「即戦力を求められている」という、就活生の勘違い。 (後藤和也 大学教員/キャリアコンサルタント)

6月1日、経団連による就活選考の解禁日を迎えた(2019年卒)。

6月1日、経団連による就活選考の解禁日を迎えた(2019年卒)。既に採用面接に臨んだ人もいるだろう。

■売り手市場でも就活は厳しい

売り手市場と言われる一方で、決して甘くはない現状も報じられている。

リクルートキャリア・就職みらい研究所の増本全主任研究員は、「内定率が高いのに就職活動を続けている学生が多いのは、6月から行われる第1志望の企業の選考を待っている現れだ。求人数が多いので数字的には学生優位の売手市場になっているが、大企業やよく知られている産業の採用倍率は厳しく、学生は『言われているより就職活動は厳しい』と実感するのではないか」と話しています。

NHK NEWSWEB 大手企業の採用面接 きょう解禁 就職活動ヤマ場に 2018/06/01

就活は学生から社会人へ移行する際の最初にして最大の関門である。多くの就活生が実感しているであろう通り、売り手市場といっても黙っていて向こうから内定がやってくるわけではない。

さらに近年は「サイレントお祈り」(選考に漏れた場合でもその旨の連絡すらされないこと)や「就活セクハラ」、人手不足を反映しての「オワハラ」(他社への就活を行わないよう求めること)等、卒倒するような出来事も見聞きする。

それ故、就活中の過度なストレスにより「就活うつ」に陥る就活生もいるという。ただでさえ見ず知らずの企業に一人で飛び込むだけでも疲弊するのに、余計な圧力がかかるとすればストレスを感じるのも当然だろう。

■企業人事と就活生の意識のギャップ

しかし、元人事・採用の担当者として言えば基本的に企業は意地悪をしたいわけではない。採用担当者も限られた「面接」という場で学生を見極めようと必死になっているだけなのである。

多くの就活生と初対面で、一緒に働くことなくそのポテンシャルを見極めつて採用の可否を判断する、という面接官の仕事は、思いのほかストレスだ。就活生から見れば意地の悪いような質問や耐え難い圧力を感じることもあるかもしれないが、実はそれ以上のプレッシャーを面接官も感じている。

さて、ここであるデータを紹介したい。経産省が実施した調査によれば、企業人事担当者が学生に不足している能力として「主体性」「粘り強さ」「コミュニケーション力」といった、チームで円滑に働くための基礎能力を挙げた。一方学生が自分に不足している能力は、「語学力」「業界に対する専門知識」「簿記」等のビジネススキル的な能力を挙げた(経済産業省「大学生の『社会人観』の把握と『社会人基礎力』の認知度向上実証に関する調査」2010/06)。

企業側が「学生に求める能力」と学生が「企業から求められていると考えている能力」には、大きなギャップが存在する。筆者が採用を担当していた時も、就活生から「就職する前に取得したほうがよい資格はなんですか」「自分は英語が得意ですが採用後に英語を使用する部署への配属はされますか」等とよく質問されたものだ。皆さんも、エントリーシートや面接で、自分の知識や資格について連呼してはいないだろうか。

企業側からすれば「仕事に必要な能力は採用後に教え込むし、配属先も適性を見て判断するよ」という話になる(逆に考えれば「即戦力を求む」とことさらに強調する企業は社員教育に対する意欲が乏しいと言えるかもしれない)。例えば公認会計士やTOEIC満点等であれば話は別かもしれないが、付け焼刃の資格やスキルをドヤ顔でPRされても......というのが、企業側の本音だろう。

多くの企業は新卒一括採用の流れの中で採用を判断している。一部のインターンシップを経由する採用を除けば、ほとんどが一緒に働くことなく学生を採用する。つまり、現在の就活は「実際に仕事ができる人材」ではなく「採用後に仕事をきちんと覚えてくれそうな人材」を採用するシステムと言ってよい。

その前提に立てば、企業側に「自分はきちんと御社の仕事を覚える資質があります」と有形無形の手段で伝達すればよいということになる。大きな声であいさつをすることも、なるべくポジティブな方向で自己PRをまとめるのも、全てはそのためだ。

■就活は自分自身を営業する過程である

面接で不合格が続けば、人間性を否定された気持ちになるかもしれない。「本当の自分をわかってくれない」と涙で枕を濡らす夜もあるだろう。

しかしながら、面接では「評価されたあなた」が「本当のあなた」だ。面接で「ウチの社風に合わない」と判断されたならば、その時点で「○○社のキャラではないあなた」認定がされているのである。

「なんと理不尽な!見る目がない!」と感じるかもしれないが、これは社会人になってからの人事評価も一緒だ。「評価者から評価されたあなた」が「会社での本当のあなた」であり、その評価は給料やゆくゆくの昇進にも直結していく。それらの評価を良いものにしたいと思うならば、地道に評価者や組織に貢献していくほかはないのだ。しかもそれは、評価者が確実に認識できる方法で行う必要があるから、めんどくさいのである。

日本の法律上、一度採用すればおいそれとは解雇できない仕組みになっている。一方、多くの採用担当者は実際の働きぶりを一度も見ることなく採用の可否を判断しなければならない。これらの状況下で採用を勝ちとるには、相手のレベルに合わせて自分の言葉で、自分を採用した場合のメリットを効果的に伝える必要がある。

誰かが本当の自分をわかってくれるはずといった妄想は、ゴミ箱に捨ててしまおう。就活とは、空気を読みながら、わかりやすく本当のあなたをPRしていく過程なのだ。そして月並みな話となるが、捨てる神あれば拾う神あり。粘り強く活動すれば、必ずあなたの力を必要とする場所があるはずだ。就活は自分自身を営業する場だと割り切って、力強くあなた自身を売り込んでほしい。

【参考記事】

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後藤和也 大学教員 キャリアコンサルタント