就活・職場でのパンプスやヒール、強制しないで。「#KuToo」署名活動に反響、厚労省に提出へ

署名活動「#KuToo」が1万8000人以上の賛同者を集め、反響を呼んでいる。イベントの様子をレポートします。
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時事通信社

ヒール靴で歩き回った結果、靴ずれが痛くて痛くてしかたがない。

就活経験者や働く女性は、一度はこんな経験をしたことがあるのではないだろうか。

ヒールのある靴を履くことは、ビジネスの世界では「身だしなみ」の一つとされている。その風習に疑問を投げかける署名活動「#KuToo 職場でのヒール・パンプスの強制をなくしたい!」が1万8000人以上の賛同者を集め、ネット上で注目を集めている。

発起人は就活の選考解禁に合わせ、6月3日に厚生労働省の雇用均等政策課へ集まった署名を提出予定だ。提出を目前にした5月25日、東京・中目黒でイベントが開催され、支援者らが集った。

靴ずれで血だらけに... パンプス着用ルールに広がる怒り

「#KuToo」の署名活動を立ち上げたのは、グラビア女優、ライターとして活動している石川優実さん

2019年1月、仕事場でパンプスを履くことへの不満を何気なくTwitterに書き込んだところ、3万件以上リツイートされ大きな反響を呼んだ。

Twitterユーザーとやりとりするうち、「#MeToo」と「靴」、「苦痛」をかけ合わせた「#KuToo」という言葉が生まれ、署名プロジェクトを立ち上げることを決めたという。

署名では厚労省に対し、企業でのハイヒールやパンプス着用を強制しないよう通達することを求めている。 

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Change.orgより

パンプス着用のマナーを疑問視する声は、働く女性や就活生を中心に大きく広がった。

3月には、就活中の学生が靴ずれで血だらけになったかかとの写真をTwitterに投稿。投稿者は「こんなの強制的に履かせるの間違ってる。なにがマナーだよ!」と怒りを露わにし、大きな反響を呼んだ。

石川さんは、ムーブメントは「自然に、皆さんのおかげで広がった」と話す。「それだけ多くの人が困っている問題だったんだなと実感しています」と振り返った。

「行政からの通達だけではなく、社会のムードを変えていく必要があると思っています」

「ケガをせずに健康に働くというのもあるんですが、このような小さいことでも『性差別』に当たるんだ、ということを広く認識していただきたいと思います」

「これが性差別にあたるとは知らなかった、という意見がすごくありまして。やっぱり私たちは、なかなか性差別に気づけない社会に生きているんだなと思います。日常に溢れている性差別にもっと多くの人に気づいてもらって、それに対して『NO』と言えるような社会を目指して活動していきたいと思います」(石川優実さん)

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石川優実さん
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ヒール強制は「性差別」

イベントには、性差別や職場での安全、働き方の観点から、さまざまなゲストが登壇した。

労働法や職場のハラスメント問題に詳しい労働政策研究・研修機構の内藤忍さん(副主任研究員)は、ハイヒール着用の義務づけを禁止する法案が可決されたカナダ・ブリティッシュコロンビア州など、海外の事例を紹介。

「海外では、(ハイヒール強制が)性差別的だというアプローチと、労働者にとって安全ではないのでは、というアプローチがある。日本の場合は男女雇用機会均等法の法律がありますが、募集・採用など雇用の各ステージに焦点を当て、それぞれのステージにおける性差別だけを禁止する法律。服装規定のような労働条件の性差別を直接禁じていない、というのが欠点です」

「事後の対処になりますが、もしも仕事中にハイヒールやパンプスで怪我をした場合は、労働災害(労災)は適用になります。また、労働安全衛生法では社内に労働者も含めた安全委員会を設置しなければならないことになっており、事前に、そこで審議することもできます」

「日本は立法がないため性差別的なアプローチは取りづらい状況ですが、安全性のアプローチであれば、パンプス・ヒールの着用指示に少しは対処できるのではないかと思います」(内藤忍さん)

男性がヒールを履いてみたら、何かが変わるかも?

ダイバーシティ推進の取り組みに力を入れる丸井グループから、サステナビリティ部の井上道博さんも登壇した。

丸井は、パンプスは19.5〜27cm、ビジネスシューズは22.5〜30cmと、幅広いサイズを設けるプライベートブランドを展開している。履きやすさを追求した「ラクチン」シリーズは、就活や仕事用の靴として定評がある。

会場には男性が履ける大きめサイズのパンプスを用意し、参加者らが実際にハイヒールを履く体験時間も設けられた。

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試着のため、会場に置かれた丸井のパンプス。
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会場で丸井のパンプスを試着する男性。
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実際にヒールを履いてみて、女性がいかに大変な思いをしているかわかったーー。

そう語るのは、「ハイヒールを履いてみた」体験記をネットに公開したITベンチャー、ベルフェイスの西島悠蔵さんだ。

「すごく失礼かもしれないけれど、普段ヒールを履いていない女性は『手抜き』だと思っていたんです」と、自身が持っていた”偏見”を告白した西島さん。

「実際に履いてみて、知らないことだらけなんだな、と感じたのが率直な意見でした。ヒールを履いてる方は本当に大変なんだな、感謝してもしきれないと思いました」(西島悠蔵さん)

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内藤忍さん(労働政策研究・研修機構副主任研究員)、井上道博さん(丸井グループ サステナビリティ部ダイバーシティ&インクルージョン推進担当)、西島悠蔵さん(ベルフェイス 人事担当)
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(左から)内藤さん、井上さん、Change.orgの遠藤まめたさん、西島さん、石川さん
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就活マナーが自由だったら「心に余裕を持てる」

来場者の中には、現在就職活動中の大学生もいた。

普段は替えのスニーカーを持ち歩きながら就活をしており、パンプスで出血するほどの靴ずれに苦しんだこともあるという。

就活マナーに対する疑問や、イベントの感想を語ってくれた。

「大学で就活メイクの講座もあるんですが、メイクが得意じゃない。自由なメイクをして、どんな靴を履いてもいいなら、『自分でいていいんだ』と思えて、心に余裕を持てるので、そういう気持ちで就活したいです」

「ジョンソン・エンド・ジョンソンの『#スニ活』のように、特に大きな企業がこのような取り組みをしてくれると効果があると思うので、やってほしいなと思います」(イベントに参加した大学生)

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