久々登場「タイガー・ウッズ」社会復帰の「前途」--舩越園子

いろんな面で復帰を目指すウッズを、私も見守っていきたい。

9月28日からニュージャージー州の「リバティ・ナショナルGC」で開催される「プレジデンツカップ」(10月1日まで)に、タイガー・ウッズが姿を現わす。

プレジデンツカップとは、2年に1度、米国出身と欧州を除く世界のトッププロが「米国」「世界選抜」の2チームに分かれて対抗する大会。各12名のうち、すでに世界ランキングで各10名は自動的に選出されており、世界選抜チームには松山英樹も入っている。冠名の通り、大会の名誉会長は慣例によって開催国元首であるトランプ米大統領が務める予定だ。

ウッズはその米国チームのキャプテン、スティーブ・ストリッカーをアシストする副キャプテンを務めることになっており、それを心待ちにしているウッズ・ファンがいる一方で、開催地がニューヨーク近郊ということもあり、激しい野次が飛ぶのではないかと心配する向きもある。

「事件」の決着は10月末

ウッズが試合の場に登場したのは、米ツアーにおいては今年1月下旬の「ファーマーズ・インシュランス・オープン」が最後だった。その翌週、欧州ツアーの「オメガ・ドバイ・デザート・クラシック」に出場したが、初日の夜に背中から腰にかけて痙攣を起こし、2日目を戦わずして途中棄権。4月19日に4度目の腰の手術を受けた。

だが、その手術後のリハビリ中だった5月29日にフロリダ州ジュピターの自宅近郊の路上でDUI(Driving Under the Influence=アルコールまたは薬物の影響下での運転)の疑いにより逮捕され、世界を驚かせた。

そしてウッズをサポートする優秀な弁護団の尽力による司法取引が行われつつあり、ウッズの罪状がDUIから危険運転(Reckless Driving)へダウングレードされつつあることは、この連載でもお伝えした(2017年7月18日「タイガー・ウッズ逮捕『続報』:『社会認識』『司法制度』の『日米差』を考える」参照)。

その後、1度延期されていたウッズの裁判所への第1回の出廷日だった8月9日、結局ウッズ自身は出廷しなかった。弁護士だけが代理人として裁判所へ出向き、司法取引へ持ち込むための具体的な手続きを取った。

次回の出廷日は10月25日。今度はウッズ本人が必ず裁判所へ出向く必要があり、そこで、いわゆる司法取引が完了するという運びになる。

司法取引を行わなかった場合、DUIの罪に対する刑罰は、もちろん程度次第ではあるが、懲役刑もありうる。それを避けるために、DUIに対しては無罪を主張し、その代わりに薬物服用に対する治療を受けることや多額の寄付などを含む社会貢献をすることを前提として、DUIより軽度の罪とされる危険運転の罪をあらかじめ認め、刑罰を軽くしてもらうというのが司法取引の内容だ。

司法取引が成立し、完了した後、ウッズにどんな刑罰が科せられるかというと、向こう1年間は飲酒も薬物使用も禁止され、裁判費用やこれから科せられる罰金の支払いが命じられる。

さらに、危険運転がどれほど危険であるかを認識する講習の受講や、危険運転の被害者たちと直接会って話を聞く場への出席も義務付けられる。

そして、コミュニティサービスも義務付けられる。コミュニティサービスは、もちろん状況次第、罪の内容次第、そして裁判所の判断次第となるのだが、公園や公民館、シティホールといった公共施設、公共の場の清掃などが多いとされている。

自らSNSで復活宣伝

そんなふうに、司法の下で求められる手続きは着々と進んでおり、その意味ではひと安心ではある。そして、ウッズ自身も社会復帰のための道を徐々に進みつつある。

8月はじめには、船で沖へ繰り出し、大きなロブスターを釣り上げて得意げな写真を自らSNSにアップして、健康的な姿であることを世間にアピールした。

その翌週、ジャスティン・トーマスが松山英樹を逆転して全米プロゴルフ選手権を制し、メジャー初優勝を遂げると、その祝勝ディナーをウッズが開き、ゴルフ界との接点を復活させた。

8月末には、「医者から小技練習を開始してもいいという許可が出た」ということで、ウッズ自身がチップショットを打つ動画をツイッターで披露した。とはいえ、その動画はチップショットのほんの一部をスローモーションで見せるという、なんとも勿体つけた見せ方で、まるでTVドラマの番組宣伝のようだった。

9月に入ると、テニスの全米オープン会場に2人の子供たちと一緒に足を運び、準決勝を観戦。もちろん、その姿はSNS上に出回った。

スポンサーは見つかるか

そうやってSNSの世界においては、あの逮捕劇の後も存在をアピールしてきたウッズだが、ゴルフの世界において大勢の人々の前にウッズ自身が姿を現すのは、来週のプレジデンツカップが初めてとなる。

米国キャプテンのストリッカーは、米ツアー選手の中では数少ないウッズの親友の1人であり、かつてライダーカップ(米欧対抗戦)やプレジデンツカップでウッズとコンビを組んで大活躍した最高の相棒でもあった。

だからこそ、ストリッカーはウッズを副キャプテンとして迎えることを楽しみにしている。何より、それがウッズのためになると信じている。

「タイガーは心身ともに調子はいいようだし、副キャプテンを務めることを彼自身もとても楽しみにしている。そして、タイガーはゴルフの世界のこの舞台に戻りたがっている。プレジデンツカップは、彼にとって、そのためのファーストステップになるはずだ」

折しも、プレジデンツカップ直前のこのタイミングで、タイガー・ウッズと彼の財団が2007年に創設した「ウッズの大会」が、現在ノースポンサーであるという窮状が明かされた。

創設時は「AT&Tナショナル」、2014年からは「クイッケン・ローンズ・ナショナル」という大会名で、「コングレッショナルCC」などワシントンDCエリアで開催されてきた少数精鋭の米ツアー大会で、毎回注目を集めていた。だが、2015年を最後に以後ウッズ自身の出場が叶わず、逮捕された直後の今年の大会は姿さえ見せなかったことが、スポンサー離れにつながっていることは明らかだ。

今年で契約満了となる米住宅ローン販売会社「クイッケン・ローンズ」が契約を延期する可能性、他の企業が新規スポンサーになる可能性を探りながら、現在は交渉中であるとウッズ財団やウッズ代理人は語っているが、契約が成立しなければ、ウッズの大きな足跡が米ツアーから消えてしまうことになる。

ファンにとっても、選手や関係者、米ツアーにとっても、それは淋しすぎる事態で、なんとかして避けたいところだ。

ウッズがプレジデンツカップで副キャプテンを務めることは、ストリッカー・キャプテンの言葉通り、ウッズの社会復帰、ゴルフ界への復帰の第1歩だ。

副キャプテンとして米国チームを勝利へ導くナイス・アシストができれば、ウッズの自信も回復し、さらなる1歩を踏み出せるかもしれない。

ウッズ逮捕後の帝王ジャック・ニクラスの言葉が思い出される。

「タイガーは大勢の人々の温かいサポートを必要としている」

そう、いろんな面で復帰を目指すウッズを、私も見守っていきたい。

舩越園子 在米ゴルフジャーナリスト。1993年に渡米し、米ツアー選手や関係者たちと直に接しながらの取材を重ねてきた唯一の日本人ゴルフジャーナリスト。長年の取材実績と独特の表現力で、ユニークなアングルから米国ゴルフの本質を語る。ツアー選手たちからの信頼も厚く、人間模様や心情から選手像を浮かび上がらせる人物の取材、独特の表現方法に定評がある。『 がんと命とセックスと医者』(幻冬舎ルネッサンス)、『タイガー・ウッズの不可能を可能にする「5ステップ・ドリル.』(講談社)、『転身!―デパガからゴルフジャーナリストへ』(文芸社)、『ペイン!―20世紀最後のプロゴルファー』(ゴルフダイジェスト社)、『ザ・タイガーマジック』(同)、『ザ タイガー・ウッズ ウェイ』(同)など著書多数。

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(2017年9月22日
より転載)