【赤裸々告白】1年育休男子の部下は「ピンチがなかったと言ったら嘘。でも...」

【タエが行く!第2回 リクルートコミュニケーションズの向井さん・加藤さん編】「本当はどうなの?男性の家庭進出」
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子供が生まれた男性には全員、5日間の育休取得を必須化。リクルートコミュニケーションズ(東京都中央区)では、従業員の育休の取得を促すためにそんな仕組みを取り入れたという。

そうは言っても5日間だし。結局、男性従業員が1年育休を取ったら、他の人達は結構困るんじゃないかなあ...。男性育休を推進すべきと思っている私にも、男性たちが二の足を踏む気持ちがわからないではない。

そこで話を聞いてみたのは、同社独自の制度による最大20日間の育児休暇ではなく、法律で原則すべての労働者が取得できる「育児休業」を1年間取得し、2018年春に職場復帰した向井宏彰さん。向井さんの「部下」で、自身は5日間の育児休暇を取得したという加藤光太郎さんにも来てもらった。

「ねえねえ、本当は大変だったんじゃないの?」「無責任だとか思ったんじゃないの?」

市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」代表の天野妙さんが、2人にネチネチ質問。すると、社長や経営者じゃなくても、色々な組織でできるかもしれない「会社のムードの変え方」が満載だった。

(聞き手は"元リク"女子、かつては長時間労働に従事していた「みらい子育て全国ネットワーク」代表の天野妙さん、執筆と編集はハフポスト日本版副編集長・泉谷由梨子)

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Yuriko Izutani / HuffPost Japan

【写真右】向井さん 33歳。子供は長女(4歳)と長男(1歳)の2人。2013年〜同社で勤務。第二子誕生の2017年から、1年間の育児休業を取得した。現在は、まなびソリューション推進2部ソリューションデザイングループのマネジャー。

【写真左】加藤さん 31歳。子供は長女(3歳)と次女(1カ月)の2人。2015年12月〜同社で働いている。第二子誕生の2018年に、5日間の育児休業を取得した。現在は同グループ所属。

「おいおい、待ってくれよ!」とはならなかった?

天野:まず、育休取得当時はどんなお仕事をされていたか教えてください。

向井:スタディサプリという、主に高校生向けに大学や専門学校の紹介をするメディアがありまして、僕たちはそのメディアで広告商品の設計をしています。動画やテキスト形式などの広告商品のラインナップを作ったり、形式やデザインや価格、入稿方法の仕組みを設計したり、というようなことです。グループは10人で加藤もそのメンバー、自分はマネジャーをしていました。

天野:マネジャーが1年不在にするというのはなかなか大変だったのでは?

向井:元々、第一子のときに妻がすごく難産で、産後2カ月間寝たきりになってしまったんですよ。両親に頼って乗り切ったんですが、申し訳ないなっていう気持ちが溜まっていました。で、第二子の妊娠がわかった頃、ちょうど清水淳社長から「男性育休を必須化する」通達があったんです。そうやって意思決定してくださっているので後押しになって。

天野:必須で取らないといけないのは5日間、最大で20日間まで取得できる制度だそうですが、1年。

向井:期間は迷いましたが、「育休必須制度は5日で作ったけど、本当は3歳までのかわいい時期に男女関係なくできるだけ子供との時間を作ってほしい」みたいな内容のメールが社長から一斉に来たんですよ。だから、「ああ、もういいんだ」と思って。

天野:その話を受けて加藤さんは?「おいおい、待ってくれよ」となりました?

加藤:驚きは当然、しました。なんか聞いたことがない長期間だったので。でも「すごいな」っていうのが、当時のメンバーが感じていた印象でしたね。「大丈夫かな?」って気持ちはありましたが、「向井さんらしいな」って。

天野:そういう部分はチームに伝えていたんですね。

向井:「家庭や生活を自分の中でどう位置づけていますか?」「今週はどういう働き方をしたいですか?」っていうことを毎週グループ会で発表しあっていたんですよ。私は子供の話をして、家族が重要っていう思いを普段からメンバーに話していたんで。

加藤:そうですね、だから育休のときも「向井さんらしいから、応援したい」という気持ちになって。

向井:上司も「いいんじゃない?貴重な時間だよ」と。ただ、当時進めていたプロジェクトには、自分がやりたくて手を上げて始めたものもいくつかあったんです。志半ばで人に任せるのが、申し訳ない気持ちはありました。「無責任だと思われるかな」とか。グループメンバーは、個別面談で不安をフォローしたりしました。

加藤:「無責任」みたいな感じは出なかったですね。メンバーも別に上から仕事が降ってくるのではなくて、やりたいからやるっていう仕事への考え方でやってましたから。それより向井さんの話は妻とも話して、すごく盛り上がったんですよ。「めっちゃ良い上司だね〜」と。僕も共働きで、子供が当時は1人。「2人目どうしよう」っていう時期でした。僕の奥さんもバリバリ働いてる人なんで「一緒にやってけるのはすごくありがたいね」って。あと自分も「家庭が安定すると仕事がすごいやりやすいな」って考えましたね。家庭を顧みないと、最終的にそれが戻ってくるじゃないですか。奥さんに気を遣いながら働き続けるのは結構しんどい(笑)

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加藤さん
Yuriko Izutani / HuffPost Japan

いざ、育休男子へ。その時会社は?

天野:なんかここまでいい話ばっかりですねえ、本当かなあ?(笑)実際の期間中はピンチの時ってなかったですか?

加藤:(笑)。スキル的に足りないっていう意味でピンチなことは、なかったと言えば嘘になりますね。グループには別のマネジャーが入りましたが、向井さんの仕事を何かしら引き受けなければいけない現実はあって。その時にどうしてもできないということはありました。例えば、これまで築いてきた営業の人との信頼関係を僕が持っていなかったりすると、一から人間関係を作らないといけなかったり。大変ではあったものの、無理ではなかったですよ。大変でしたけど(笑)。

天野:逆に成長の機会になった?

向井:自分がいると手を出してしまうところもあるので、すごくなったと思います。メンバーは自分主体で考えるようになったり、何のためにやるのか、視座を上げて考えるようになったなということが増えた気がします。

育休男子の生活

天野:それで実際に育休に入られてみて、どうでしたか?

向井:次女のときも、入院が10日ぐらいになったんですよ。その間、長女を1人でみていないといけないというのは初めての経験でした。離乳食づくりとか、2人目だけど初めて経験することが多かったり。家事とかも、まず洗剤の置き場所がわからないとかそういうレベルで。やっぱり大変だなって改めて感じました。慣れて効率的にできるようになるまでは時間がかかりましたね。

天野:では、やっと育児と家事が全部できるようになった。

向井:男性って、僕もそうだったんですけど、育児をしているようで、全部できる人ってあんまりいなくて、育休を取ることでやっと妻と同じ業務レベルで業務負担ができるようになる。妻が仕事復帰後、今は仕事がんばりたいっていう時期に「できるかなあ」と不安になる。でも「私と同じレベルでできる人が家にはいるじゃんっ」て思えると、がんばって仕事にも打ち込みやすくなる。それがよかったんですよ。

育休明け、仕事復帰は

天野:育休が終わって、会社に戻るときはいかがでしたか?これは女性でも同じ悩みですが、仕事脳がなかなか戻ってこない辛さがあったのでは。

向井:ありましたね。育休に入るまでは脳がフル回転状態だったんですけどね。戻ったときは言葉が出てこなかったりして、「あれ?今日熱あります?」「具合悪いんですか?」って言われたりしましたよ...。

加藤:言いづらい立場ですけど、たしかに復帰直後は、前のほうがバリバリだったなと感じることは、ありましたねえ。発言の時に「今までの流れ踏まえてないな」「文脈に沿ってないな」って思って、噛み合わなくて「大丈夫ですか?」ってなったシーンは結構ありました。いや、でも、もうすっかり戻ってますよ!大丈夫です(笑)。

向井:不安はありましたが、復帰後に思ったのは、1年前の知識と戦略的なところは変わってないなということ。事業の戦略は1年ではそれほど変わるものではないので、ブランクがあっても全然通用しましたね。一方で、戦術みたいなところは日々変わって、アップデートされているので、キャッチアップに時間がかかりました。「前決めたはずなのに、あれ?変わってる?なんで?」みたいな。

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向井さん
Yuriko Izutani / HuffPost Japan

天野:それで、その後に加藤さんは会社の制度のほうの育児休暇を取得されたということで。

加藤:僕はまだ、全然最低の期間(5日間)ですけど。元々育休ってことは全然頭になかったんですよ。だけど、向井さんも取って、必須化されて、っていうので取りました。もう全然取りやすかったし、言いやすかったですね。向井さんより全然短いし。

向井:むしろ「もっと取ったら?」って言いました。

加藤:家庭的に大丈夫だったり、出産が11月末だったので正月休みも充てられたりとか色々あったので。

向井:必須の日数は5日ですけど、育児は最初の5日間だけが大変ってわけじゃないので。うちも生後半年で上の子が赤ちゃん返りして大変になった時期とかもあったので、その時にまた取ればいいね、みたいな話をしましたね。

加藤:(リクルートコミュニケーションズ独自制度の)育休自体は20日間なので、まだあと15日残ってますから。必要な時、奥さんの状況に合わせて今後も(満1歳になる月末まで)取れる。言いやすい休みがあるのは安心ですね。「何かあったらまた休める」と、自分も奥さんも保険みたいなニュアンスで安心してる感じがします。

天野:その他にも周囲への影響があったなと感じますか?

向井:育休を取った後、社内の女性従業員からも「私も自分の夫に育休とってもらうように言ってみる」っていう話をよくされるようになりました。それで、相談を受けることも増えました。僕が育休を取って妻が働きやすくなるだけだと、もしかしたらこの会社の利益にならないかもしれない。けど、僕が取ったことを発信することで、社内の女性が働きやすくなる可能性がある。そういう波及効果があるんだっていう気づきがありました。

天野:なるほど。

向井:あとは人を採用する業務をしている時に、「僕育休1年取りました」と言うと、ものすごく刺さりますよ。「いい会社ですね!」って。しかも、マネジャーにまた戻れているっていうのも伝わるので。

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向井さん(右)と加藤さん
Yuriko Izutani / HuffPost Japan

「男性が育休を取っても大丈夫」な会社って、他と何が違うの?

天野:社長の決断はもちろんあったと思うんですが、育休を取っても大丈夫と思える社風というのはどういう所がそう感じさせるんでしょうか?

加藤:一番の根幹にあるのは相互理解かなと思います。お互いの背景を理解した上で一緒に頑張っていこうっていう文化がある。「クライアントに価値を出すためにすべてを犠牲にします」っていうのではなくて、従業員が相互理解して、その結果として価値が出せるようにしようっていう風になってる気がします。

向井:従業員満足を中心に置くという会社の方針があるので、部の経営でも部員がどう成長してどう幸せになるのかっていうのを考える時間がすごく多いです。そういう機会が多いこともつながってるんじゃないかなっていう気がします。

天野:そういう社風は前からですか?

向井:自分がこの会社に入った5年前は、まだそういう感じではなかったですよ。それがだんだん「どう従業員同士が理解しあって認め合うか、考えましょう」というトップメッセージが下に伝わっていて。自分もグループで「あなたの人生の中で仕事ってどういう位置付け?」ということを聞いて、発表する機会を作ったり、マネジャーとしてできることを実行しました。

天野:育休を取りたい、でも取れないという男性はたくさんいます。どうやって風土を作ったらいいんでしょうかね。

向井:従業員がどう働きたいかをそれぞれの立場で掬うことではないでしょうか。トップだけではダメで、部長、マネージャークラスがそれぞれ考えていかないと意味がないと思っています。総労働時間を減らしましょうという動きもありますが、実はもっと働きたい人もいる。働きたい人が働きたいようにできないのもおかしな話で。だから自分たちでどう働きたいかを毎週話し合って、その人の目標をどう達成できたかを振り返っているんです。

天野:でもたとえば、「今月はあんまり働きたくないです。ちょっと成果は出せないです」だった場合、評価はどうなるんですか?

向井:そこには評価の考え方は入れてなくて、今のグループはたまたま全員子供がいるんですが、例えば「今週は何回子供と晩ごはん食べたい」とか、目標ってそういう意味なんですよ。

天野:へえ。すごい。

向井:それで達成できなかったとしたら何故できなかったのか。それを達成できるように仕事の調整をしたり、周りに協力してもらう方法を考えたりとか。

天野:働き方っていうより、それは人の価値観だったり、生き方を知るっていうことですね。

向井:品質だとか納期といった、守らなければいけない仕事はもちろんあるんですけれど。過剰な品質はなくそうっていう話は常にしていますね。例えば社内向けの提案資料をきれいに作る必要ある?とか、もっと本質的な仕事をしようだとか。そして、その調整をして、みんなが働きたい働き方を実現させてあげるのがマネジャーの仕事だと僕は思っていますね。

天野:それがマネジャーの仕事かぁ、カッコいいですね。他の会社が真似できる所が色々ありそうです。どうも、ありがとうございました。

リクルートコミュニケーションズ、清水淳社長が語る制度の話はこちら

株式会社リクルートコミュニケーションズ

2016年4月1日から男性の育児休暇取得を必須化(1日単位での取得も可能)

  • 従来2日だった子供の出生時の特別有給休暇を最大20日に拡充、うち5日間の取得を必須化
  • 取得可能期間は子供が満1歳になる月の末日まで。
  • 対象は社員、専門社員、契約社員

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