出稼ぎの女の子たちの夢の後押し~ベトナム~

都会で孤立することがないよう支援しています。

2018年8月、プラン・インターナショナルの評議員を務める増田明美さんに同行し、ベトナムのプロジェクトを視察してきました。そのなかで、発展著しいベトナムの都市部で、取り残された女の子たちを対象とした活動を紹介します。

撮影:鬼室黎

農村部からハノイにやって来る女の子たち

ハノイ市の南にある巨大な工業団地では、10万人以上の出稼ぎ労働者が働いています。なかでも、10代後半から20代の若い女性たちは手先が器用で、長時間黙々と工場のライン作業をこなしてくれる重宝な人材です。

プランが、2016年に工場で働く農村部出身の若い女性たちに行った調査によると、ラインの単純作業に従事している約40%が、スキルを高めて安定した仕事に就きたいと考えており、うち75%が自身で事業を立ち上げたいと望んでいること。また、出稼ぎの女性たちの9割近くが、安全な住まいや生活に必要な最低限の情報を得られていないと感じていることが分かりました。調査結果を受け、プランは職業訓練と生活に必要な情報の提供を中心とした支援を行っています。

働きながら職業訓練を受ける女の子たち

工場近隣の職業訓練学校の協力を得て、18~30歳までの女性たちに職業訓練を提供し、低賃金の単純作業を脱して、安定した収入を得られるよう支援しています。仕事と並行して受けられる短時間のトレーニングが一般的で、人気のコースは調理、美容コース。受講できるのは基礎コースだけですが、その後は見習いとしてお店で働き、さらにスキルを高めて自立を目指すことができます。

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本格的な設備で調理トレーニングを受けている女の子
Rei Kishitsu
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皆で一緒に「オバマメニュー」*を楽しみました
Rei Kishitsu

*訪越したオバマ前アメリカ大統領が食べた、ブンチャー(つけ麺)と揚げ春巻きが話題になり、セットにして名づけたもの

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Rei Kishitsu

ハノイ近郊の省出身のニャンさん(20歳)は、地元で農業を営む家族の生活を支えるために、一人ハノイにやって来ました。工場での、2交代、3交代勤務は厳しいですが、トレーニングを受講しています。調理師の資格を取ったあとは、故郷に戻り小さなお店を開いて家族を支えるのが夢と、きらきらとした瞳で語ってくれました。

安心・安全な生活を支える情報提供

職業訓練プロジェクトに加えて、プランは工場近隣にある宿舎を拠点に、数名の女性たちからなる女性ユニオンを結成。出稼ぎの女性たちが必要としている住居や育児、教育などについて適切な情報を提供するとともに、日常のさまざまな問題に対し建設的かつ効果的に対処する能力「ライフスキル」を身につけられるよう支援しています。ほかにも宿舎の中庭で、ズンバダンスやヨガのクラスを開催して、地元の人と出稼ぎ女性たちが交流できる機会をつくり、都会で孤立することがないよう支援しています。

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ズンバダンスのレッスンに飛び入り参加した増田さん(後列左から2人目)
Rei Kishitsu
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みんなでいい汗を流しました
Rei Kishitsu

起業を果たした女の子

整然と工場が立ち並ぶ無機質な工業団地から国道をはさんだ反対側は、工場で働いている人々が暮らす地区。狭い道の両側には、生肉や魚、色とりどりのフルーツや野菜を売る路面店が所狭しと立ち並び、そこに暮らす人々と動物の喧騒が交じり、生命力と活気に満ちた場所でした。トレーニングで美容のスキルを身につけ、この地区で3カ月前に美容室を開店したヒエンさんを訪ねました。

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自身の美容室で誇らしげに働くヒエンさん
Rei Kishitsu

ハノイに隣接するヴィンフック省出身のヒエンさんは、現在25歳。出稼ぎ先の工場で夫と出会い妊娠。出産後も生まれた子どもを故郷に預けて働いていましたが、知人からプランのプロジェクトを紹介され、美容コースを受講しました。トレーニングで美容のスキルを習得し、既存の美容室を買い取り、友人とともに美容室を起業。その際、プランから店内の設備の一部を支給されました。料金は、洗髪が約300円、カットが約700円、洗髪カットでおよそ1000円。1日平均7人ほどの来店があり、事業は順調とのこと。そのおかげで長らく離れて暮らしていた娘とも一緒に住めるようになったそうです。

女性たちが変える未来

今回出会った若い女性たちは、厳しい環境に身を置きつつも、誰もが人生を前向きにとらえ、自分の可能性を信じて、よりよい未来を切り開こうとして懸命に生きていました。都会で、不安や危険を感じていたときにプランに出会い、人生が変わったと明言した女性もいました。

プランは、「誰も取り残さない」支援のために、女の子や女性のエンパワーメントに取り組んでいますが、その活動はハノイでもしっかりと根づいていました。時間を要する活動ですが、女性のエンパワーメントこそが貧困を解決し、持続可能な発展を促すカギとなると再認識しました。

関連動画はこちらをご覧ください https://youtu.be/rPDRC5PwbDY

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Plan International

平田 泉 広報マーケティング部

大学卒業後、精密機器メーカー勤務の後、13年間の海外駐在を経て、2004年プラン・インターナショナルに入局。翻訳担当、ドナーサービス、ファンドレイジング部企業連携を経て、2017年より広報にて、おもにメディア対応を担当。