入れられるかわからない。しかし、それが、本当においしい魚の楽しみ方ともいえる。1年前からは、富山の漁師からの買い付けも増やし、提供できる魚の種類にもバリエーションが増えた。「日本海のおいしい魚をお客さまに味わってもらいたい」と佐渡さんは腕を振るう。

 

■ひとりひとりの体調に合わせたレシピを

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佐渡さんがつくった料理
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 食材へのこだわり、シェフの佐渡さんの「体にいいものを」という思いが評判を呼び、ヘルシー志向の常連がDAL PIATTOには多く集うという。カウンター中心の店内は、健康を気遣う女性客が中心だ。

一風変わっているのが、そのオーダーの仕方。もちろん、決まったメニューはあるのだが、ほとんどの人が「今日の仕入れのおすすめは?」と佐渡さんに相談して、その日の気分や体調に合わせた一皿を「おまかせ」で注文することがほとんどだという。

「仕入れる食材がその日によって違うので、それに合わせてメニューを提案します。体にやさしい野菜料理を中心に、お客さまの好みの食材、体調に合わせて、好きなものを好きなように調理してお出ししています。オーダーの仕方のイメージとしては、お寿司屋さんみたいな感じでしょうか?」

「今日は疲れている」といえば、ビタミンB群が豊富な豚肉に栄養たっぷりの根菜を組み合わせて、元気が出るレシピを。栄養学の知識も生かして、真摯に「体にいい食べ物」を追求している。

「もちろん、素材の力も大事ですが、おいしさはさまざまな要素が折り重なってうまれるもの。食感、香りなども重視しながら、最高の一皿を食べていただきたいと思っています」(佐渡さん)

 

■心から「おいしい」を楽しめる空間をつくりたい

 実直に「おいしくて体にいいもの」に向き合ってきたDAL PIATTO。しかし、オープン10年を迎え、店内の内装、外観にもほころびが目立つようになっている。

せっかく丁寧に作られた食事を心から楽しめる空間にしたいと、クラウドファンディングを利用して店内の改装に取り組むプロジェクトをスタートした。

目標金額は30万円。集まった資金を随時、店内の設備や改装に充てていきたいという。

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ダルピアットの店内
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「故障しているエスプレッソマシーンの修理、汚れてしまった奥のボックスシートの張替え、壁に空いている穴も修理したいですね。あと、できれば、コンクリート打ちっぱなしの無機質な店内を、もっと自然の温かみのある空間にも変えていきたいと思っています」(佐渡さん)

リターンとしては、お店のフルオーダーコース料理を割引価格で提供する。貸し切りも含めて、「自分だけの贅沢な料理」を楽しむことができそうだ

「このクラウドファンディングをきっかけに、より多くのお客さまにうちの店のことを知っていただき、食事を楽しんでもらいたいと思っています。今後は、私と一緒においしくて体にいい食事を楽しめるレストランをまわったり、野菜を仕入れている千葉の農家の収穫祭にお客さまと参加したりするツアーを組むなど、イベントも計画していきたい。おいしくて、体にいいものを食べたいというお客さまに共感いただける店として、もっと大きくしていきたいですね」

プロジェクトの詳細は、こちらから

(工藤千秋)