集中治療室のコロナ患者、感謝のバイオリン演奏が感動呼ぶ。「暗闇の中の光だった」(アメリカ・ユタ州)【動画】

病室に響いた、美しくて温かいメロディー。看護師は「夢の中にいるような気分だった」と話している
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病室で、挿管しながらバイオリンを演奏するグローバー・ウィルヘルムセンさん(中央)
Intermountain Healthcareの動画より

新型コロナウイルスに感染し、集中治療室(ICU)に入院中の元オーケストラ講師の男性が、医療従事者に感謝の思いを伝えようとバイオリンを演奏した動画が、反響を呼んでいる。

CNNによると、男性はグローバー・ウィルヘルムセンさん(70)。新型コロナウイルスに感染し、アメリカ・ユタ州のマッケイ・ディー病院のICUに入院していた。

治療の一環で挿管され、言葉を発することができなかったウィルヘルムセンさん。筆談を通じ、看護師にある「要望」を伝えたという。

マッケイ・ディー病院のニュースリリースによると、ウィルヘルムセンさんの介助に当たっていた看護師のシエラ・サシーさんは、彼から「私は心からこの病院で演奏したい。妻が私のバイオリンとビオラを持ってくるのはどうでしょうか?」と提案された。オーケストラの講師としての長い経歴や、演奏することが彼にどれほど大きな喜びをもたらすことかを伝えられたという。

サシーさんは、「あなたが演奏するのをぜひ聴いてみたい。演奏が、私たちの環境に明るさや前向きな気持ちをもたらしてくれるはずです」と応じた。

看護師たちのチームは、医師の助言を踏まえた上で、看護師が病室で付き添い健康状態を見守りながら計画を実行することにした。

演奏中は病室のドアを閉め、12人ほどの医療従事者がガラス越しに集まった。ウィルヘルムセンさんが奏でるテネシーワルツや教会の賛美歌に聞き入っていたという。ウィルヘルムセンさんは2日間続けて数時間にわたり演奏した。

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ウィルヘルムセンさんの演奏に聴き入る医療従事者たち
マッケイ・ディー病院のニュースリリースより

サシーさんは「涙ぐんでしまいました。全てのスタッフにとって、挿管中の患者がこのような演奏をするのは信じられないことでした」と語る。

看護師のマット・ハーパーさんは、「彼がバイオリンを手に取る様子は正直、衝撃的で、夢の中にいるようだった。私は挿管中に患者が無力感にさいなまれたり、活力を失ったりする姿をよく見かけましたが、グローバーは不幸な状況を前向きなものにした。私にとって、ICUでの良い思い出の一つです。コロナの暗闇の中の、小さな光でした」と振り返った。

サシーさんは、ウィルヘルムセンさんから「私にはこれぐらいのことしかできない」「あなたたち全員が、私の世話をするためにたくさんの犠牲を払っている。だから私はあなたたちのために演奏するのです」と伝えられたという。

マッケイ・ディー病院での1か月以上の入院を経て、ウィルヘルムセンさんはICUを退院し、長期救急治療施設に移ったという。