ビルマ:ロヒンギャの村が多数さら地にされる

新しい衛星画像 司法妨害を示す破壊行為
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Rohingya refugees collect relief material next to a settlement near the 'no man's land' area between Myanmar and Bangladesh in Tombru in Bangladesh's Bandarban on February 27, 2018.Hundreds of desperate Rohingya Muslims still pour over the Myanmar border into Bangladesh camps every week, six months into the refugee crisis. / AFP PHOTO / MUNIR UZ ZAMAN (Photo credit should read MUNIR UZ ZAMAN/AFP/Getty Images)
MUNIR UZ ZAMAN via Getty Images

(ラングーン) - 新たな衛星画像により、人がいなくなったラカイン州のロヒンギャの村の多くをビルマ政府がさら地にならしていることが判明したと、本日ヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した。 国連安全保障理事会、国連と関連機関、そしてビルマの援助国は、ビルマ政府に対してロヒンギャの村の解体をただちに停止するよう求めるべきだ。これらの村は犯罪現場として、国連事実調査団がアクセスを認められて調査ができるようになる日まで保存されるべきだ。

December 16, 2017

February 13, 2018

2017年後半以降、ビルマ政府は少なくとも55の村について、重機を使ってすべての建物や植物を一掃し、さら地にした。これらの村のほとんどは、ロヒンギャに対する治安部隊の民族浄化作戦中、2017年8月25日から始まった放火によって全面的または部分的に破壊された362村の一部だ。しかしながら衛星画像は、さら地にされた村のうち少なくとも2村は、火災によるダメージを受けていない居住可能な状態であっただろうことを示している。放火で部分的に破壊された他10村でも、数百規模の建物が取り壊された。

January 7, 2018

February 16, 2018

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは、「こうした村の多くはロヒンギャに対する残虐行為の現場だ。その調査のために国連から任命された専門家が、加害者特定のための証拠を適切に評価できるよう保存されるべきだ」と指摘する。「これらの地域をさら地にすることで、かつてそこに住んでいたロヒンギャの人びとの記憶が消し去られるとともに、法的責任までもが消し去られる恐れがある。」

December 16, 2017

February 13, 2018

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2017年11月11日〜2018年2月19日までの間に記録された時系列の衛星画像を検証。2017年後半の攻撃では燃やされなかったMyin Hlut集落の2つの村がさら地になっていることをつきとめた。1月9日〜2月13日の間に取り壊され、重機でさら地にされている。 解体が始まったとき村に住民が残っていたかについては、独自の確認ができていない。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの検証した衛星画像は、解体が現在進行形であることを示唆している。

ラカイン州北部で大きく損傷・破壊された建物の最初の解体が、2017年11月にMaungdawの町で始まったことが衛星画像からわかる。その後、約1カ月は何ごともなかったが、また2018年1月初めに、Maungdaw町南部の沿岸の村でさら地化が再開され、その後急速に最初の解体が行われた北部へと広がっていった。

政府による解体および再建計画

1月12日にビルマ国営メディアは、バングラデシュから送還された難民が、手続きを経て一時的に滞在すると発表された場所について、1月7日にバックホー8台とブルドーザー4台がラカイン州北部の複数地域をならし始めたと報じた。国営メディアと大統領府は、同州全域の複数地域における建設を報告しており、その中には道路の修繕中心のものもあれば、村のさら地化を行うものもある。

国家最高顧問事務所情報委員会は昨年12月1日に、政府がラカイン州全域の20を超える村に住宅を建設したと発表。AFP通信によると、 今年2月12日にWin Myat Ayef社会福祉相が、集落のさら地化はより高水準の村の再建計画の一貫と発言した。同相は、政府が「村の新建設計画を立てようとして」おり、[難民が]帰還したあかつきには出身地かその最も近くに住める」と述べた。

政府による開発は、2017年10月に正式に設立されたラカイン州人道支援・再定住・復興発展計画(UEHRD)が主導しており、ビルマの事実上の指導者であるアウンサンスーチー氏が議長を務める。UEHRDは複数の中央省庁、州および地方政府、治安部隊ならびに民間企業と連携している。国内外の団体やいわゆる関係国、国連機関にもこれまで協力を要請してきた。

政府は、国連の都市と国土計画にかかわる国際ガイドラインをはじめとする国際ガイドラインに沿って、村の開発計画を策定する予定だと述べている。

UEHRDの調整責任者であるAung Tung Thet氏は昨年10月、ラカイン州北部の開発プロジェクトについて言及した際に、4月にモンスーン・シーズンが始まるため、「残された時間はほとんどない」と地元メディアに語った。結果として、「かなりの勢いをもってプロジェクトを進めなければならない」としている。

昨年8月に治安部隊の拠点が数十カ所襲撃されて以来、ラカイン州北部にある住民の大半がロヒンギャという数百の村々で、ビルマ国軍が広範に及ぶ殺害やレイプ、恣意的逮捕、大規模な放火を行ってきた。結果として、68万8,000人超のロヒンギャが隣国バングラデシュへの脱出を余儀なくされている。ビルマとバングラデシュの政府は、バングラデシュにいる難民をビルマに帰還するという意思と手続きで大筋合意している。しかしいまだビルマに帰還した難民はおらず、ラカイン州からの脱出が続く。フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、2月13日に行われた国連安全保障理事会へのブリーフィングで、「ロヒンギャ難民の自発的な帰還を促す条件はまだととのっていない」と述べた。

国際法は、住宅・土地・財産、または居住地を恣意的または不当に奪われた難民および国内避難民に、元の居住地または選んだ居住地に帰還する権利、および財産を取り戻す権利を保障している。自分の家に帰ることができない、あるいはそうしたくない人びとは失った住宅や財産について、政府による賠償を選ぶ権利を有している。

さら地化の証拠、でも人権侵害の捜査はなし

多くの村において、さら地化で犯罪の証拠隠滅がはかられたことは明らかな司法妨害だ。ビルマ政府は、ヒューマン・ライツ・ウォッチが人道に対する罪に該当するものと特定した、昨年8月25日以降の治安部隊による重大な人権侵害疑惑に関して、信頼にたる捜査をしないでいる。

ビルマ国軍の捜査では11月、国連やメディア、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体が報告していた情報に反して、治安部隊による違反行為や人権侵害は一切なかったとの結論が出された。12月下旬にInn Din村で集団墓地が発見されたのを受けて、ビルマ国軍は治安部隊とラカイン州の地元住民が違法に男性10人を殺害し、「交戦規定」に抵触したことを認めた。政府は集団殺りくに関与したとして16人を逮捕しており、「法に従った行動をとる」だろうと述べた。

ビルマ政府は、2016年3月に国連人権理事会が設置した事実調査団への査証発行を拒否しており、ラカイン州北部地域の犯罪現場における証拠収集を妨害している。さらに、独立系のあらゆるメディアおよび人権団体のラカイン州北部への意味あるアクセスを事実上遮断したままだ。

アダムズ局長は、「政府の手による数十もの村のさら地化の結果、ロヒンギャの人びとがはたして故郷へ戻れるのかという懸念がさらに深まった」と述べる。「重大犯罪の証拠隠滅のために村を意図的に解体するのは、司法妨害だ。ドナーである各国政府は直接にも間接にも、司法妨害や、ロヒンギャの人びとがラカイン州北部の各自の村に帰還する権利がないと取り繕う民族浄化の責任者を援助しないよう、確実にしなくてはならない。」

(2018年2月23日ヒューマン・ライツ・ウォッチより転載)