日本アニメ、中国でのネット配信に事前検閲か。背景には規制強化?専門家「海賊版が復活するおそれも」

これまではプラットフォーム側の自主検閲だったが、中国当局が介入した可能性が指摘されている。

2021年春から放送開始となった日本のアニメの一部が、正式に放映権を買い取った中国の動画サイトで配信できなくなっていたことがわかった。

これまでは日本アニメのネット配信には動画サイト側が自主検閲をすれば良かったが、規制が強化され、中国当局が検閲を開始した可能性がある。作品によっては日本との同時配信が難しくなり、専門家は「海賊版をアップする人たちは一定程度出てくる」と警鐘を鳴らしている。

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アニメファンが集まる中国・北京の飲食店(資料写真)
Zhang Peng via Getty Images

■中国のアニメファンの推測呼ぶ

中国では、2010年代前半ごろまでは日本アニメが字幕付きで違法にアップロードされる事態が横行していたが、「bilibili動画」や「愛奇芸」などの大手動画サイトが日本側から正式に放映権を買い取り、中国向けに配信するモデルが広まっている。

中国では性的な描写やグロテスクな表現などは厳しく規制されていて、従来は動画サイト側が事前に自主的な検閲をすることで、日本での放映と同時に配信することができていた。

しかし異変が起きたのは2021年4月ごろから始まるいわゆる「春アニメ」。日本で放映が始まったのにも関わらず、一部作品で中国では配信されない状況が相次いだ。

一方で早々と配信された作品もあるが、例えば「恋と呼ぶには気持ち悪い」では画面に「登記号」と呼ばれる登録コードが小さく表示され、中国のアニメファンたちは「中国当局による事前検閲が始まった証ではないか」と推測している

配信サイトの一つで、もっとも日本アニメの購入量が多いbilibili動画はこの件についてコメントすることを避けた。

■専門家が挙げたリスクとは

これについて、中国の知財・エンタメ法に詳しい弁護士の分部悠介・IP FORWARDグループ総代表は「3年前から始まるぞ、始まるぞと言われていたことが起きた形です」と分析する。

分部さんによると、中国ではこれまでテレビや映画には厳格な審査基準があったが、ネット配信用のアニメやドキュメンタリーは比較的曖昧だったという。

そのため、各プラットフォームが中国当局からの指導のもと自主的な検閲を行っていたが「2018年9月に海外番組の管理規定の意見募集稿が出され、ネット配信用のコンテンツも事前検閲が必要だと盛り込まれました」という。

分部さんたちもすでに検閲が始まったとみられるという情報を得ている。一方で「まだ具体的な基準や方法は決まっていないようです。注視をしなければいけません」という。

まだ正式に法律が施行されたわけではないが、なぜこのタイミングで検閲が始まったとみられるのか。

「中国当局側の検閲リソースが揃ってきたことと、コロナ禍もありネットコンテンツの影響力が増大したこともあるのではないでしょうか」と分部さんは分析する。

この状態が続く場合、中国にアニメを輸出する日本のコンテンツ業界への影響は小さくないとみられる。まずは当局からの修正指示だ。当局はこれまでも映画などに対して、完成後にセリフなどを直すよう指示することがあった。それがネット配信されるアニメにも及ぶ可能性がある。

「日本のアニメは短いスパンでラインを組み、製作・納品・放送するケースが多い。例えば半年後に中国当局から修正指示が来たとして、すでに担当していた製作ラインが日本にないこともあり得ます」と分部さんは話す。

さらに危惧されるのは海賊版だ。

日本での放映と中国での配信にタイムラグが存在する場合、配信を待てない中国側視聴者のために、中国語字幕をつけた動画が違法アップロードされる事態が増える可能性がある。実際、2010年代前半ごろはそれが常態化していた。

分部さんは「当時と今では、法や技術などの面で摘発体制が大幅に拡充されていますので、当時のような状況に戻る可能性は低いと思います。一方で海賊版をアップする人たちは一定程度出てくる。今のように動画サイトがお金を出して正規版を購入しなくなる可能性もあり、対応を考えなくてはいけません」と警鐘を鳴らしている。