メイク動画、実は中国政府のウイグル人“再教育キャンプ”批判。「ビューラーを置いて、今すぐに調べて」

再教育施設では、中国語を話すよう強制されるほか、暴行や性被害の報告もある。

「ハイ、みんな。まつ毛を長く見せる方法を教えるね」

40秒ほどの動画は、女性がビューラーを手にメイクを教える様子から始まる。しかし、それは最初の数秒だけだ。

「そしたら、次はビューラーを置いて、スマートフォンで今すぐに調べて。中国で何が起こっているのか。彼らがどのように罪のないイスラム教徒を強制収容所に入れ、家族を引き裂き、誘拐や殺害、レイプをしたり、無理やり豚肉を食べさせたり、お酒を飲ませて、改宗を迫っているのかを」

この少女はアメリカ在住の17歳、フェローザ・アジズ。Twitterでは自身もムスリムだと紹介している。

この動画が投稿されたのは、中国企業バイトダンスが開発・運営しているショート動画プラットフォーム「TikTok」。AFP通信によると、動画は11月24日に投稿され、3日間ほどの間に150万回再生されたという。

その後動画は削除され、彼女のアカウントも凍結されたが、のちに復活。アジズさんは動画を自身のTwitterにもアップしている。

動画は次のように続く。

「これは新たなホロコースト(大量虐殺)です。誰もこれについて語らないのだけれど。ぜひこのことを広めてください」

■再教育キャンプとは

アジズさんが指摘したのは、中国政府が新疆ウイグル自治区などに設立した「再教育キャンプ」と見られる。AFP通信によると、人権団体や外部の専門家らは、キャンプにイスラム教徒ら100万人以上が収容されていると指摘している。

これらの施設では、収容された人は中国語を話すよう強制されるほか、各国の記者で作る団体・ICIJの報告では、収容された人が暴行や性的暴行被害に遭う様子も目撃されたという。

中国政府は、施設の存在自体を認めていなかったが、海外メディアなどからの指摘を受けて、2018年になってからようやく認めた経緯がある。

とはいえ、中国側は施設はあくまで「職業技能訓練センター」だと主張。国営通信社の新華社は新疆を「宗教の過激勢力が、素朴な信仰心を利用して信者をテロリズムに染め上げている」とし、施設の目的は「テロリズムを消し去ること」と説明している。

アジズさんの動画は、別の動画がガイドラインに抵触したとして一時的に削除され、アカウントも凍結された。しかし、アジズさんは11月28日に、TikTok側から謝罪を受け、アカウントも回復されたと報告。ウイグルについて訴える動画も閲覧することができる。

動画には、11月28日現在でおよそ54万の「いいね」がつけられている。