4人の女性政治家は訴えた。2020年の世界の「見えない壁」を打ち破るために(発言集)

女性蔑視の発言をしたとみられる同僚を一喝したスピーチ、女の子たちに希望を与えるメッセージ...見えない壁を打ち破ろうと奮闘する、海外の政治家たちの発言や出来事を振り返ります。
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アメリカ史上初の女性副大統領の誕生となった大統領選、「これまでで最も多様性に富む」と注目を集めたニュージーランド議会...。

2020年の海外の動きを振り返ると、女性の首相や国会議員たちが、性差別やジェンダーギャップなど『見えない壁』を打ち破るべく発信した数々のメッセージが記憶に残る一年だった。

未来を信じる子どもたちに向けて。性差別を容認する社会と、不条理な扱いを強いられる人々に向けて...。

2020年に話題になった、海外の女性の政治家4人の発言や関連する出来事を振り返る。 

▼この記事で紹介する政治家たち

1)同僚議員に一喝「娘がいるからといって...」

(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏/アメリカ)

 

2)「私は最初の女性副大統領かもしれませんが、最後ではありません」

(カマラ・ハリス氏/アメリカ)

 

3)「私の焦点は、その仕事に最適な人を選ぶことだけでした」

(ジャシンダ・アーダーン首相/ニュージーランド)

 

4)「全ての人が、(性別を)自分で決める権利を持つべき」

(サンナ・マリン首相/フィンランド)

 

同僚議員に一喝「娘がいるからと言って...」

(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員/アメリカ) 

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女性を侮蔑する発言をしたとみられる同僚議員に反論するオカシオ=コルテス氏
ASSOCIATED PRESS

アメリカ下院議員のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏(民主党)は7月、女性を侮辱する暴言を吐いたとされる同僚議員を、議場で激しく批判。アメリカ社会に根強く残る女性蔑視の問題を鋭く突く演説内容は、日本でも話題になった。

共和党のテッド・ヨーホー議員が、オカシオ=コルテス氏の背後で女性を侮辱する暴言を浴びせるのを、現地メディアが報じていた。これに対し、オカシオ=コルテス氏は次のように“反撃”した。

「この類の(女性を侮辱する)言葉は真新しいものではありません。私がレストランでハラスメントを受けた時には、ヨーホー議員が発した言葉や、同じような言葉を放つ男性に出会いました。ニューヨーク市の地下鉄でも同様の嫌がらせに遭いました。これらは新しいことではなく、それこそが問題なのです」

 

「妻と娘がいる」との釈明を一蹴

ヨーホー氏は、「私は45年前に結婚し、2人の娘がいる。自分の発言については十分に認識している。不快な呼び方は同僚議員(オカシオ=コルテス氏)に対してしたわけではなく、誤解されたならお詫びしたい」などと暴言を否定していた

オカシオ=コルテス氏はこの釈明に対して、次のように批判した。

「ヨーホー氏は妻と2人の娘がいると述べました。私はヨーホー議員の下の娘さんより2歳年下です。私も誰かの娘です。私が両親の娘であること、そして私は男性からの侮辱を容認するように両親から育てられたわけではないことを両親に示すために、私はここにいるのです」

「娘がいるからといって、妻がいるからといって、まともな男性になるわけではないと信じています。尊厳と敬意を持って他人と接することで、人は真っ当な人間になるのです」

「AOC」の愛称で知られ、気候変動問題などに積極的に取り組むオカシオ=コルテス氏。若い世代から熱狂的な支持を集め、11月の連邦議会選挙(下院)で再選した

 

「私は最初の女性副大統領かもしれませんが、最後ではありません」

(カマラ・ハリス氏/アメリカ)

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バイデン氏の勝利が確実になり、演説するカマラ・ハリス氏
Tasos Katopodis via Getty Images

アメリカ初の女性の副大統領になる見通しとなったカマラ・ハリス氏。勝利演説では、少数派の人種や女の子らに向けて力強いメッセージを届けた。

「私は、彼女(母シャマラさん)と、すべての世代の女性たちに思いをめぐらせています。黒人、アジア人、白人、ラティーナ、ネイティブアメリカンの女性たち...。今夜、この瞬間への道が開かれました。すべての人の平等と自由と正義のために戦い、多くのことを犠牲にしてきた女性たちのための道です」 

「私は最初の女性副大統領かもしれませんが、最後ではありません。今夜、この瞬間を見ているすべての小さな女の子たちは、ここが可能性に満ちた国であることを知ったからです。

そしてこの国は、ジェンダーに関係なく、すべての子どもたちに明確なメッセージを送りました。

野心をもって(大志を抱いて)夢をみる。信念をもって前に進む。例え社会がまだ見ぬ姿であっても、他の人がどう思うかということに関係なく、自分自身を見つめつづけてください。私たちはそのステップを踏むあなたを応援します」 

 

「私の焦点は、その仕事に最適な人を選ぶことだけでした」

(ジャシンダ・アーダーン首相/ニュージーランド)

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アーダーン首相(右)と、副首相のグラント・ロバートソン氏
Hannah Peters via Getty Images

10月の国政選挙の結果、「これまでで最も多様性に富む議会」として注目を集めたニュージーランド。新閣僚も、性的少数者や先住民など多様なバックグラウンドをもつ人たちが重要ポストに選ばれた。

ガーディアンによると、組閣メンバー20人のうち、女性8人、先住民のマオリ5人、パシフィカ系3人、性的少数者3人だった。

新しい副首相に任命されたのは、同性愛者だと公表しているグラント・ロバートソン氏。同性愛をカミングアウトしている人が副大統領に就任するのは同国で初めてだ。

先住民マオリの伝統的なタトゥーをしているナナイア・マフタ氏は、女性初の外相となった。

 

「能力」で選んだ

アーダーン首相は、新内閣について「信じられないほど多様」と発言。

「国として、私たちはこれ(多様性に富んでいること)を誇りに思うべきだと思います」「彼らを選出したニュージーランド(という国を)を反映している」

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女性初の外相に任命された、先住民マオリのナナイア・マフタ氏
Hagen Hopkins via Getty Images

一方で、「私の焦点は、それぞれの仕事に最適な人を選ぶことだけでした」明言した。閣僚メンバーには「大きなメリットとリーダーシップ能力」があるとして、抜てきの理由はあくまでも個々人の能力であり、性自認や性的指向、民族といった要素を第一に考慮した結果ではないことを強調した。

アーダーン首相は、「ニュージーランドの驚くべき点の一つは、この国では今、(多様性に関する)これらすべての質問が二次的なものになる地点にきているということです」と発言。同国にとって、多様な人が政治の場で登用されることは特別ではなく、当然になりつつあることを示した

 

日本へのビデオメッセージも

被爆国である日本への高い関心を印象付けた出来事もあった。

原爆投下から75年を迎えた広島原爆の日の8月6日、アーダーン首相はTwitterでビデオメッセージを投稿。「核兵器ゼロが広島と長崎の犠牲者への償いになる唯一のこと」などと訴え、日本でも反響が広がった。

 

「全ての人が、(性別を)自分で決める権利を持つべき」

(サンナ・マリン首相/フィンランド)

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サンナ・マリン首相(右から2番目)と女性の閣僚たち
Lehtikuva / Reuters

フィンランドでは、性別変更に関する「トランス法」について、法改正の議論が始まっている。同法は、性別変更をする場合は何年にもわたるメンタルヘルスのスクリーニングや不妊手術を義務付けている。

ヘルシンキ・タイムズによると、マリン首相は、女性とマイノリティの地位向上を目的とした政府のプログラムの一環として、トランス法を見直す法案作りを進めていると発表した。マリン首相は次のように語っている。

「すべての人が、自分の(性別の)アイデンティティを決定する権利を持つべきです。(法改正の)プログラムは、それをサポートします」

「人(の性別)を決めるのは、私がすることではありません。自分自身を決めるのは、皆さんそれぞれがすべきことなのです」

BBCは、「ジェンダーの自己認識に関してこのように立場をオープンに表明した政治のリーダーは、初めてかもしれない」と報じている。

 

シャツなしの写真が論争に

マリン首相は、ファッション雑誌に掲載された写真をめぐって論争が巻き起こったことでも注目を集めた。

10月に発売されたフィンランドのファッション誌「トレンディ」に掲載されたのは、インナーを着用せず、ジャケット1枚で写るマリン首相の写真だった。胸元が大きく開いた服装から「首相の立場として不適切だ」などの批判が上がった。

一方で、「ファッションを選ぶのは本人の自由」「女性の政治家にだけ服装を『不適切』と言うのは性差別だ」といった首相を支持する意見も相次いだ。

ネット上では、雑誌の写真と同じように、素肌にジャケットを羽織った写真を投稿し、「#imwithsanna」(サンナとともに)のハッシュタグをつけて賛同の意思を示す動きが広がった

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ファッション誌に掲載され、論争を呼んだサンナ・マリン首相の写真
トレンディのインスタグラム

 

(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)

 

2020年に幕を閉じた安倍政権の看板の一つは「女性活躍」だった。しかし現在の菅義偉新内閣20人のうち女性はわずか2人。これは国会の男女比そのままだ。2021年には、菅政権下で初めての衆院選挙が行われる見通しだ。候補者の人数を男女均等にする努力を政党に義務付ける「候補者男女均等法」制定から初めての総選挙。政治の現場のジェンダーギャップは、どうすれば埋めることができるのだろうか。