ViViの自民党キャンペーン「#自民党2019」は、読者への裏切りではないのか。 元編集スタッフの私が感じたモヤモヤ。

何よりも釈然としないのは、彼らが読者や社会に対して、きちんと説明責任を果たせていないということだ。
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『ViVi』が自民党とタイアップ?

 朝起きると「『ViVi』が自民党とタイアップ」という記事が目に入ってきた。瞬間、何かの間違いじゃないかと思った。『ViVi』と自民党があまりにかけ離れていて、モデルたちの笑顔と自民党とのむすびつきに、違和感があったからだ。

私は1988年から2004年まで『ViVi』編集部にフリーランスのファッションライターとして在籍し、表紙や巻頭ページをはじめとしたファッションページを担当していた。

『ViVi』は『JJ』『CanCam』に代表される“赤文字雑誌”の三番手としてスタートした。講談社は後のりがうまい会社だ。『MORE』が出ると『with』、『POPEYE』が出たら『Hot-Dog PRESS』、『FOCUS』が出たら『FRIDAY』。そういうある種のうまさがあって、プライドよりも実を取る、いい意味で節操がない、そんな社風も嫌いではなかった。

当時から会社に掲げてあるモットーがあった。「おもしろくて、ためになる」。フリー編集者として今でもこの言葉を心に刻んでいる。

さて、今回の問題。私が感じた気持ち悪さとはなんだったのか。

以下、私のTwitterから。

 なぜ自民党とのタイアップを決めたのか

 確かに雑誌の広告収益は毎年下がる一方だ。私が在籍していた2003年当時の『ViVi』は最高50万部を発行していた。表紙の常連は浜崎あゆみや安室奈美恵。

日本の雑誌の総売上がピークを迎えた頃だ。1号あたりの広告費は数億円になることもあり、“赤文字雑誌”はまさに出版社のドル箱だった。しかし、2009年以降スマホが普及し、TwitterやInstagramなどのSNSが雑誌の役割を奪うと、雑誌の部数は減少する一方になり、当然広告収益も下がった。

18歳選挙権が実現したいま、若者ターゲットを伸ばして、SNSで支持層を獲得したい自民党からタイアップ広告記事のアプローチがあれば、それは美味しい案件だったと想像に難くない。

今回モデルたちには、ViVi girlというインフルエンサーたちを起用している。私が今まで他媒体で経験している例で考えると、この規模でも大体グロスでトータル800-1000万円くらいの広告料だったのではないかと推測できる。

では、『ViVi』=講談社は金額で自民党とのタイアップを決めたのだろうか?

上記Twitterで指摘しているように、私は「1. ファション雑誌が政治について語ることは大賛成」だ。ミレニアルズと呼ばれる20代女性たちにもっと政治的関心をもち、語り合える場所がファッション誌発信でSNSで広がれば、もっと選挙に参加する若者が増えるのではないか。ローラや渡辺直美など自分の意見をはっきりSNSで発信するロールモデルも出て来ている。

ただし、これが「#自民党2019 をタグつけしてね!」だから、私はモヤモヤしてしまったのだ。

やるなら「覚悟」を持って欲しかった

 雑誌には、編集部が自分たちで企画して考える「オーガニックな記事」と、お金を出す企業や団体の意向を聞きながらつくる「タイアップ広告記事」がある。タイアップ広告記事では、たとえば、モデルたちが企業の商品を紹介することで企業からスポンサー料をもらう。最近では雑誌だけでなくInstagramなどでも見られる広告手法だ。

今回の自民党の企画は後者の「タイアップ広告記事」だ。ここで登場しているViVi girlsたちも報酬をもらって投稿する#PR記事に慣れていて、メイクアイテムの宣伝をするように、今回の仕事を受けたのかもしれない。

このタイアップ広告記事では、「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?【PR】」というタイトルがつけられ、ViVi girlの楽しそうな表情の写真が並ぶ。彼女たちやこの記事に関わったスタッフに対して、きちんと編集部からの説明を受けないまま、議論を経ることなく仕事を受けているでのはないか? だからこそ、編集部の罪は重いように感じる。

そして、何よりも釈然としないのは、彼らが読者や社会に対して、きちんと説明責任を果たせていないということだ。講談社は「政治的な背景や意図はまったくない」と言った

自民党とのタイアップに政治的背景がない、というのであれば、講談社は自民党を政治団体と認めていないことになる。あまりに稚拙な釈明を読み、これを書いた人の顔を想像し、嘆息をする。編集部なのか、会社なのか、この程度の浅さなのだ。

一般的に雑誌では、編集部の責任者がオーガニック記事とタイアップ広告記事の両方をチェックしている。今回の企画の意図や、社会からの反応もある程度予想できたはずで、編集者であればこのタイアップが出ることの反響も分かって腹をくくっているべきではないか? そのくらいの気骨を持ってこのタイアップを受けたのなら、それはそれで編集部の意思を感じるが、この釈明からはそのような思いの一つも見えてこない。やるなら、覚悟を持ってやって欲しかった。

『ViVi』が好きだから『ViVi』の情報を信じる読者がいる

 大好きな『ViVi』を編集していた当時の私たちが一番大事にしていたのは、今を生きる女の子たちにたくさんの選択肢を与えることだった。ファッションで変われること、好きなメイクで変われること、恋人を選ぶこと、仕事を選ぶこと、人生を選ぶこと。全てを能動的に、人生で一番輝いている20代を一緒に楽しめる雑誌でありたいと思っていた。

雑誌は毎号750円という金額を出してくれる読者によって支えられている。そこには『ViVi』が好きだから『ViVi』に掲載されている情報を信じる、というロイヤリティが高い読者との蜜月が存在している。

だから作り手にも強い矜持があったのだと思う。 

なのに、今回『ViVi』はそれを捨ててしまった。

きちんと説明責任も果たさぬまま、読者に政党の支持を促すようなことをしてしまった。

タイアップの広告費で講談社が手にしたものは金額では大きかったが、『ViVi』読者との関係に泥を塗ってしまった罪は重い。

 20代を甘く見てはいけない

 雑誌は部数売上ではとても維持できないメディアだ。だからこそ広告が必要になり、時にはクライアントに寄りそわなくてはならない。だからと言って、この参院選前の明らかに政治的にバイアスがかかるような時期に読者を誘導をしてはいけないのだと思っている。 

20代を甘く見てはいけない。年金も期待できない、低賃金で、ジェンダーギャップ110位の国に生きる彼らは、私たち以上にこれからの日本を憂いている。思っている以上に国や社会自体に期待を持てない若者は多い。それを「おしゃれな見た目でTシャツプレゼントでもすれば、乗ってくるよな」みたいなこのタイアップの画面が気持ち悪い。

「オンナ・子ども」といまだに政治家は、私たちをバカにしているように思える。あるいは読者を軽んじていたのは、『ViVi』編集部だったか。

私たちが絶対やりたくなかったことを今の講談社はした。

とはいえ、現場の元仲間の編集者たちは悩んでいるのだと信じている。

大げさに聞こえるかもしれないけど、大きな出版社が、大きな資金力を持つ大きな政党と組むことはプロパガンダと言われても仕方がない。

今回のことをちゃんと声を上げて、ダメ!と言わなくては、本当にこの国は若者にとって夢もない国になってしまう。

この一件をちゃんと考え、ここから議論を始めよう。

じゃあ、どうやったら『ViVi』読者が政治に関心を持つのか? こんなやり方じゃないところから会話を始めるのが、読者との関係を修復する最善の手段だと思っている。

雑誌が売れない時代だからこそ、今ある読者との信頼関係を取り戻さなくてはならない。

今でも私は『ViVi』と『ViVi』読者を愛している。