生徒もただ者じゃない!?授業料激安のビバリーヒルズ英語学校

先生と友達になったらさらに嬉しいことが...。 LAでのやりくり術、見つけました。
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辛酸なめ子

ビバリーヒルズの英語学校。そう聞くと1レッスン2万円くらいして、富裕層の子弟が留学しているイメージですが、Mutsumiさん夫妻が発見したのは穴場のスクールでした。

「夫(イ・インチョル監督)が通っているのは、ビバリーヒルズ市がやっているカルチャースクールの英語学校。週3回で一回2時間、8週間で200ドルちょい。すごく安いんです」

それを聞いて耳を疑いました。計算すると1時間約500円……? 日本でもその10倍くらいしそうですが、語学留学したい衝動にかられました。

「監督は1年くらい通っているんですが、場所が場所だけにおもしろい人がいっぱい集まってくるんです」
先生はエネルギッシュなイタリア系アメリカ人の60代女性。おしゃれでチャーミングで若々しい方だそうです。先生自身も映画業界人で、数々の俳優と仕事してきたそうです。例えば「スターウォーズ」の撮影現場で出演者に英語の発音を教えたり……。

「とくに『義兄弟 SECRET REUNION』に出ていた有名な韓国人俳優とは大親友だったり……。その俳優さんには、自分が亡くなったら遺産をゆずる、とまで約束しているそうで、強い信頼関係があるようです」と、Mutsumiさん。イタリア系は人情に厚いのでしょうか。そんな先生のもとに引き寄せられて集まってくる生徒も、場所柄映画業界人だらけだったとか。

「韓国で有名なパク・チャヌク監督の映画で何度もカメラマンをやっている人がいて、今は渡米してハリウッド映画で活躍していていて、監督とすごいねって話していたんです。映画関係のデータベースのカメラマンランキングで全世界で4位か5位という才能のある方。私たちが映画を撮る時にはいつかお仕事してみたい、と話していた次の日、監督が英語学校に行ったらなんと隣の席にいたんです!」

すごい引き寄せ力です。アメリカンドリームが渦巻くLAでは、願い事はどんどん口に出すと良いのかもしれません。

「ただ監督は恥ずかしがり屋で自分も映画関係って言えなかったらしいんです。そのカメラマンさんはすっごく優しくて気さくな人らしいんですけど。何週間か一緒に勉強したので、今後仕事の話もしやすいかもしれません」

その教室には、ロシアのプロデューサーやイタリアの女優、中国のファッションデザイナー、謎のお金持ちなど、ディープな人が集まってきているそうです。しかも皆さん安い英語教室を探し出していることから、結構経済観念がしっかりしていて、デキる方々なのでしょう。

「今、ショートフィルムを撮りたいと思っていて、そこに一人ラインプロデューサー(制作行程を管理する人)が入ると楽なんですね。でも、こっちでそういう人を知らなくて、きっと予算が桁違いになるだろうなと思っていたんです。そこで、監督のクラスメイトのペルーから来たプロデューサーに相談してみました。そしたらその人に依頼していたわけでもないのに親切に教えてくれたんです」

英語学校の絆、強すぎです。私も何年か前、意識高い系の英語学校に半年ほど通っていたのですが、皆さんクールな東京人なので結局誰とも交流が生まれませんでした。私ができなさすぎて、関わりたくなかったのかもしれませんが……。

「そのカミーロさんは、スタッフはこういう風に集めると良いとか、機材はこういう風に使うと安くすむとかアドバイスしてくれて、めっちゃ助かりました。普通にプロのアメリカ人に聞いても教えてくれないと思います。一緒に勉強しているから親切にしてくれたのでしょう」と、Mutsumiさんは推察。

コスパが高すぎる英語学校

学費は安いし、仕事にも役立つし最高な英語学校です。しかも先生までいろいろと手伝ってくれたそうです。

「進行中のいくつか企画がある中で、パイロット版を撮影するためにロケ場所の一軒家が必要になったんです。そのことを先生に相談していたら、ある時『今友達の家にいるんだけどいい家があるから』って電話をくれました。結局タイミングが合わなくた借りられなかったのですが、条件にぴったりの家でした。先生は相談したらすぐ答えてくれるんです」

さらに2万円強の学費で、ここまでやってくれるのかというエピソードも。
「英語のシナリオの翻訳の言い回しも添削してくれました。翻訳アプリに対して怒りながらですが……。それもこれも友達としてやってくれた。ふつうだったらお金を取ると思います」

LAで人件費を安くすませる方法は、とにかく友達になってしまうこと、かもしれません。異国の地でがんばって生きている同士の連帯感もあります。監督とMutsumiさんが人当たりが良くて、サポートしてあげたくなる、というのも大きいでしょう。

「先生は気性が激しくて、授業中は怖いキャラみたいです。ぶつかって論争になることも。日本人の生徒は大抵ワンクールでやめちゃうそうです。うちの監督はそういうことをまったく気にしないので、授業にはしっかり出るけれど、ノートに全然関係ない絵を描いているとクラスのお友達から後で聞きました。その脱力感が逆に先生に気に入られた理由なのかもしれません」

たしかにムードメイカー的な雰囲気がある監督でした。このまま先生と仲良くなって、さらに遺産の分け前をもらえるくらいになれたら、将来は安心です……。

ちなみに今パイロット版でどんな作品を企画しているのかMutsumiさんに伺うと、
「次は、悪魔崇拝が出てくる予定です。監督が2年前に描いた作品です」と、癒し系の監督の雰囲気から想像もつかないお答えが。このギャップが一番怖いかもしれません。周りのクラスメイトも監督の底知れぬ雰囲気に、言う事を聞かずにはいられなかったとか……。実は闇が深いかもしれない監督の新作に期待が高まります。

(2019年09月05日note「辛酸なめ子の「LAエンタメ修行 伝聞禄」より転載)