37日間で73人、10代の若者たちが銃の犠牲に。フロリダ乱射事件後も続く、アメリカの悲劇

それを変えようとしているのも、同じ十代の若者たちだ
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(上段左から時計回りに)レイモンド・フィリップさん(15歳)、アリッサ・ネイズさん(17歳)、ジェイ・ディアズさん(15歳)、エイリーン・ヴィヴェロス-ヴァーガスさん(18歳)、デークワン・トバーさん(17歳)、アンドレス・デルゴドさん(14歳)
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アメリカ中西部のインディアナ州サウスベントに住む17歳、デークワン・トバーさんの人生は始まったばかりだった。アイコンタクトの仕方やしっかりした握手、自信のある話し方など、大人の世界で必要な流儀を学び始めていた。

「卒業したら溶接工の仕事に就きたいと考えていた」とデークワンさんの家族は話す。そのために、履歴書の書き方を教えてもらっていた。周りの人たちは、デークワンさんが自分らしく活躍することを願っていた。

しかし2月17日、デークワンさんは銃弾に倒れた。昼間、祖母と一緒に買い物をして自宅に戻る途中に、足と臀部と頭部を撃たれ、命を失った。

2018年に入ってサウスベンドで銃の犠牲になった17歳は、デークワンさんで3人目だ。

「多くの人が、ささいなことですぐにカッとなるように感じています。そんな時にたまたま、弾を入れた銃を持っていたら、使ってしまう」とデークワンさんの追悼会を開いたマイケル・エリオットさんは地元のテレビ番組WNDUで語っている。

■フロリダの銃乱射事件の後も、悲劇は続く

フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で17人が犠牲になる銃乱射事件が起きたのは2月14日。その後、同高校の生徒を中心に、銃規制を求める大きなムーブメントが起きた。

しかし、アメリカの銃撃事件を追跡するNPO「銃暴力アーカイブ」のデータベースによると、事件後の37日間で、少なくとも73人のティーンエイジャーが銃で命を失った。毎日2人のティーンエイジャーが殺されている計算になる。銃暴力アーカイブはメディアの報道を元に情報を集めているので、データに含まれていない犠牲者がいる可能性もある。

16歳の誕生日に、ケイドン・ヴァーグさんは、銃を誤って撃ち亡くなった。

15歳のジェイ・ダイアズさんは、銃を掃除していた家族が誤射して亡くなった。ジェイさんは幼児期にがんを経験したがんサバイバーだった。

18歳のエイリーン・ヴィヴェロス-ヴァーガスさんは妊娠中だった。ボーイフレンドが殺したとみられている。

17歳のコートリン・アリントンさんは、同じ高校に通う生徒から学校で撃たれた。

14歳のクリストファー・ラックマンさんと12歳の弟は、父から撃たれた。警察は無理心中だったと考えている。

名前のわかっていない17歳の生徒は、高校のトイレで自死した。

全ケースの詳細を把握できているわけではないが、事件の多くが都市部に偏っている。また、73人という数字には、13歳未満の犠牲者や銃で負傷した人は含まれていない。

ストーンマン・ダグラス高校の生徒たちは、3月24日に銃規制デモ「マーチ・フォー・アワ・ライブス(命のための行進)」を実行。アメリカだけでなく世界中で多くの人たちが、彼らに賛同してデモに参加した。彼らは今、根深い銃の問題にどう対処すべきかを探っている。

ストーンマン・ダグラス高校のような郊外の裕福なコミュニティでは、銃にまつわる議論は、学校の安全性確保や、セミオートマチック・ライフルのような高度な銃の使用に注目が集まりがちだ。

しかし、有色人種のコミュニティ、特に黒人のコミュニティでは銃問題は日々の現実だ。

事件の後、ストーンマン・ダグラス高校の生徒たちはシカゴの学校の生徒たちと、銃問題にどう対処すべきか話し合った。生徒たちは、メディアが取りあげる銃問題は「人種に偏りがある」として、貧しいコミュニティや有色人種のコミュニティの、声なき犠牲者を取りあげるよう求めた

「私たちは今こそ白人の特権を利用して、全ての銃による犠牲者、私たちのようには耳を傾けてはもらえない犠牲者たちの声が届けられるようにしなければいけない」とストーンマン・ダグラス高校の生徒、デヴィッド・ホグさんは言う。

銃のせいで、短すぎる生涯を終えたデークワン・トバーさんのような犠牲者たち。今、彼らの声を社会に届けているのは、ホグさんのような若者たちだ。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。