「スタバのライバル」ラッキンコーヒー、売り上げ330億円水増しで危機に。創業2年で4500店舗に「早く走り、転んだ」

注文はアプリからのみ受け付けるなど、独特の業態が注目されていた

スタバのライバルとまで称された中国のコーヒーチェーン、「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」が経営危機に陥りかねない事態に直面している。

創業から2年と待たずにアメリカ・ナスダックに上場を果たし、4000を超える店舗を急速に展開。創業ブームに沸く中国でも「希望の星」と目されたコーヒーチェーンに何があったのか、振り返る。

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ラッキンコーヒーのカップ
Getty Images

■「レジのないコーヒー店」

「ラッキンコーヒー」は2017年創業。通常の店舗のように、カウンターで注文して、コーヒーを受け取るシステムは採用せず、アプリ経由でのみ注文を受け付ける形態をとったことから話題になった。

アプリで注文したら、キャッシュレス決済の残高などから料金を支払う。あとは自分で店舗へ受け取りに行くか、配達員に届けてもらうかだ。中国ではアプリ経由のフードデリバリーが日本よりも広く浸透していて、「レジのない店舗」という業態も消費者に受け入れられた。

注文用の公式アプリを開くと、目につくのはクーポンや割引の多さだ。「2杯オーダーすると1杯無料」などのサービスを始め、一定の注文数に達した客で現金を分けあえるキャンペーンなど、太っ腹な戦略を打ち出してきた。

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公式アプリにはクーポンがずらりと並ぶ

2019年に5月にはアメリカ・ナスダックに上場。公式の発表では2019年末までに中国で4507店舗を展開するなど、中国ですでに人気を博していた「スターバックス」のライバルとも称された。

■330億円の水増し

そのラッキンコーヒーは、アメリカの投資会社から不正会計を指摘されていた。ラッキン側が調査結果を公表したのは4月2日。2019年の一定期間において、売り上げを約22億元(約330億円)「水増し」していたことが発覚したのだ。

これを受けて、2日のラッキンの株価は8割近く下落。中国では、いつもより多くコーヒーの注文が入ったと報じられたが、これはクーポンやプリペイドが無駄にならないか、不安に思った消費者がそれだけ存在したことを意味するだろう。

ラッキンは4月5日、謝罪と声明を発表。不正会計に関わった管理職と社員を停職させ調査をしているとしたうえで、「今回のことで生じる全ての問題に向き合っていく」とコメントした。

また、ロイター通信によると、創業者や経営トップが債務不履行に陥った。2人は担保として、保有していたラッキンの株式を貸し手の銀行に明け渡すこととなったという。

一時は中国創業ブームの星とされていたラッキンは、なぜこのようなことになったのか。中国メディアは、創業者の陸正耀(りく・せいよう)会長が5日にSNSで発表した文書を伝えている。

「これまでの2年間、この会社は早く走り続け、多くの問題を引き起こし、そして大きくつまづいてしまった。会長としてこの責任を免れることは出来ません。全ての疑問と批判を受け付けます。挽回に全力を尽くします」