笑顔のザギトワ、涙のメドベージェワ。実はフリーの点数は「全く同じ」だった

その差はどこにあったのか。
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ザギトワ選手とメドベージェワ選手
Getty

平昌オリンピックのフィギュアスケート女子は、ロシア(OAR)の新星アリーナ・ザギトワ(15)が金メダルに輝いた。

23日のフリーで、ザギトワと世界女王エフゲニア・メドベージェワ(18)はともに「156.65点」と全く同じ点数。ショートプログラムでのわずか1.31の点差が明暗を分けた。

ザギトワとメドベージェワ、二人の差はどこにあったのだろうか。

■「表現力のメドベージェワか、難易度のザギトワか」

まずは、今回の2人の得点を振り返ってみたい。

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Getty/HuffPost Japan

フィギュアスケートは、2分50秒のショートプログラムとフリー(男子4分30秒、女子4分)を滑る。選手はジャンプ、スピン、ステップといった要素を組み込んで演技し、審判は「技術点」「演技構成点」を採点する。

得点の内訳を見てみると、難易度の高いジャンプを組み込んだザギトワが高い技術点を獲得。一方のメドベージェワは、演技点だけで見ればショート・フリーともザギトワを上回っていた。

このあたりが「表現力のメドベージェワか、難易度のザギトワか」評される所以でもある。

■運命を左右するルール「後半のジャンプは基礎点1.1倍」

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メドベージェワとザギトワ
Damir Sagolj / Reuters

ジュニア時代から圧倒的な強さで知られるザギトワは、今シーズンからシニアシリーズに参戦し初戦で優勝。グランプリシリーズでも3勝し、世界女王メドベージェワのライバルと目されてきた。

ザギトワが得意とするのは、演技後半にジャンプ要素を集中させて得点を稼ぐ「戦法」だ。フィギュアスケートの採点では、後半でのジャンプは基礎点が1.1倍になる。

<ショートでは...>

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Damir Sagolj / Reuters

21日のショートプログラムで、ザギトワはプログラム後半に難易度の高い3回のジャンプを組み込んだ。

  • 3回転ルッツ⇒3回転ループの連続ジャンプ(13.71点)
  • 3回転フリップ(7.93点)
  • ダブルアクセル(4.56点)

一方のメドベージェワも、実はショートプログラムでは演技後半に3つのジャンプ要素を固めていた。

  • 3回転フリップ⇒3回転トーループ(11.96点)
  • 3回転ループ(7.41点)
  • ダブルアクセル(4.63点)

これらのジャンプを成功させ、メドベージェワはショートでの自己最高得点となる81.61点を獲得した。

一時は世界歴代最高得点となったが、直後にザギトワが82.92点をマーク。メドベージェワの記録はわずか20分で塗り替えられた。

<フリーでは...>

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Amin Mohammad Jamali via Getty Images

23日のフリーで、ザギトワは演技冒頭にスピンやステップシークエンスを組み込み、動きの美しさをアピールした。

注目されたジャンプは、7本の全てを後半に固めて高得点を狙う構成だった。技術点はトップの81.62点。15歳の天才少女が魅せた圧巻の演技に、会場は万雷の拍手を送った。

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ザギトワのフリーの得点。
joc

一方のメドベージェワは、技のつなぎも意識した洗練されたプログラムで勝負。「アンナ・カレーニナ」のテーマにのせて、感極まった表情で情感たっぷりに演じた。

全てのジャンプを成功させ、演技終了後は感極まって、肩を震わせながら両手で顔を覆った。

メドベージェワはショート・フリーとも演技点ではザギトワを上回るも、わずか1.31点差で銀メダルに。18歳の世界女王はキス・アンド・クライで涙を流しながらコーチと抱き合った。

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メドベージェワのフリーの得点。
joc

■アシュリー・ワグナーが苦言「フィギュアじゃない」

ザギトワが得意とする「後半固め飛び」戦法は、成功すれば高い得点が期待できる。その反面、体力が消耗する後半に続けてジャンプをしなければならず、失敗のリスクも伴う。

こうした戦法には批判もつきまとう。アメリカのアシュリー・ワグナー(26)は「フィギュアスケートではないと思う」とTwitterで苦言を呈した。

彼女は7つのジャンプを後半に持ってくるつもり。

技術的には完璧。

オーケー。競争心旺盛な点には敬意を評します。でもこれはないわ。プログラムじゃない。彼女は前半の時間を無駄にし、後半にジャンプした。それは演技ではない。採点の仕組みがそうさせるのだろうけど、それはまったくフィギュアスケートではないと思う。

でも得点は得点。採点の仕組みであり、彼女はそれに合わせて演技しているだけ。彼女のことを責めることはできない。

これに対し、ほかのTwitterユーザーからは次のような反発の声が上がった。

これは競技です。彼女は競技者であり、今日の試合のように仕組みを活用して演技している。そうすることで彼女は自らの得点を最大化するというメリットがあるわけで。

ザギトワ選手は前半、ただ単に立ってるだけではない。得点を最大化しようとする彼女の試みをあなたが批判できるなんて私は思わない。

ワグナー選手は、こう弁明した。

以前にも言ったように彼女が仕組みの中で演技していること、そしてそれが戦略であることに私も完全に同意します。

ザギトワ選手が自分の持ち味を活かしていることに批判をしているわけではありません。私はただ、プログラム全体を通してそれほど楽しめなかっただけです。前半は空っぽ、後半はカオスのような演技構成だったと思います。

■「美」と「技」を点数で表す葛藤、これからも...

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Damir Sagolj / Reuters

ザギトワとメドベージェワは、競技が終わると互いの健闘を讃えてハグをした。同じコーチの下、同じクラブで競い合う2人の少女は、ともに世界の頂点を目指して戦ってきた。

「美」と「技」を競い合うフィギュアスケート。その採点方法は、これまでも国際大会やオリンピックをきっかけに何度も見直されてきた経緯がある。

かつては審判の主観を反映した採点もあり、ソルトレークシティ五輪では得点の裏取引をめぐるスキャンダルもあった。

バレエの要素があるフィギュアスケートだが、近年は物語性のみならず高難度のジャンプの成功に注目が集まるようになった。

速さを競う競技と異なり、「美」と「技」をどうやって「得点」という数字に反映するのか。「氷上の芸術」をめぐる葛藤は、これからも続きそうだ。