映像業界の性暴力「実態調査を」有志が声明。断れば「仕事を回されなくなる」不安…構造的な背景を指摘

石川優実さん、呉美保さんら俳優、映画監督ら12人が名前を連ね、「誰もが安心して働くことのできる日が一日でも早く訪れるよう」と訴えている。
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映像業界における性加害・性暴力の被害を訴える声が相次ぐ中、俳優や映画監督ら有志で作る「映像業界における性加害・性暴力をなくす会」が4月27日、声明を発表した。

計12人が名前を連ね、「映像業界における性加害・性暴力を可視化し、撲滅するための実態調査に加え、しかるべき第三者機関の設置が必要」と訴えている。

 

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「映像業界における性加害・性暴力をなくす会」の声明
「映像業界における性加害・性暴力をなくす会」サイト

 

俳優や映画監督ら12人が名前を連ねる

声明に名前を連ねたのは、石川優実さん(俳優、アクティビスト)、牛丸亮さん(俳優、映画監督)、呉美保さん(映画監督)、加賀賢三さん(映画監督)、川上拓也さん(録音)、桜木梨奈さん(俳優)、東海林毅さん(映画監督)、睡蓮みどりさん(俳優、文筆家)、千尋さん(俳優)、羽賀香織さん(美術)、早坂伸さん(映画カメラマン)、港岳彦さん(脚本家)の12人。

声明によると、12人は「映像業界における性加害・性暴力の被害者とその支援者」であるとし、「声をあげることは容易ではなく、これまで私たちはそれぞれの不安と葛藤の中にいました。ですが、目的地を同じくする方々と連帯できるのなら、一歩を踏み出せるかもしれない。そんな思いを込めて、私たちはこの声明を発表します」と綴っている。

 

声明では、3月に映画監督からの性加害・性暴力を受けたとする訴えが週刊誌で報道されて以降、複数の俳優や映画監督、プロデューサーからの被害を告発する動きが相次いだことに触れた。こうした映像業界における問題の背景には「地位・関係性を利用したエントラップメント型が多く聞かれます」と指摘した。

人事権を持った監督やプロデューサーが、キャスティングを条件に俳優に性行為を迫るなどといった行為がその一例です。強要される側は、断ったり拒んだりすれば『クビにされるのではないか』『今後仕事を回されなくなるのではないか』『現場の和を乱すのではないか』といった不安を覚え、沈黙を強いられます」と言及。

こうした事例について「『枕営業』などという加害者に都合のいい言葉を使う光景も繰り返されてきました」と記し、問題を矮小化することにつながってきたと指摘。扇情的な表現を用いたSNSの書き込みや報道が、「二次加害」を生み出す要因となった、としている。

また、制作スタッフにおける性加害・性暴力の事例も後を絶たないとし、「上下関係や会社間のパワーバランス、ジェンダーギャップなどを背景に、加害側の横暴を許す制作体制がパワハラを生み出し、その延長線上に性加害・性暴力が起こります」と記している。

 

 

劣悪な労働環境が性加害・性暴力の「温床」と指摘

こうした問題の根底には、映像制作の過酷な労働条件・労働環境などの問題が横たわり、「極端な過労と睡眠不足によって、気力も体力も失われているところに加害者がつけ込むなど、劣悪な労働環境が性加害・性暴力の温床ともなっているのです」と綴っている。

現在の日本では、性暴力の加害者が罰せられにくい法制度であるとも指摘。「多くの被害がいまだに『ないもの』とされているのです。映像業界における性加害・性暴力を可視化し、撲滅するための実態調査に加え、しかるべき第三者機関の設置が必要であると考えます」と訴えた。

最後に「私たちは、今起きている問題だけではなく、過去に起きた問題についても相談ができ、 本音で話し合える環境づくりを目指していきたいと考えています。お互いが尊重し合える関係性のもと、問題が起きない環境を築き、誰もが安心して働くことのできる日が一日でも早く訪れるよう――みなさんと共に連帯できることを心から願っています」と結んだ。

 

声明の全文は同会のサイトでも公開している。