クフ王ピラミッドの「巨大空間」は新発見ではない? エジプト考古学者ら批判

研究グループも反論し、論争の様相に
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クフ王のピラミッド
Kazuhiro Sekine

エジプトにあるクフ王の大ピラミッド内に、巨大な空間が見つかったと名古屋大などの研究グループが発表したことに対し、エジプトの専門家らが「新発見ではない」などと批判する事態になっている。AFP通信などが報じた。

名古屋大や高エネルギー加速器研究機構などでつくる国際研究グループが、「スキャンピラミッド」と名付けたプロジェクトに取り組んでいる。ピラミッド内部にある「女王の間」に機材を設置し、宇宙から飛来する素粒子の一つ「ミュー粒子」を観測。この粒子は岩などの物質を突き抜ける性質があり、それを利用してレントゲン撮影のように内部構造を「透視」した。その結果、観光客にも公開されている中心部の「大回廊」の真上に巨大な空間が見つかった、とグループは発表していた。

ところが、AFP通信によると、このプロジェクトを監督するエジプト政府の組織「スキャンピラミッド科学委員会」トップのザヒ・ハワス氏は「新しい発見は何もない」と述べた。プロジェクトメンバーから結論を聞いた時にも同じ見解を伝えたという。

「ピラミッドの中には空間はたくさんある。従って、それが見つかったからといって、秘密の部屋とか新発見とかいうことにはならない」とハワス氏は述べた。

エジプト政府の遺跡審議会トップのムスタファ・ワジリ氏も「プロジェクトは結論を発表する前に科学的な研究や議論をへなければならず、あくまで科学的な手法で進められなければならない」と語った。

一方、ニューヨークタイムズも、「研究グループは、ファラオ(王)の財宝に満たされた隠し部屋を見つけたわけではなさそうだ」とする考古学者らの見解を紹介。その上で、彼らが「見つかった空間は、ピラミッドが崩壊したり、部屋にかかる荷重を減らすために設計されたものであり、すでに報告されているものだ」と語ったとも記載した。

こうした批判に対し、研究グループ側も反論。朝日新聞によると、グループメンバーの森島邦博・名古屋大特任教授らが11月6日、東京都内で記者会見し、エジプトの考古学者らが指摘する隙間と今回見つかった巨大空間は別物であるとの認識を示した。

大ピラミッドは230メートル四方で、高さ139メートル。紀元前2500年ごろに建てられたとされるが、内部の構造については謎が多い。