北欧スタイルの「モノ作りの学校」をつくりたい。本場の「マイスター」を持つ家具職人が思い描く理想の学びの場。

スウェーデンにある、「手工芸学校」への留学がきっかけに
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北欧のスウェーデンで家具作りを学んだ家具職人の須藤生さん(43)が「モノ作りの学校」をつくろうと準備を進めている。本場の「マイスター」の資格を持つ須藤さんがこれまでの経験や身につけてきた技術をいかし、気軽な工芸体験から本格的な家具作りまで幅広く学べる場所にする計画だ。「いずれは自分が学んだスウェーデンの学校のようにしたい」と、実現に向けてクラウドファンディングで支援を募っている。

自然の素材をいかし、素朴でありながら美しさと機能性を兼ね備えたデザイン。北欧家具の特徴は、須藤さんのつくる家具にそのまま当てはまる。

「奇をてらいすぎず、無駄を省いたシンプルなデザインを好んでいます。わずかな違いでデザインの印象が大きく変わりますので、曲線などのディテールには気を配り、商品に付加価値をもたらすようなデザインを心がけています」

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木のシャンデリア
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須藤さんは小さいころから工作が好きだった。父はオルガンをつくる職人で、教会のパイプオルガンのような大型のものも手がけていた。その仕事場に行けば、ちょっとしたものが作れる木材や加工道具がそろっていたという。10代後半になると、自分で使う筆箱や机はつくれるようになっていた。

「世間に売っているもので、ほしいと思えるものがなかったんです。大学卒業後も就職せず、父の仕事場でいろいろなものを作っていましたが、本場で専門的に学んでみたいと思うようになりました」

今から20年前の1999年、スウェーデンの「カペラゴーデン手工芸学校」で3週間のサマーコースに参加した。スウェーデンの著名な家具デザイナー、カール・マルムステンが創立した学校だ。須藤さんはここで、学生がカタチにしたいことを突き詰めていく学びのスタイルや、モノ作りに打ち込める自然豊かな環境を目の当たりにして、大きな感銘を受けた。

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カペラゴーデン手工芸学校
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「教師も含めて70~80人程度。古い農家だったところを買い取って、みんなで寮生活をしているんです。一から教えるのではなく、生徒個人の感性が最優先で、教師はあくまでアドバイザー役でした。学校の中では学生が作ったものが使われます。例えばカップでも、持つところや口に当たったときの感触などはそれぞれ違いますし、家具も調子が悪くなったら自分たちで直す。生活している中で、いろいろなことが勉強できるんです。ここで学べたら、いいなあ、と思いました」

いったん日本に戻ったが、翌年から正式に入学。3年間学んだ後、やはりマルムステンが創立したストックホルムのマルムステン校にも通った。こちらは木工家具の分野で名実ともにスウェーデン最高峰の学校で、「ヨーロッパ最高」と評されることもあるほどだという。留学生活は約10年に及び、その間にスウェーデンの職人資格も取得した。

「素晴らしい環境の元で創作活動に勤しむことが出来るカペラゴーデン。そして、極めて高い技術を持った人物が集まるマルムステン校。非常に特色溢れた中で、刺激に充ちた日々を過ごすことができました」と振り返る。

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カペラゴーデンの様子
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帰国した翌2010年、「イクルデザイン」の名前で会社を設立。栃木県塩谷町に工房を構え、オーダーメイドの家具を中心に活動を開始した。

スウェーデンで長く学んだ須藤さんの技術は、従来の日本のものとは大きく違う。

「日本では、無垢(一本の木から切り出した木材)を使ってモノをつくる技術がすごく進んだのに対し、ヨーロッパではフランスの王宮にあるような、合板を使って美しい家具をつくる技術が進みました。それを日本でやると、『どうやっているの』とよく言われるのですが、それを伝えられればと思うようになりました」

学校をつくりたい――。そう考えたときに浮かぶのは、やはりスウェーデンで最初に学んだカペラゴーデンだった。「あれだけの高いレベルの内容を、あんなにすばらしい環境で学べる学校は日本にはない」と須藤さん。学校の存在を初めて知ったときも、留学から帰国したときも、「いつかはあんな場所を作ってみたい」という思いは、頭の中にあったという。

今回のプロジェクトでは、須藤さんが工房として使っている古い工場を修繕して学校として使用する。市街地から少し離れた、緑にあふれた場所で、「学んだり、創作をしたりするには理想的な環境」と、須藤さんは言う。

「私が学んできた北欧のモノ作りは、知識から教わる日本の一般的なモノづくり教育とは異なり、まずは実践的にモノを作っていくというスタイルでした。理想に少しでも近づけるために、私の学校でもそのようなスタイルでやっていきたい。カペラゴーデンの理想を取り入れた学校を日本でもつくっていきたいと考えています」

クラウドファンディングでは工房の修繕のほか、生徒が使うための道具や作業台などの設備を整えるために、支援を募っている。できれば春先から少しずつでも学校を始めていこうと、イベントやワークショップなども考えている。詳細はこちら

(伊勢剛)